カメラを持って外に出よう｜リアクション

カメラを持って外に出よう

■そしてだれかのニャンスタグニャム
「今日は町とネコを題材に写真を撮るつもりなんだ。町の風景と、ネコの日常が重なった瞬間がおもしろくてね」
　修はそう言って、地面にぺったりとかがんでネコを撮影していた。
　彼を無害な存在だと察したネコがくつろぎはじめ、どこか遠くを眺めている。
　それをネコと同じ目線から、九夜山を遠くに見るような視線でカメラを撮るのだ。
「写真、けっこう撮るの？」
　自分もネコの写真を撮ろうと苦戦する圭花が、手を止めて問いかけた。
　ファインダーを覗き込んだまま微動だにしない修。
「気が向いたときや、旅行に行くときなんかかな。新聞部の写真、見たことあるだろう？」
「あの……なんだか現代アートみたいな……」
「それは別の人のものだよ。俺はもっと、リアルな撮影方法が好きかな」
「りある？」
　地面にぺたーっと寝転んで、もはやネコと同類化したようなテンションで撮影する玲音。
　ネコもネコで玲音に気を許したのか、たまに頭を乗っけてきたりする。
「……玲音ちゃん、どうしたらそんな風に撮影できるの」
「うんー？」
　玲音は首を傾げたまま寝返りをうった。
　まるでネコそのものの動きである。
「ネコの気持ちになったら、楽しいかなって思ったんだよ」
「ねこのきもち……」
　また深いことを、と思って自分の中で噛み砕いてみる。
　そうこうしていると、修がアドバイスを加えてきた。
「ネコを撮影するときは、感情の目線を同じにするのがいいんだ。遠くを見てる時は同じように遠くを見上げて、どこかへ行こうとしてるときは目の前を見据えてみたりね」
「もっとこう、すぐにできる技術はないの？」
「ネコは上からくるものを警戒するから、手は下から出すといい」
「そういうのよ、そういうの」
　圭花はその辺の草をむしると、ネコの足下にむけてわしゃわしゃとやって見せた。
　白黒のハチワレ模様をしたネコは、圭花の動かす草にじゃれつくように転がり始める。
「いいぞ。そこで草にピントを合わせるんだ」
「こ、こう？」
　最近のスマホカメラはピントを合わせる対象をタップすると自動で調節してくれる機能があります。
　圭花はそうして撮影した写真をあらためて眺めてみて、そしてふと気づいた。
　もしかして自分、誰かの反応を求めていたのかも……。
　この写真をアップロードしたら、誰かがそれを見るだろうか。
　見た誰かは、どんな風に語りかけてくるだろうか。
　そう思うと、不思議とワクワクするものだ。
　圭花はスマホを翳して、真剣に撮影する修や玲音を画角に納めた。

　さあ、あなたの世界を見つけよう。
　やがて、感性が花開く。

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あとがき

担当マスター：青空綿飴
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　ごきげんよう、青空綿飴です。
　誰かの写真を眺めているとき、自分だったらどんな写真をとるだろうと考えることはありませんか？
　そしてカメラを手に取る時は、どんな時だろうとも。
　できあがる写真や、その写真をとる姿や振る舞いは、人柄を側面的にうつすものです。
　ニャンスタグニャムを通して、キャラクターたちの新しい側面が見えた気がしますね。

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