カメラを持って外に出よう｜リアクション

カメラを持って外に出よう

■椿美咲紀のにゃんすたぐにゃむだにゃん
　人類はネコが好きだ。
　理由は沢山あるけれどそういうあれこれは置いといて、大体みんなネコが好きだってうすうす分かっていると思う。
　深夜にラーメンの映像を流すくらいの鉄板だって、皆知っていると思う。
　椿美咲紀も他ならぬネコ好きである。家族のにゃんこもさることながら、道ばたでネコを見かければその時点でラッキーデイが確定するくらいには好きだった。……と、思われる。
　なぜなら、彼女のニャンスタグニャムのアカウントにはネコとお花の写真が山と積まれているからである。
　まあ世の中、ネコッターとニャンスタの人格が１８０度違う人もザラなのでアカウントから人格を判断するのは早計やもしれないが、美咲紀という１６歳の少女にそんな裏表があるとはとても思えない。
　よく言えばピュアな女子高生なのである。

　さて、そんな彼女は今日も楽しくお出かけである。
　好きな本を本屋に行って探すのだ。
　イマドキはインターネットでポチれば一発だが、あえて本屋に足を運んでインスピレーションで買うのもまた世の楽しみである。同じものなら楽しい方がいい。美咲紀は特に楽しさを重視する子である。
　でもって、本屋さんで目当ての本が売り切れていた時は黙ってそのまま帰るのも、また彼女の楽しみ方だった。
　ハズレくじにしっかり凹んでこその人生だ。
　へこんだからこそ、新たに見える景色というものもある。
　例えば……。
「おおっ、キチシロちゃん！」
　道ばたの植木を抜けるように、キジシロ柄のネコが現われた。顔はきっちりハチワレ模様。道の反対側へ渡った所で、振り向いてにゃーごと誰かを呼んでいる。
　なんぞと振り向いてみれば、三毛柄のネコがおずおずと植木の間から顔を出した。
　まるで絵筆で塗り分けたように綺麗な三毛模様。どうやら仲好しの二人らしい。
　らしい、と思った時点で美咲紀はスマホを抜いていた。
　イマドキの女子高生はワンストロークでスマホのカメラモードを構えることが出来るという。西部劇のガンマンがワンストロークで安全装置を解除したリボルバー拳銃を撃てるのと大体似てる理屈である。なんならニンジャのシュリケンで例えてもいい。
　貴重な一瞬を逃さず撮影。
　さらには日の当たるアスファルトに二人して寝転がったので更に撮影。
　どうやら人になれてるネコらしく、こちらにお腹を向けて転がっている。
　美咲紀は内心ガッツポーズをとりながら、お腹をもふもふしはじめた。
　今日はいい日だ。

　翌日のニャンスタグニャムには、美咲紀が出会ったねこちゃんの写真がここぞとばかりにアップされていた。