試験勉強しなくっちゃ！｜リアクション

試験勉強しなくっちゃ！

【努力の天才】

　授業中はいつも真面目に取り組み、先生の発する一語一句に耳を傾け、書き取りだってばっちりこなします。新田亮は決して天才肌ではありませんけれど、日頃のそうした地道な努力のおかげで、彼の成績は比較的優秀であると言えました。
（さてと……まずは、今日の復習だ）
　それに、彼は学校から帰ると、その日授業で習ったことを、その日のうちに復習してしまいます。
　その方法こそシンプルで、教科書をじっくりと読み返すのが中心ではありましたけれど……元より授業内容は、授業中に概ね理解してしまいます。その上で、不足なら先生に尋ねて教えてもらったり、インターネットで分かりやすい解説サイトを探して、自力で解決してしまうこともありました。
　おまけに一週間に一度、休日には、その週に習った内容を総ざらい。念には念押し、総復習！　おかげで、
「試験だからと言って、焦ることはない」
　彼は涼しげ、クールに言い放つことができるのです。
　続いて彼が手にしたのは、家庭科の教科書。
（今回も、家庭科を重点的に学ぶとしよう）
　副教科といえど、亮が手を抜くことはありません。ことに家庭科は、日常生活で直接的に役立つ局面も多く、やりがいがあり、いつも力を入れているのです。
（『500gの米を炊くとき、必要な水の量はいくらですか？　計算式も書きなさい』……っと。軽いな）
　ちなみに、亮の一番の得意科目は、数学。ことさら力を入れているわけではありませんでしたけれど、基本的な式を覚えてしまえば、あとは機転と応用で何とかできる数学は、頭の回転が速い亮にとって肌に合うようです。おかげで、その他の科目にもこうしてたびたび登場する計算問題だって、さらりと答えることができました。
　すらすら。握ったペンは滞ることなく、流れるように走ります。

　いいえ、まだまだ！　亮の堅実さは、それだけに留まりません。何事にも手を抜かない性分が、彼の努力を支えているのです。
（……ここに、針を通して……こっちに、こうか。よし）
　鉛筆はひとまず置きまして、彼が何をしているのかと言いますと……ぬいぬいぬいぬい。お裁縫！　でありました。
　家庭科を勉強するにあたって、覚えるだけでは意味が無い！　と、彼は自ら実践までもしてしまうのでした。もともと手先は器用なほうで、亮はちくちくぬいぬい。なかなかにお見事な手さばきであります。
　期末テストは筆記が中心だとしても、確かに、授業の中で実技を披露することもあるでしょう。もちろんそうして身に付いた技術は、実生活の中でもお役に立つはず。
（自分でやってみるほうが覚えるし、覚えるだけでも意味が無いからな……ん、できた。良い出来だ）
　じゃん！　出来上がったのは、調理用のエプロンでした。試しに身に着けてみると、亮の小柄な体格にぴったり、ジャストフィット！
　くるりと振り返ると、彼の瞳が、きらん！　輝きます。
「次は、料理だな。さて、何を作るか……お、これがいいな」
　その表情は何とも凛々しく、男前！
　家庭科の教科書から手ごろな課題をピックアップすると、キッチンへ向かい、とんとんとん。やがて刻まれる、軽快なリズム。
　鉛筆を針と糸へ、そして包丁へと持ち替えて。亮の自主的家庭科実習は、まだまだ続きます！