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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
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【卒業式】春爛漫。寝子島高校の卒業風景
【憧憬】
「恋愛、ねえ……良く分からないわ」
隣を歩く北風 貴子が、ふとそんなことを言ったものですから。伊賀 解理はびっくり仰天、飛び跳ねました。
「ええっ！？ い、いいんちょが恋を！？」
「あ、いいえ、私じゃなくてね。好きな子に告白をしたけど、フラれちゃったって子がいて」
とのお言葉に、なんだか、ほっ。
校門を出ると、桜並木がいったん途切れたこともあってか、解理の胸には急激に寂しさがこみあげます。
（今日で、いいんちょ……北風先輩とも、お別れ……）
憧れの先輩。彼女との思い出をあげたらキリが無いくらいです。そのくらい、解理の高校生活には彼女の存在が大きく比重を占めていました。
（だから……今日だけでいいから。もう少しだけ、一緒にいたい……）
桜花寮まで送りますから！ なんて半ば強引に申し出たのも、そのためです。
（うっ、まずい。黙っていたら、また泣いてしまいそうだ……！）
式の最中にも涙をこぼしてしまったもので、解理は慌てて口を開きます。
「そ、卒業式も終わりましたし。とりあえず、高校の荷物整理とかするんですか？ 教科書とか、いろいろ使わないものも出てくるだろうし」
「そうね、寮の部屋は綺麗にしておかないと。と言っても、式の前にほとんど済ませてしまったのだけどね。今日はその仕上げってところかしら」
「さ、さすが先輩。ああ……先輩の制服姿もこれで見納めかぁ」
「なあに？ そんなにありがたがるものでもないでしょうに」
「ぼ、僕にはありがたいんです！ でもこれからは大学生らしく、私服で通学するんですよね。いいんちょの私服かぁ……」
解理はいつもより少し、饒舌になっているのかもしれません。
泣かないように、涙がこぼれないように、何か楽しい話題をと考えているうち、
「……よもやあのイモジャ、いや個性的な恰好じゃないですよね？」
「ち、違うわよ！ 私だって大学生らしい恰好のひとつやふたつくらい……で、できるんだから」
自信なさげに語尾がしぼんだ貴子が可笑しくて、思わずくすりと笑ってしまった……その途端に。
「あ……あれ」
楽しいはずなのに、ぽろぽろ。ぽろぽろと、涙がこぼれてしまいました。
（ええいっ、僕の涙腺はいつからこんなに、ゆるゆるになったんだ……！）
一歩、また一歩と足を進めるたび、貴子との別れは鮮明になっていきます。
卒業なんて、してほしくない。尊敬する先輩と、憧れの彼女と、もっともっと一緒にいたい。
（でも、そんなわがまま言ったってしょうがないし。それで先輩を困らせちゃ、ダメだから……）
最後は笑顔で。そう、決めていたのに。
「……っ。ぅ……ん、う……」
ふと。ぽんっと肩を叩かれて、解理は濡れてしまった顔で、おそるおそるに見上げます。
「……ありがとう、伊賀さん。こんなふうに泣いてくれる後輩がいて、私は幸せ者ね」
そんな言葉に、解理の涙はますますぽろぽろ、とめどなく流れ落ちていきました。
「落ち着いた？」
「はいっ、もうすっきり！」
まだ赤い目で、ちょっぴり鼻をすすりながらも、解理はにっこりと笑います。
思い切り泣いてしまったのが、かえって良かったのかもしれません。
ふたりでゆっくりと歩き、桜花寮の前までやってくると、
「あ、そうだ先輩。これ、プレゼントです」
解理はポケットから用意していたものを取り出して、貴子へ手渡しました。
「あら、これって？」
それは、ストラップでした。くっついている見覚えのあるキャラクターは、貴子がある時見せてくれた、解理いわく個性的な恰好の時に来ていたあのＴシャツの、謎のマスコット。何というキャラクターなのかも分からず、探すのにはずいぶんと苦労してしまいました。
「ありがとう。でも、そんなに気を使わなくてもよかったのに」
「いえ、その代わりと言ってはなんですが……先輩の第二ボタン、じゃなくて、リボンをもらえないかなって……」
ダメですか？ なんて、ちょっと上目遣い。再びうるると潤む瞳を見ては、いつも厳格なはずの貴子も、ぷしゅんと毒気を抜かれてしまったようです。
それに何より、今日は卒業式なのでした。彼女はふっと笑みをこぼして、
「いいわ。はい」
「あ、ありがとうございます……！ 僕、大切にしますから！」
はしゃぐ後輩を見つめる貴子の瞳は、高校生活の中では見せたことのないような、柔らかくて優しいまなざしでした。
最後は、笑顔で！ そう決めていたので。
「……先輩！ 貴女は僕にとって憧れの、最高の先輩でした……！」
解理はとびきりの明るい微笑みを浮かべて、彼女を見送りました。
「ご卒業おめでとうございます！ お元気で……！」
「恋愛、ねえ……良く分からないわ」
隣を歩く北風 貴子が、ふとそんなことを言ったものですから。伊賀 解理はびっくり仰天、飛び跳ねました。
「ええっ！？ い、いいんちょが恋を！？」
「あ、いいえ、私じゃなくてね。好きな子に告白をしたけど、フラれちゃったって子がいて」
とのお言葉に、なんだか、ほっ。
校門を出ると、桜並木がいったん途切れたこともあってか、解理の胸には急激に寂しさがこみあげます。
（今日で、いいんちょ……北風先輩とも、お別れ……）
憧れの先輩。彼女との思い出をあげたらキリが無いくらいです。そのくらい、解理の高校生活には彼女の存在が大きく比重を占めていました。
（だから……今日だけでいいから。もう少しだけ、一緒にいたい……）
桜花寮まで送りますから！ なんて半ば強引に申し出たのも、そのためです。
（うっ、まずい。黙っていたら、また泣いてしまいそうだ……！）
式の最中にも涙をこぼしてしまったもので、解理は慌てて口を開きます。
「そ、卒業式も終わりましたし。とりあえず、高校の荷物整理とかするんですか？ 教科書とか、いろいろ使わないものも出てくるだろうし」
「そうね、寮の部屋は綺麗にしておかないと。と言っても、式の前にほとんど済ませてしまったのだけどね。今日はその仕上げってところかしら」
「さ、さすが先輩。ああ……先輩の制服姿もこれで見納めかぁ」
「なあに？ そんなにありがたがるものでもないでしょうに」
「ぼ、僕にはありがたいんです！ でもこれからは大学生らしく、私服で通学するんですよね。いいんちょの私服かぁ……」
解理はいつもより少し、饒舌になっているのかもしれません。
泣かないように、涙がこぼれないように、何か楽しい話題をと考えているうち、
「……よもやあのイモジャ、いや個性的な恰好じゃないですよね？」
「ち、違うわよ！ 私だって大学生らしい恰好のひとつやふたつくらい……で、できるんだから」
自信なさげに語尾がしぼんだ貴子が可笑しくて、思わずくすりと笑ってしまった……その途端に。
「あ……あれ」
楽しいはずなのに、ぽろぽろ。ぽろぽろと、涙がこぼれてしまいました。
（ええいっ、僕の涙腺はいつからこんなに、ゆるゆるになったんだ……！）
一歩、また一歩と足を進めるたび、貴子との別れは鮮明になっていきます。
卒業なんて、してほしくない。尊敬する先輩と、憧れの彼女と、もっともっと一緒にいたい。
（でも、そんなわがまま言ったってしょうがないし。それで先輩を困らせちゃ、ダメだから……）
最後は笑顔で。そう、決めていたのに。
「……っ。ぅ……ん、う……」
ふと。ぽんっと肩を叩かれて、解理は濡れてしまった顔で、おそるおそるに見上げます。
「……ありがとう、伊賀さん。こんなふうに泣いてくれる後輩がいて、私は幸せ者ね」
そんな言葉に、解理の涙はますますぽろぽろ、とめどなく流れ落ちていきました。
「落ち着いた？」
「はいっ、もうすっきり！」
まだ赤い目で、ちょっぴり鼻をすすりながらも、解理はにっこりと笑います。
思い切り泣いてしまったのが、かえって良かったのかもしれません。
ふたりでゆっくりと歩き、桜花寮の前までやってくると、
「あ、そうだ先輩。これ、プレゼントです」
解理はポケットから用意していたものを取り出して、貴子へ手渡しました。
「あら、これって？」
それは、ストラップでした。くっついている見覚えのあるキャラクターは、貴子がある時見せてくれた、解理いわく個性的な恰好の時に来ていたあのＴシャツの、謎のマスコット。何というキャラクターなのかも分からず、探すのにはずいぶんと苦労してしまいました。
「ありがとう。でも、そんなに気を使わなくてもよかったのに」
「いえ、その代わりと言ってはなんですが……先輩の第二ボタン、じゃなくて、リボンをもらえないかなって……」
ダメですか？ なんて、ちょっと上目遣い。再びうるると潤む瞳を見ては、いつも厳格なはずの貴子も、ぷしゅんと毒気を抜かれてしまったようです。
それに何より、今日は卒業式なのでした。彼女はふっと笑みをこぼして、
「いいわ。はい」
「あ、ありがとうございます……！ 僕、大切にしますから！」
はしゃぐ後輩を見つめる貴子の瞳は、高校生活の中では見せたことのないような、柔らかくて優しいまなざしでした。
最後は、笑顔で！ そう決めていたので。
「……先輩！ 貴女は僕にとって憧れの、最高の先輩でした……！」
解理はとびきりの明るい微笑みを浮かべて、彼女を見送りました。
「ご卒業おめでとうございます！ お元気で……！」
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2017年03月18日
- 参加申し込みの期限
-
- 2017年03月25日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2017年03月25日 11時00分
