【星幽塔】第八階層　妖精のオーブと２人の乙女｜リアクション

【星幽塔】第八階層　妖精のオーブと２人の乙女

●４人のロンド

　束の間の異世界での休息。オルカ・ヴィヴァルディと獅子目悠月は２人並んで城内を歩いていた。

　ふと思いついたようにオルカがくるりと悠月の方を向いた。
「蜘蛛との戦い、俺頑張ったよね～？　そのご褒美が欲しいな、悠月」
「ご褒美？」
　パチクリと瞬きをして言う悠月に、オルカがウインクをして言った。
「ドラゴンがいるっていうし、見学デートしない？」
　オルカの提案に悠月が笑いながら頷いた。
「何かと思ったらそんなことか。いいぞ、俺も興味がある」
　やった！　とオルカの声が弾む。ではミニドラゴンのいる裏庭に行こうかと２人が向きを変えた時、廊下の先にロベルトとアカリの姿が見えた。

　ロベルトは悠月を見つけると、早足で近付いてきて得意げにポーズを取った。
「どうだい獅子目！　今日の僕は……魅力的だろう？」
　突然の発言に悠月は思わずオルカと顔を見合わせる。そしてクスクスと笑いながら言った。
「そうやって直接的にいう所がお前の可愛いところだと思うぞ」
「いや、だってホントに魅力的になってるはず……！」
　ムキになって抗議するロベルトに、悠月はますます笑ってしまう。それを見てオルカはちゃかすように口を挟んだ。
「じゃあ先輩、ここでカッコイイ台詞を♪」
「え、え？」
　思いもかけないフリにロベルトは戸惑う。しかしむんっと一呼吸置くと、悠月の瞳を捕らえるようにみつめ、言った。

「……獅子目。今度こそ君を守るよ。絶対に」

　一瞬、息が止まった。
　悠月は赤くなりそうな顔を隠すように、横を向いてぶっきらぼうに言った。
「守られる程弱くはない。残念だったな」
「そんなぁ……」
　途端にへなへなとロベルトは涙目になったが、悠月はどうしてもロベルトの方を向けなかった。
　―――ああ、本当に、こういうのは馴れないんだ。
　予想外の言葉だった。まるで心がしもやけをおこしたかのようにむず痒い。どうしてなんだろう、こいつが、何時もよりも何故か頼りがいがあるように見えてしまう……。
　その時、オルカの悪戯っぽい声がした。
「じゃあ、俺には守られてみないの？　悠月」
　ニヤニヤするオルカにロベルトがガウと噛みつく。
「だから獅子目は僕が守るんだってば！」
「大丈夫、先輩も守ってあげますよ～？」
　黒い犬と赤い犬がケンカしながらじゃれ合っているようだ。その様子に噴き出しながらも、悠月はあのちょっとドキリとした雰囲気が流れた事にほっとしていた。

「ドラゴンを今から見に行くんだ、お前も行ってみるか？」
　悠月はロベルトに声をかけた。ぱあっとロベルトの瞳が輝く。
「本当！？　僕も行く！　ね、来島」
「獅子目がいるのは気にくわないけど……先輩が行きたいならいいです、よ」
「やったー！」
「……やっぱりそういう素直な所は可愛らしいな」
「だからかわいくなーい！」
　掛け合いのようにする友人達との会話は心地いい。悠月はふっと微笑むと、オルカと並んで歩き始めた。