【星幽塔】第九階層　星が飾ったカナーリス｜リアクション

【星幽塔】第九階層　星が飾ったカナーリス

「ネッシ、あの開けた場所に降りて」
　指さすみつびの声に従ってネッシーはゆっくりと降りていく。
　探検は豪の得意分野だ。罠にも警戒しながら洞窟を探すと彼は「こっちだ」と指さした。
「うんうん～」
　ふらふらと歩き出すみつびに「おいっ」と慌てて声かける。豪を困らせるプリティモンスターの登場である。
　かいぶつにキックを飛ばすぞと大暴れをする彼女にツッコミを入れながらも豪はゆっくりと歩き出した。
　彼の力は戦闘向きではないが、ろっこんを使用し、重いものを投げれば多少の時間を稼げるはずだ。
　しかし……プリティモンスターの大暴れは予想外の行動だった。
「星の力に反応して花が開くならこうして使用してれば見つけられるはずだよな」
「ねえねえ、黄金の花って生きてて喋るんだっけ？　わがままなコだったらどうしよ？」
　首傾ぐみつびにどうだろうなと豪はぼやく。黄金の花が枯れた理由――それがどこにあるのかは分からないが、女の子だというならどうにかしてやりたいという気持ちは大きくなる。
「豪くん、わたしのほうがワガママって？」
　ぶう、と膨れっ面になったみつびに悪い悪いと謝りながら二人は洞窟の中を進んでゆく。

　

「おおっと」
　アルゴーから見下ろせば、辺りは草、草、草だ。
　黄金花を探すには他のメンバーと共に進むのが最善だが、梢の目的はもう一つあった。

　――素敵な調合材料ゲットだぜ。

　それにしても、商人たちの情報だけでは中々に骨が折れそうだ。
　クレイモアを手にして、木々に気を付けながら進もうとする梢の背中にピエロットは「草の区別なら僕がつくよぅ」と首を傾いだ。
「えっ、じゃあ、調合材料とかわかります？」
「んー、……うん。ちょっとならー、アルゴーの僕のお部屋にね、リストあるよぉ」
　作ったやつだよとうとうととしたピエロットに梢は瞳を輝かせる。
　戦闘を避けて通れるなら通りながらレア物をゲットするぞと梢はピエロットの作成したリストを手にアルゴーを後にする。
　蝶々にその身を変化させ、ふわりと身を投じながら、かいぶつを翻弄し、「襲ってこないなら見逃してあげまーす」と唇に笑み乗せて戦う姿は美しい。
　握りしめる剣を器用に扱った梢は楽しげに笑って、地面を踏みしめた。
「黄金の花とレア調剤材料でwin-winですねー」
　アルゴーから離れ、一人森林の中を進んで行く梢の目の前には二足歩行をする鰐の姿がある。
（……結構、大きいですね？）
　木々で体を隠しながら、精一杯に身を固くする。クレイモアを握りしめ、後方から飛び掛かる様に刃をふるった。

　キン――

　鰐の爪先とぶつかった刃が音たてる。
　ふわ、と身を蝶々に変化させ、直線的な攻撃をわざと歪めた梢はその儘、鰐を避ける。
　出来る限り戦闘は無用だ。その向こう側に求めるものがあるはずなのだ。
「さあ、どうします？」
　土を踏みしめる靴裏が僅かに沈む。ゆっくりと剣を握りしめた梢は距離を取りながら「見逃すことも可能ですけれどー」と笑みを溢した。