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夜とお菓子と、あとひとつ。
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白い間隙が訪れる。
キャンバスに描かれた描線と水彩の世界に沈み、没頭し、耽溺していた心に、冷たく白い吹雪が押し寄せる。めくるめく色彩の地平に到達しようとして動かし続けていた絵筆が止まれば、心の奥底から湧き出そうとしていた描線が、色彩が、たちまちのうちに灰色の雪群に呑まれて消える。
残されるのは、現実に引き戻されてキャンバスの前に立ち尽くすひとりの少女。
カーテンも閉ざさぬその部屋には、夜更けの闇が白々とした月明かりと共に流れ込んできている。
白銀の月光に、少女の華奢な背を波打ち流れる艶やかな黒髪が翡翠じみた光を跳ね返す。絵筆を手に静謐を纏って佇んだまま、
三宅 葉月
は黒髪に宿る翠よりも尚鮮やかに深い森の色した瞳をゆっくりと瞬かせた。
片手に掴んだパレットが僅かに揺らぐ。パレットに躍る色彩を見下ろし、もう片手に持った絵筆を色の海に沈めようとして、再び目前の絵画の世界に潜り込もうとして、出来なかった。
静かに静かに、痩せた肩がもう一回り萎むほどに細く長く、深い海に潜り溶けていた森の精霊が水面でかたちを取り戻し息を取り戻したかの如く、息を吐き出す。
そうしてしまえば、一度去った色彩の嵐はしばらくは戻ってこない。
今日はもう、絵筆は取れない。
集中力が削げてしまった。
美しい人形じみた白皙に陰さえも碧い睫毛が落ちる。絵筆を握る繊手に震えるほどの力が籠る。
冷たい床に落ちた細い影が僅かに揺らぐ。もう一度絵筆をキャンバスに奔らせようとして、やはり出来なかった。色が定まらない。かたちが視えない。
黒髪に隠れがちな細い首をもたげ、窓の外の月をしばらく眺めて後、葉月は諦めたように絵筆を擱いた。それと同時、身を苛むほどの空腹に気づいた。
戸口の壁掛け時計を見る。午前二時。昼にサンドイッチを食べたきり、おおよそ十四時間、星ヶ丘寮内に設けた専用のアトリエに籠り切っていたことなる。
画材を片づける。アトリエの端のシンクで水彩絵具塗れの手を洗い、ついでに清冽なまでに冷たい水で顔を洗う。滴る水を真新しいタオルで拭い、絵筆を持つ間、乱れるままになっていた髪に幾度か手櫛を通す。
窓の向こう、冴え冴えと広がる夜の庭を見遣る。少しの庭と塀を経たその先には、星ヶ丘の町並みがある。
アトリエの央に据えたキャンバスを見つめ、小さな吐息をひとつ。
(外に出よう)
決めてしまえば、行動は早い。
窓の外に舞う二月の真夜中の風を思いながら、廊下に飛び出し、玄関に向かう。途中で立ち寄った寝室から取り出したコートで充分に身を守りつつ、人気のない廊下を渡る。
こっそりと寮を抜け出すべく足音を殺して歩けば、密やかな笑みが唇に浮かんだ。
(たまにはこんな夜もあったっていいじゃない)
音立てずに玄関の扉を開け、冷気を絡めて吹きこむ夜風と入れ替わりに外に出る。頬を打つ風の冷たさは、コートに分厚く包みこんだはずの細い体からあっと言う間に温もりを奪った。
肩をすくめ、華奢な身を微かに震わせながら、白銀の月光が降るばかりの夜の道をゆっくり歩く。寮を離れてしばらく歩いたその先、住宅街の一角にふわりと灯る光を見つけた。
人工のものではない温かな光と雰囲気に惹かれ、近づく。
そこは赤煉瓦や窓のほとんどを蔓植物に覆われた、深夜営業中の小さな喫茶店だった。木枠の硝子扉の把手には、店名らしい『Dorothy』の浮彫。
扉から見えるカウンターの奥の女店主に手招きされるまま、自分以外に客のいない店に入る。
扉を開けた途端、柔らかなハーブの香とそこここに灯るランプの光にも似た温かな空気が身体を包み込んだ。
「いらっしゃい。貴女も、勉強の息抜き?」
穏やかに笑う中年の女主人は、もしかすると少し前に似た状況の学生をもてなしたのかもしれなかった。
みどりの黒髪を揺らし、葉月は首を緩く横に振る。
カウンターの他にはない席のひとつに腰掛ける。手元に置かれた古びたランプの光を頼りに、掌サイズのメニュー表を眺める。
頼んだのはミルクティ。メニューにあった『おまかせ』の文字に興味を惹かれるまま、それも併せて注文する。
狭い店内の壁と言う壁を埋める棚に飾られた瓶詰のポプリや大小さまざまなアロマポット、天井から吊るされたハーブの束を眺めるうち、注文の品が届いた。
ポットサーブのミルクティと、薄紫の小さな花をたわわに咲かせた鮮やかな緑の葉の小枝が添えられたクッキーと一口サイズのロールケーキ。
「クッキーにはローズマリー、ロールケーキにはレモンバームが入っているわ」
「……ありがとう」
カップにミルクを注ぎ、ポットの紅茶を注ぎ入れる。ふわりと広がる心和むまろやかな香と熱に、思わず小さな息が零れて落ちた。
齧れば口中に目の覚めるような香りを放つローズマリーのクッキーをお供に、優しいミルクティを口に含む。
冬空の下を歩いて凍えた身体が人心地つけば、思うのは、今年高校三年生になり、来年には卒業に至る己の状況。
進路は定めている。
己の叩く門が最難関であることも、それに父が良い顔をしないばかりか、おそらくはその道を進ませぬがために今以上に苛烈な圧力をかけてくるだろうということも、理解している。
どんなに努力しても、いくらいい成績を取ろうと賞を取ろうと、褒められた試しがなかった。いつだってそれ以上を求められた。それもこれも、己の成長を想ったわけではない。ただただ、挫折を願ってのこと。
(……だから、何?)
カップに唇を触れさせながら、葉月は翡翠の瞳をもたげる。
(わかりきったことじゃない)
己が己の道しか歩けないことを知っている。歩く気もない。
自分の人生は自分にしか生きられない。
どんな邪魔が入ろうとも、茨に絡め取られるように足を引っ張られようとも、
(行くしかないじゃないの)
もう、定めたこと。父の思惑のままに折れたりは決してしない。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
16人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年12月08日
参加申し込みの期限
2016年12月15日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年12月15日 11時00分
参加キャラクター一覧
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