【発端】
自治会長を後任に譲った
海原 茂は、先日行われた
選任戦のドタバタを思い返していた。
「端的に言えば、カオスだったな……」
まぁ、それが猫鳴館なのだろう、と諦観の念を抱きつつ、彼はシーサイドアウトレットで参考書を購入していた。
海原は受験生である。
まだ生徒会長の任期があるとはいえ、そろそろ本格的に受験勉強へ取り組まねばならないのだ。
「……そういえば」
参考書を購入した際に、本屋で渡された『福引券』と書かれた半券。
店員さん曰く、一等は最高級お肉セット(群馬県産)だとか。
「群馬県産といったら豚肉が有名だと聞いているが、牛肉や鶏肉もブランド化している……と、店員さんが教えてくれたな」
まぁ、当たるわけないよな、とこぼしながら出口を目指す海原。
――だが「いや待てよ? 万が一……」と踵を返して目指すは福引会場。
半券を渡し、例のガラガラを無心でゆっくりと回してみると……?
「でっ! 出たぁァッ! 一等、大ッ当たりぃ~!!」
……海原はしばらく状況を理解できずに呆然としていた。
【よろしい、ならば食事(せんそう)だ】
「と、いうわけだ。今日の夕方にクール便で、その景品がここへ届けられる」
海原は大部屋に寮生を集めて事情を説明していた。
最高級の肉が来るだと!?
育ち盛りの猫鳴館の住民にとって、さながら黒船来航レベルの衝撃度である。
ある者は「めっちゃ食うぜー! 俺を止めてみなぁ!?」と意気込む。
ある者は「折角の最高級の肉だ。どう調理しようか?」とレシピを見繕う。
またある者は「他寮の友達よーぼおっと♪」とメールを送信する。
その様子に、嘆息混じりに忠告をする海原。
「もう俺は自治会長ではないが、上級生として忠告させてもらう……」
腕を組み、キッと厳しい顔で彼は言い放った。
「みんな仲良く喰えよ!?」
――だが、帰ってくるのは生返事ばかり。
(……ひと波乱ありそうだな……)
思わず頭を抱える海原であった。
【目的】
・肉 を 料 理 せ よ ッ !!
・肉 を 喰 ら え ッ !!
・肉が食えない? なら 野 菜 を 喰 ら え ッ !!
【お肉の種類】
すべて群馬県産です。
・最高級A5ランク上州牛10kg(各部位取り揃ってます)
・上州麦豚5kg(各部位取り揃っております)
・上州地鶏5kg(モモ・ムネ・ササミ・内臓系)
【マスターより】
なぜ群馬かって? 地元民だからだよ!
どうも、お肉は好きですかぁー!?
乾物こと焼きスルメです。
肉はたんまりあるので、美味しく調理するもよし!
友人たちと画策して、一枚でも多く食べるもよし!
そして裏切って総取りなんてのもよし!
肉が食べられない人は、家庭菜園の作物を使って調理するのもよし!
勿論、他寮の生徒も(偶然装ったり、友人から招待されたりして)参加OK!
つまり、楽しんだ者勝ち!
さぁ! 謝肉祭(カーニヴァル)の始まりだ!