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回向亭茶話 ~今なら不良坊主も同席につき。
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浅葱 あやめ
の目の前に、かつて見た店の入り口があった。
――もうこの店を訪れることは出来ないのかと、思っていたんですけどね。
そう内心で思いつつ、少し息を止めて扉を押し開けた。目の前には以前見たままの内装。通りのいいその空間の奥には、ひっそりとかつてくぐった扉がそのままに鎮座している。
視線を手前に引き戻すと、一枚板のカウンター。以前来た時にはいなかった客が、今まさに会話をしていたところだったのだろう。半身をカウンターに向けたままで、ちらっとこちらに目を走らせてくる。
カウンターの中には――坊主頭の、マスター……なんでしょうか。
以前見たマスターは仙人然とした老人だった。けれども、今カウンターの奥にいる作務衣の青年は、面影こそは残すものの、どう見ても30を超えているようには思われない。
「いらっしゃい、またお会いしましたね」
にっこりと人懐こい笑みを浮かべ、カウンターの一席を示して案内してくれるその青年の言葉に少しだけ戸惑った。それでも言われるがままに腰を下ろせば、水の入ったグラスが丁寧におかれて。
「ご注文は?」
問う、細められた眼が、確かにかつての老爺を思い起こさせる。
メニューに少し目を走らせて、少し迷い、決めた。
「珈琲と、チーズケーキをいただけますか?」
「かしこまりました」
カウンターの奥、青年が慣れた手つきで挽かれた粉を取り出し、器具へ流し込む。フラスコにもミネラルウォーターが静かに注がれた。この前は全然気づかなかったが、珈琲用の水が別にあるらしい。
「随分熱心に眺めてはりますな」
横にいたお坊さんが、興味津々、といった声音で語り掛けてくる。普段なら身構えることも多いはずなのに、耳に心地よいその声が、あやめの気をわずかに緩ませた。
「ええと……その。以前頂いた珈琲が、忘れられなくて……」
「それはそれは」
応えたのはカウンターの中の店主の方だった。見れば視線を外している間に、冴えた蒼い炎が、フラスコの下で揺れている。
一瞬見とれ、ついではっとして、失礼だったかなと、少し慌てた。
「……いえ、その、このお店のことが、です――すみません」
「光栄です――珈琲は店の一押しですから、覚えていただけているのなら、これ以上ない幸せというものですよ」
「はっ、単なる西洋好きのかっこつけのくせしてかなんわぁ――あだっ、客に何すんの」
指ではじいた珈琲豆を額に当てられぶうたれる客の坊主と、「知りませんな」、と言い切るマスター。その間も、あやめは流れるような店主の手つきを見つめていた。
「また扉の向こうに行かれたいと――そう思われて?」
店主の言葉でゆらりと視線を奥の扉に向けるものの、あやめは小さく首を振った。
「いえ、今日は……ゆっくりと珈琲をいただきたいので」
そう、あそこで見ることができた夢は、きらきらとしていた。けれどいいのだ。今日は。
……少なくとも、今のところは。あれから少し、少しだけど、進めている気がするから。
目の前で漏斗を上下した水と、抽出された珈琲の液。
止められたガスバーナーから薫る、微かな燃焼香。
いずれも前回出された時には気づかなかったもの。
やがて、丁寧に切り分けられた自家製チーズケーキと珈琲が、目の前に供された。
爽やかな香りが立ち上りつつも、熱すぎない程度に調節されたそれを、恐る恐る、啜り呑む。――濃い、それでいて苦みがぎりぎりまでにとどめられた味わいが、胸に沁みる。
「味はどうです?」
かつてと同じ、その問いかけ。
「ええ、美味しいです……とても」
前のように、苦みがすぎることはなく、絶妙なバランスを取っているのだろうことが容易に知れた。添えられたチーズケーキの甘みと柔らかな酸味が、調和する円熟の一杯に思えて。
「実は――、以前こちらの珈琲を真似られないかと思って、自宅でやってみたんですけどね……」
結果はひどいものだったのだと、あの苦みだけを思い起こして作ってみたのだが、器具が違うというものではなく、ただ単純に渋く、苦く、雑味ばかりが先立つものになってしまったのだと、そう言い、「やはり本職でないとだめなのかなと思いました」と肩をすくめた。
そんなあやめに、店主は小さく微笑んで見せる。
「あれは単なる失敗作です、言ったでしょう――? でも、それが偶さかその時のあなたには美味しく感じられた。御仏が、私に失敗させてくれたのは、あなたのための珈琲を入れなさいと、おっしゃったのでしょう」
そういうと、静かに合唱してみせる店主。横にいる坊主が妙な――背中をかゆがるような――顔をしていて、すこしだけ、おかしくなった。
「――おや」
くす、とそんなあやめを見て、店主が笑みをもらす。
「どうか、しましたか?」
「ようやく笑っていただけた」
くすくす、と笑みをこぼしながらそういう店主に、あやめは手の甲でぬぐうように、口元を隠し、少しだけ頬を染め――同じ程度に、困惑の色を浮かべた。
以前来た時は、意識して表情を硬く保っていたものだけれども。
何気ない店主や隣客との会話、おどけた店主のしぐさ、漂う爽やかな焙煎香。
気が抜けた、とは違うのだけれど、自然に笑みが零れ、その笑みに、相手が気を悪くした様子を見せないこと。
それが、ほんの少しだけうれしく――気恥ずかしく。
あやめは飲み時を過ぎようとしている珈琲を、一気に飲み干すのだった。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
蒼李月
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ★(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
神話・伝説
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年01月08日
参加申し込みの期限
2017年01月15日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年01月15日 11時00分
参加キャラクター一覧
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