ミートダークファンタジー！｜リアクション

ミートダークファンタジー！

「ひゃっはー！　めりけん秘奥義ッるぱんダイブッ」
　金色の影が、フライングディスクに食らい付く犬の様に、口だけで宙を舞う肉をキャッチした！
　その影はよく見れば、ゴスロリ金髪ツインテールの少女であった。
「犬が！　狼が！　肉を喰らうのに手を使うだろうか！？　いや、使わないのじゃ！」
　100％のドヤ顔で見栄を切る彼女は堂々と名乗りを上げた。
「うえ～い！　お前は誰だと言いたげな顔をしているから名乗らせてもらうのじゃ！　わらわはテキサス州からきた、めりけん（流暢な発音）なガール、メアリ・ラングストンッ！」
　うん、だから誰なんだよ、という空気が辺りに漂う。
「肉の噂というビッグウェーブに乗りに来たのじゃ！　じゃが、しょっぱいのう！　たかだが一人平均１キロも喰えないのに、なぁにがカーニバルか！？」
　米国は肉食かつどんなメニューでもギガサイズなのは有名な話である。
　総重量２kgのホットドッグが実在することから察してほしい。
「実は、既にめりけん奥義、すねーくウツセミジツによる隠密行動で、和牛の中に祖国めりけん牛肉を忍び込ませたのじゃ！」
　ナ、ナンダッテー！？
　思わず肉を二度見する面々。
「これぞめりけん奥義ッＴＰＰッ精・肉・召・喚ッ10kg投入ッ！　ジャパニーズよ、これが肉食だ。安くて硬いめりけん産の牛肉と高級和牛の味の違い、貴様らに分かるか！？」
「なんて恐ろしいことするんだー！」
　初島が恐怖している！
　しかし、配膳に徹していた綾辻が肉質の不自然さに気が付いた。
「こっちのお肉、サシが入ってないですね……。Ａ５ランクの最高級和牛がこんなはずではないですよね？」
「な、外見で見破るとは、只者ではないのじゃ！」
　メアリは敗北感で膝から崩れ落ちた。
　……まぁ、冷静になって観察すれば、誰もが分かる。
　米国産は赤身が多くて色がやたら濃いのが特徴。和牛は霜降りのせいで全体的に乳白色なのだ。
「くそう、こうなったらめりけん産の牛の味を分からせてやるのじゃ！」
　メアリは赤身ばっかりの肉を目の前で焼き始めると、手近にいた綾辻を捕まえた！
「こっちに来るのじゃ！」
「えっ！？　私はただ、みんなの食事を楽しくしようと配膳してただけで……！」
「近くにいたお主が悪いのじゃ！　めりけん奥義ッ米国産牛肉百烈拳ッ！」
　メアリは焼き上がった硬い肉を、超高速で次々に綾辻の胃袋に放り込む！
「ほわたーっ！　あ～たたたたたたたっ！」
　まるで肉のわんこそば状態！
　噛み切っても噛み切っても口の中に硬い肉が押し込まれる！
（私が食べたかったのは、こんな肉じゃない……！！）
　白目を剥いて仰向けに倒れる綾辻を、握がナイスキャッチ！
　メアリは劇画調の濃い顔で語りだした。
「おまえはもう、食べている……。ナカヨク肉を喰らうには、１人当たりの肉の量を増やすのが正解じゃ……、つまり……」

　Don't think !! Eat !!

　そう言い残して、メアリは館内へ突撃していった。
「俺は綾辻を介抱して奴を追う！　お前たちはあの肉魔王を倒せ！」
　握は言葉に悲壮感を漂わせながら、綾辻を背負ってメアリを追跡開始。
　背中に伝わる綾辻のおっぱいの弾力が、握の下半身に活力をもたらす。
「シダ、蹴っていいか？　シダ、正義のミカタ」
　後木の背後をシダが取る。
「よろしい、教育してあげましょう。食べ物の恨みは怖いですよ？」
　鈴野も後木の退路を塞ぎつつ、自身のろっこん『三式弾【比叡】』のトリガーである白い手袋を両手に嵌める。
「後木肉魔王さんー、帰ったら君の部屋の床が抜けてることを覚悟しておいてねー？」
　猫鳴館のトラップもとい防犯システム開発者の初島は、凄くいい笑顔を浮かべている。
　でも目は据わっている。怒り狂った鬼の目だ。
「横取りする人は……お仕置きなのですよー」
　小刀祢も小型ナイフを今にも投擲しようと身構えていた。
　後木は咄嗟にろっこんで三毛猫がおーさんを召喚するも、多勢に無勢。
「シダ　ダダ　ダダダ♪」
「気合ッ入れてッ投げますッ」
「安心してください、服を縫い付けるだけですよー」
　結果、シダの蹴りと、鈴野の岩塩弾、小刀祢の投げナイフ、そして周囲のモブたちの加勢で後木は呆気なくボコられた。
「真央ちゃん死すとも、お肉は永久に不滅なのだぁ～！」
　断末魔を聞き届けた初島は「後木さんの部屋の床が抜けるように準備をしなくては」と静かに肉を喰みながら遠い目をした。

　ちなみに後木はこのあと、復活した桜崎の手によって、天井ではなく近くの木の枝に吊るされることになる。

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