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- 00月00日生 00歳
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回向亭茶話 ～今なら不良坊主も同席につき。
「やっぱり、在った」
御剣 刀がかつて尋ねた路地を見つけたのは、たまたまのことだった。
物言わぬ人形のルヴィアを腕に抱いて、いつものように神魂に絡んだ事件が起こってはいないか、見回りをしてた時のことである。
通りを横切るように路地へ走りこんでいった猫の姿に導かれ、店の前に立った刀は、一度呼吸を整えて、店の扉を開く。
「こんばんは～」
「いらっしゃい――こんな夜分にどうしたね」
祖父を超える齢を重ねたかのような店主と、先客らしき、若い坊主の男性。
「ちょっと散歩を。珈琲と紅茶をいただけますか？」
ルヴィアを傍らの席へ座らせながら、そういう御剣に、老人は少し肩眉を上げて考える素振りを見せたものの軽くうなずいて応じた。
しばしして、珈琲と紅茶のカップが、カウンターに一そろい並べられる。
いただきます――そう言って珈琲のほろ苦い味わいを楽しむ刀。
夜の寒風に冷えた身には、その温かさが何より美味しい。
ふといつの間にか小腹がすいていることに気付く。――ルヴィアも、甘味が欲しそうな気配を醸し出している気がした。
「何か、お勧めの甘いものあります？」
「せやったらぜんざいがお勧めやで。ちょうど土産に持ってきた大納言でこさえてもろてるとこですのや」
少年の問いに答えたのは横で日本茶らしきものを堪能していた若い坊主の方だった。
「まぁ、もうそろそろ食べごろじゃろうし、ええかの――お前さんもそれでよいかね？」
否やはない。肯いた刀を一瞥し、老僧は奥のコンロで弱火にかけられていた手鍋の蓋を開く。途端、然程広くない店内が甘い香りに染め上げられていった。
そっと椀によそわれたぜんざいが、三つカウンターに並べられる。
「したらいただこか。そういえばあれやね、神在餅いうんが出雲にあるけど、あれがぜんざいの名前の由来やーて話があるらしな」
アツアツの椀を息で覚ましながら店主へ語りかける、客の坊主。
「そういう話もあるが――どっちが先かは、わからんわな」
そういえばぜんざいの由来なんて考えたこともなかったな、と刀は出された椀に口をつけながら思う。珈琲の苦さに慣れた舌に、砂糖の甘味が染み渡る。
「おいしいですね、これ」
「せやろー、とびっきりの豆と餅をもってきたんや。美味いにきまとるがな」
「豆がなんであろうとぜんざいは美味いもんだと相場が決まっているもんだ。それこそ、ぜんざいの由来は善哉――甘い香りと、豆の赤身、餅の白さ、それぞれがそれぞれを支えあい、堪えられない旨味を醸し出す。これをもって善哉と申すべし、と一休和尚が言われたともいうわけだしな」
自らも椀に口をつけながら楽しそうに講釈を垂れる老僧の店主に、かつて垂れられた説教を思い出す。
『山は裾野があって初めて山たる。大樹は周囲に譲られて初めて大樹たる。地に根をはれぬ木はいずれ朽ちるもの、何事も足許から』――地に根を張った、とはまだ言えないけれども、それを意識して、日々を重ねてきていると、そう思っている。
進んだ道の先が、かつて見た孤独の背中であろうとも――別の何かを、きっと背負えているのではないか、空虚さの代わりに、何かが詰まっていてくれるはず。そう信じて、毎日を送ってきたと思う。
「ご馳走様でした」
椀を干し、あの時得た想いを再確認して、刀は頃合いとばかりに席を立つ。お会計にいくらかのお金を渡した青年は、受け取った老爺にひたと向き直り、「その節は、ありがとうございました」、と告げる。
「おや、何かしたかね？」
不思議そうに問う老僧。
「以前ここに世話になって、そして言葉をもらえて――それが、今の俺にはありがたかったから、それだけは、言いたかったんです」
そういって笑う刀に、「そうかい、そりゃよかった」と応じる僧侶。
ルヴィアを抱いて店を出た刀。扉を閉めたと思った時には、入ってきた際の小さな通りではなく、大通りの真ん中に二人で立っている状態だった。
「本当に不思議な店だな――」
思わず刀はひとりごちる。
未来のあり得る自分を垣間見れるとかズルいとは思うけど、見れてよかった――そう、思えるのは確かな事実。
「ルヴィアは、あの店をどう思ったかな？」
腕の中の少女に語りかけるも、返る言の葉な未だなく。
ルヴィアとの未来も見ることができたなら――。
ふと囚われた、その思い。
だが、すぐさま刀は頭を数度振って苦笑する。
「これ以上のズルは良くないな。さ、ルヴィア。今日は帰ろうか」
どっしりと構えていれば――何が起きても、大丈夫。
そう思い、刀は家路を歩き出した。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2017年01月08日
- 参加申し込みの期限
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- 2017年01月15日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2017年01月15日 11時00分
