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夜とお菓子と、あとひとつ。
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粉雪よりも柔らかな純白の生クリームを色鮮やかに飾るは、上から下まで真紅に染まった大きな苺。うっとりと甘い生クリームをくっつけたまま、紅い苺を口に含めば口中に果汁が溢れ、中まで真っ赤な果肉を弾けさせるに違いない、そうして絶対に蕩けるほど甘いに違いない。
ふんわりとした生クリームの下には、どこまでも柔らかくてしっとりと肌理の細かいスポンジが隠れている。ほんのりと洋酒の香だけをお淑やかに纏ったスポンジは、きっと生クリームと苺で飾り立てるためだけに作り出されたもの。
「ふふ、……うふふ」
銀色の皿に乗せられた究極に美味しそうなショートケーキを前に、銀色のフォークを手にした
本居 陽毬
は長い睫毛を切なく震わせ、白い頬を苺もかくやとばかりに紅く染める。波打つ栗色の髪を艶やかに揺らし、ついでにたわわな胸も揺らし、吐息まじりの堪えきれない笑みを零す。
「うふふ、うふふふ」
銀色のフォークの先端が、綿飴よりも柔らかで乙女の肌よりも艶やかな生クリームに今しも触れる――
「はっ……」
もたげた視界に飛び込んできたのは見慣れた桜花寮の自室の机。
広げた教科書の紙の痕がついた頬を擦り、唇の端についた涎の痕も拭い、陽毬は哀しい哀しい溜息を吐く。
夢だった。全て夢だった。
宿題を片づけるつもりがうっかり机に突っ伏して寝てしまっていた。時計はもう深夜の時間を指している。
(美味しそうだったなぁ……)
せめて夢の中でだけでもあのショートケーキを口いっぱいに頬張りたかった。そう思った途端、応じるようにお腹の虫が高らかに鳴いた。
(食べたい)
泣き喚くお腹を押さえ、本能の如く机の脇に置いた鞄の財布を探る。せめてコンビニでささやかにショートケーキを買うくらいのお金はあるかもしれない。
そうっと中身を見てみよう。そうすれば知らない間にお金が増えているかもしれない。一抹の期待を抱いて財布を覗いて、
「うっ、……」
ダメだ、と床に崩れ落ちる。
お金がない。
今月だってやっぱり金欠。親からの少ない仕送りで桜花寮に暮らす学生なんてこんなもの。
(それに)
床にダイイングメッセージを指先で書き込みながら、陽毬は自分に言い聞かせる。こんな時間にこんな空腹でコンビニになんて行けば、きっとショートケーキ以外のものも買ってしまう。金欠を通り越して文無しになってしまう。
(……でも)
嗚呼、でも! 陽毬は不死鳥の如く立ち上がる。
(お腹が空いて眠れそうにないし)
買いに行かないという選択肢は、
(……ない!)
お金のことはなんとかなる。たぶん。
(きっと、そうだといいな!)
ふわっとした希望と鋼の如き決意を胸に、陽毬は寮を抜け出すべく素早く行動に移る。心にあるのはただひとつ、
(コンビニで、ショートケーキを買うのだあああああ)
果てない食欲のみ。
その食欲のみで寮を突破し、真冬の真夜中の道を最寄りのコンビニにまで走る。
走って走って、白い息を弾ませながら入った暖房の効いたコンビニでまず手に取るは入り口の買い物籠。真っ直ぐ向かうはスイーツコーナー。お目当てはパックに二切れ入りのショートケーキ。あとプリン。それからシュークリームにエッグタルトに豆大福。
「本居」
「ひゃっ」
ショートケーキを買いに来たのにショートケーキ以外の甘味を山ほど籠に入れているところを背後から声を掛けられ、陽毬は思わず息を飲んだ。
そろそろと振り返れば、立っていたのは同学年の男子、
水守 流
。
「水守君」
「ちーっす、お前も夜食買い出しか?」
言いつつ手慣れた様子で籠を手に隣に立つ流とは、互いに『食い友』とも呼び合う、よく一緒にご飯やおやつを並んで食べる仲。
「さーて、今日は何を買って食うか……」
「よく来るの?」
「まーな。今日は飯テロ番組見てたら腹が減ってきたもんでな」
食欲刺激しまくり、と笑う流の寝癖のついた横顔を陽毬は眺め、力強く頷く。
「お腹が空くのは仕方がないよね」
山盛りの甘味をうっかり籠に入れてしまうのも仕方がない。
「本居は、……食い物の夢でも見たか?」
「どうして、分かるの……?」
目を丸くする『食い友』陽毬を横目に、流は飲み物として欠かせないコーラのペットボトルを籠に入れる。素っ気ない態度で、陽毬の頬を示してみせる。
「教科書か何かの痕がついてる」
「そうなんだよー、居眠りした時の夢で、ショートケーキ見たら食べたくなっちゃって……」
「……そうかー」
ショートケーキどころではないお菓子山盛りの陽毬の籠をちらりと見遣り、すぐに目を逸らす。突っ込めばきっと怒られる。
「せっかくだから買った後に近くで一緒に食わねぇか?」
「わあ、いいねえ!」
嬉しそうに眼を輝かせる美少女に、けれど流は一片の期待もしない。
「わけっこしよう! シェアしよう!」
可愛くて人懐っこくてロマンチストなこの女子は、実は食欲の権化だ。今だって、真夜中に同い年の男子と並んで何かを食べるというシチュエーションよりも、
「水守君は何買うの?」
「少し冷えるから温かい物……肉マンとかか」
こちらの買う食べ物にしか興味はない。
いつものようにこちらの食べ物を搾取される予兆を感じつつ、流はレジ前の肉まんコーナーに移動する。
雛のように、もしくは送り狼のようについてくる陽毬はもう気にしないことにする。
(最近の肉マンは色んな種類があるのがいいよねぇ)
まだまだ冬本番、硝子張りの肉まんスチーマーの中にはたくさんの肉まんがずらりと陳列されている。定番の肉まんにあんまん、こちらも定番になりつあるピザまんにカレーまん、もちもちの生地の中に甘辛いタレで柔らかく煮付けた豚肉入りのチャーシューまん、それからマンボウまん。
(ってこれ新商品っぽいな)
『ねこ島名物!』のポップがつけられたマンボウまんは、寝子島観光大使(見習い)の通称マンボウくんのようにまん丸っこいマンボウのかたちと淡青色した生地が特徴の新商品。中身のあんは白あんらしい。
新しい物に弱い流としては、これはもう買わざるを得ない。
ちらりと肩越しに見遣る。陽毬は流の背中に貼りつくようにしてスチーマーを覗き込んでいる。
いつだって近すぎるほど他人との距離の近い女子からさり気なく距離を取り、流はレジに立つ店員にチャーシューまんとおでんを取ってもらう。
「あと、マンボウまんと肉まんは二つずつ」
新商品は陽毬も気になるだろうと彼女の分も買っておく。
「いいなぁ水守君も美味しそうなもの買ってるなぁ……」
流の気遣いに気付いているのかいないのか、物欲しそうな目を向けて来るばかりの食欲魔人から目を逸らし、流は静かに頷いた。
「これでこっちの買い出しはよし、と」
白銀の月光が降る小さな公園の小さな東屋の下、ふたりは足を止める。
「ここでいいか」
「うん、ここがいい」
言葉少なな会話を交わし、流は肩が触れそうな傍らに立つ少女を見遣る。寒さのせいか北風に揺られる月のせいか、陽毬のコートの肩は小さく震えているようにも見えた。
(腹減って死にそうになってるな)
少女の蒼白い不安そうな顔を言下にそう判断し、流はベンチにどかりと腰掛ける。据え付けのテーブルに買ってきたばかりの食べ物の入ったレジ袋を置く。陽毬の空腹も限界に近い。この辺りでささやかな晩餐といこう。
「さーて食うぞー」
「わーいわーい」
言った途端、陽毬の顔がぱあっと輝いた。いそいそと向かいのベンチに腰掛け、ショートケーキに大福に、食べきれるのかと思えるほどの甘味を喜々として並べ始める陽毬に、
「ほれ本居、お前の分」
流はマンボウまんと肉まんを丸々一個ずつ差し出す。
「かっぱらわれる前に渡しておくぞ」
「美味しくいただくね!」
遠慮会釈なく肉まんとマンボウまんを受け取り、陽毬は流があんまんを食べる間に貰ったふたつをもぐもぐもぐもぐ、素晴らしい速度で食べる。自分が買ってきたショートケーキを開け、二つある分のひとつを譲ろうとも最後の一口を分けようとも、そういうことは一切考えず、一ミリも思いもせず、ショートケーキふたつを平らげる。大福のフィルムを剥がし、大きな口でかじりつく。
「お、それ美味そうだな」
ちょいともらうぞ、と流が言うよりも先、陽毬は大福を二口で食べきる。
「う、むッ?」
そして噎せる。
「お、おいおい、大丈夫か?」
「大丈夫だよ美味しいよ!」
焦って背中を叩こうとする流を片手で制し、陽毬はとても良い笑顔でサムズアップをしてみせた。
「そ、そうか。……そうかー、そうだよなー」
肉まんを一口齧る間に、目の前にある甘味がひとつふたつと消えて行く。合間にこちらのおでんの卵とウインナー巻きも消えた。
一緒になったのが運の尽きと悟り、流は旺盛な食欲を見せる陽毬を眺めつつ、ともかくおでんの大根は死守する。自分の方に引き寄せ椀代わりの蓋に乗せる。それでも油断できずに一口齧る。
「やっぱ冷える時に食べる中華まんにおでん、最高だよな」
「……ふんふん、ひゃいほうー」
「いいからゆっくり食べろ」
大満足な顔でまだまだ食べ続ける陽毬を諭し、流は手つかずにしていたコーラを手に取る。熱々のおでんを食べた後に流し込むコーラは殊更美味い。
「……って、」
蓋を開けようとした瞬間、中身が勢いよく噴いた。
「おおう!?」
公園に至るまでに早く食べたいばかりの陽毬に急かされたせいか、知らない間に袋の中で振られていたコーラに焦る流の向かい、陽毬は我関せず、にこにこ顔で満腹のお腹を擦る。
払った値段の割にたくさん食べることが出来た。それもこれも、苺ショートケーキの夢を見たおかげ。あと、流と出会えたおかげ。
「お出かけしてよかったぁ」
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
16人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年12月08日
参加申し込みの期限
2016年12月15日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年12月15日 11時00分
参加キャラクター一覧
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