推理ゲーム『ねこじま人狼』3rd｜リアクション

推理ゲーム『ねこじま人狼』3rd

　――戸影邸。

　紅い絨毯の廊下を過ぎ、通された薄暗い広間。
　床は格子柄のリノリウム。天井には相変わらず蜘蛛の巣のかかったシャンデリア。
　部屋の中央にはテーブルクロスのかかった楕円のテーブル。
　テーブルの中央には豪奢な銀の燭台が置かれ、蝋燭の火がちろちろと燃えており、招待された十名のプレイヤーが円卓を囲むように座っている。
「面白くなってきたっ」
　出揃った役職主張を見て、楢木春彦は楽しそうに笑う。
　ピリピリとした沈黙というよりむしろ、ワイワイ楽しもうという雰囲気が場を包んでおり、それぞれの前に置かれた金縁の白いアンティークカップから立ち上る湯気も未だ温か。ケーキやクッキーなどのスイーツも用意されている。

　ゲームマスターである戸影エムアは人差し指と親指で優雅にカップを持ち、紅茶を一口傾けた。
「ふふ、素晴らしい。はじめに２つほどルールの確認です」

１．二日目夜になりましたら、狼少年は、１日目と違う人の判定を変えてください。
２．二日目朝にパン屋が生きていた場合は、『おいしいパンが焼けました』とアナウンスします。

「それではみなさんの主張をおさらいしておきましょうか」

　　新江天懸：　　　島民→【騎士】
　　卯木衛：　　　　【占い師】（欠け役職を占い「らっかみ」）
　　来島アカリ：　　【占い師】（欠け役職を占い「らっかみ」）
　　サキリ・デイジーカッター：【島民】
　　志波武道：　　　占い師→【騎士】
　　トワ・E・ライトフェロゥ：占い師と騎士ではない→【島民】
　　楢木春彦：　　　島民サイド→【パン屋】
　　水守流：　　　　【占い師】（新江天懸を占い「白（人狼やらっかみではない）」）
　　八重崎五郎八：　【狂人】
　　屋敷野梢：　　　占い師ではない→【パン屋】

「おぉ……最初から想定してたのと違う大乱戦の展開だな」
　眠れるゲーマー、水守流は目を閉じて考え込んだ。
　屋敷野梢は口角を上げて、鋭く視線を巡らせる。
「私視点で占い師３、騎士２、狂人１の中に人外４人。狂人は話待ち、正直占いも騎士もみんな怪しい。詳しい内訳考察はまだ勘のレベルですので、皆の意見聞きつつですかねー」

　

「では僕から行かせてもらおうか」
　紅茶の香りを楽しんでいたサキリがカップをテーブルに置いた。
「僕は島民だ。騙りで狼側を牽制したりするつもりは全く無い。考えている事は唯１つ――人狼を見つけ出しその心臓にナイフを突き立てることだ」
　先ほどの柔らかな笑みとは打って変わって怜悧な眼光。
　透明なナイフを持つような仕草で凄んでみせる。

　

「トーワーもー！」
　一瞬凍りつきかけた空気を溶かすように、トワは青くて大きな瞳を煌かせた。
「島民でしたカラー　探偵なるマスヨ！　探偵っぽく人狼見つけるデス！」
　それからペロッと舌を出し。
「じつはー投票がすぐ始まると思ってたデス。あとものまね師はものまね師と島民になれない、デスネ。ものまね以外なら何でもと思ってたデス。その辺もまた失敗失敗。てへぺろー」
　春彦が和んだ表情で、よしよし、とトワの頭をなでる。
　ところがトワは、ちらりと春彦を見て釘を刺した。
「島民の中に狼が入り込んでる時に自分が島民サイドと証明するには、あえて本物じゃなくて『偽の』パン屋を名乗る事も手なのデス」
　春彦はぱちぱち瞬きする。
「うえぇ？　俺マジ、パン屋だって！」
「もう一人いるデス！　３人の内１人より２人の内１人の方が解り易いデス」
　トワは視線をスライドさせる。すると梢が歌うように言った。
「それは私ですかねー？」

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