ミートダークファンタジー！｜リアクション

ミートダークファンタジー！

　霧切は未だに迷っていた。
「みんなどこ行っちゃったんだろ……？　外かな？　あれ、玄関どこ～？」
　オロオロと狼狽えていると、先輩、と呼ぶ声が聞こえてきた。
　モッシュ＆ダイブで疲弊し、館内に避難していた八神だった。
「来てたんですね、霧切先輩」
「おーちゃん！　よかったぁ、知った顔の人がいて！」
　彼女は迷子になったことを告げると、八神が案内すると申し出た。
「そうだ、先輩。今、ここ、肉イベントやってるんですよ」
　八神にとっては、この状況をイベントだと思い込んでるらしい。
「お肉を食べるイベント？　う～ん、そうなんだ……？」
　霧切、今ひとつ実感出来ない様子。
「みんなは裏庭に集まってますけど、まだ料理の一部は大部屋にありますよ。折角ですし、食べませんか？」
「え、じゃあ、ちょっといただいちゃおうかな……？」
　ひとまず２人は大部屋に向かうことに。
　……それが悲劇の始まりだとも知らずに。

　残った料理を霧切はウットリしながら食べていた。
「Ａ５ランクって、こんなに柔らかいのね！　豚も鶏も噛めば噛むほど味が出てくるわ！」
「うん、美味い。とろけそうだ」
　２人がしみじみ肉を味わっていると、クロウディアと冴来が登場！
「オラオラオラオラ！　そこの２人、肉よこせ！」
「よ、よこしなさいよ！」
　ノリノリのクロウディアに対し、冴来は如何にも乗せられてます感丸出しで指差した。
「なんだ？　肉欲しいのか？　別にいいけどな？」
　八神は日頃から高い肉を食べなれているため、特に執着せず肉を明け渡そうとした。
　なんてブルジョワ！
　だが、霧切は突然の事態にテンパっていた。
「え？　お肉強盗！？　む、無理矢理はよくないよ！？」
「うるせぇ、肉をよこせ！　さてはそのバックに隠してるな！？」
　どういう思考回路でそうなるのかは全く理解できないが、彼は霧切が大事に抱えるバッグにお宝（肉）の匂いを嗅ぎとったようだ。
「あ、このバッグは！！」
　まさかお宝（10万円）が入っているとは口が裂けても言えない。
　大金の入ったバッグを抱えていると知れたら、何されるか分かったもんじゃないと霧切は震え上がった。
「ねぇ、クロウディア？　流石にそれは違うと思うわ……」
　止めに入る冴来の言葉を聞かずに、クロウディアは霧切のバッグを奪い取ってしまう。
「はっはっは！　きっと怪しいモンへ全て肉を隠しているに違いない！　ほら、冴来。こっちの肉を担いでくれ！」
　そう言いながら、冴来へ肉の塊を放り投げた。慌てて冴来はキャッチ。
　完全に騒動に巻き込まれて成す術ない様子である。
　クロウディアは八神たちから奪った料理を、台所にあったタッパーやジッパー付きビニール袋へと放り込んでいく。
「返してほしけりゃ捕まえてみろ！　　悪いことをして逃げてる時って本当に楽しいよな！」
「ねぇ、待ってクロウディア！　置いていかないで！」
　強盗もどきの２人が部屋を出た数秒後、怒号とともに大勢の人数が大部屋に押し寄せて来た。
「きゃー！？　みんな殺気立ってるー！？　マ、マカロンあるから、一旦落ち着こう、ね？」
　霧切は持参した大量のマカロンを差し出してみた。

「「デザート、キター！」」

「「ぎゃあああああああああ！！！」」

　霧切、八神を巻き添えにして寮生たちに蹂躙されるの巻。
　マカロンは１分もしないうちになくなりました。
　２人は体中をもみくちゃにされ、既にボロボロであるが、決して膝を付いて降参しようとしなかった。
「……もう怒ったわ！　10万円を取り返すわよ！」
「なんで俺がこんな目に……、許さん！」
　霧切と八神も捕獲班に参加決定。
　多分、一番怒らせちゃいけない人を怒らせた気がするのだが……。

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