【星幽塔】第八階層　妖精のオーブと２人の乙女｜リアクション

【星幽塔】第八階層　妖精のオーブと２人の乙女

●巨人崩壊

「声が……聞こえます！　恵御納さん……水が来るって！」
　激しい戦闘の最中、風の魔法で音を拾っていた美咲紀が声を上げた。
「よし！　みんな滝壺から離れるんだ！」
　修が仲間に叫ぶ。枯れた滝壺に巨人を足止めしていた彼らはそれぞれが巨人に背を向け走り出す。
　すると上の方からザザザーッと水の流れる音が近付いてきた。その音はみるみるうちに大きくなり、崖のようになっている山肌の上から突然大量の水が轟音と共に落ちてきて、巨人の頭を砕くように降り注いだ。
　巨人の頭が、体が、ボロボロと流れ出していく。しかし巨人も負けじと水の勢いに逆らい地面を盛り上げるように己の形を保とうとする。動きを止めた巨人。そこに飛び出したのはサキリだった。

（―――今しかない！）
　サキリは走りながら土の魔法を発動した。光を発しながらツヴァイハンダーが石を纏っていき、サキリの手に規格外の超巨大剣が出来上がる。それを両手で握りながらサキリは＜斬空赤刃＞を発動した。
　瞬間、サキリの姿は巨人の頭上高くにあった。
「これで……終わりだ！！」
　空中から落下しながらサキリは赤く輝く刃を巨人の頭上目がけて全力で振り下ろした。
　重量のある刃が、落下速度を味方にしながら砕くように巨人に一直線にめり込んでいく。硬化まで間に合わない巨人が大きな亀裂から砕け始めた。
「よし！　核が見えた！」
　修が水の中で崩れていく巨人に向かって走り出す。そして飛び上がりながら崩壊と再生を繰り返す巨人の泥の中に鋭く光る日本刀を斬り入れた。
　カキーン！　手応えと共に、硬質の音が響いた。
「やった！」
　修は転がり落ちたサキリと目を合わせる。ずぶ濡れの２人はそのまま森の方に走り出した。
　瞬間、核を破壊された泥の巨人が崩壊する。地滑りのように大量の泥を滝壺に叩きつけながら、跡形もなく巨人は崩れ去った。

「やった！　お見事！」
　圭花、美咲紀、まほろが森の中に座り込んだ修とサキリに走り寄る。その時、頭上高くから声がした。
「おーい、大丈夫かー？」
　羽ばたく桃白猫が、轟と夏朝を背に乗せてゆっくりと降りてくる。５人は笑顔で彼らに手を振った。