ねこじまカートレーシング！｜リアクション

ねこじまカートレーシング！

■アスファルトＧＯＧＯ
　突然だが鎌八まもるはポニテ大好きっ子である。ポニテフリークといっても過言では無い。
　そんな彼がなんやかんやで迷い込んだねこじまカート。なんやかんやでエントリーしていた彼の隣に響タルトがいたのはもはや運命といっても過言では無い。この言い回しが気に入ったわけでは無いんだからね、過言では無いんだからね、もうばか。
「そっかー、ムッシュ君（鎌八くんのソウルネーム）はポニテ食べ放題がいいんだね。お腹壊さないようにお薬持って行こうね！」
「えっなにその変態の極みみたいなチョイス。いくらポニテマニアのオレでもそんなことはしない。絶対にしない。絶対にだよ？　ほんとだって、ほんと先っちょだけで」
「否定するほど信憑性が増すのって、言葉の神秘だよね」
　さておき、ねずみ色に輝くアスファルトと大勢の観客に見守られ、レースが始まろうとしている。
　さあカウントダウンだ。
　つり下げられたシグナルランプが点滅する。
　３――２――１――！

　無数の参加者を追い抜いてトップに躍り出たのは八神修。スタートダッシュとジグザグ走行でたちまち暫定一位を奪取すると、そのままアクセルを踏み込んで加速をかける。
「折角のレースなんだ。楽しんで勝つ。そして優勝賞品は……そうだな、カップラーメンなんかいいな。あれは、俺にとっては憧れのメニューだ」
　そんな修を二位のポジションから付け狙うのは水守流。
「こいつは要注意プレイヤーだな」
「なんで？　最初に一位になったから？」
　ピンク色のスイーツみたいなカートを操作する本居陽毬。首を傾げて覗き込む。急に関係ないこと言いますけど、この子が首を傾げる仕草が可愛すぎませんか。本当に関係ないけど。
「違うんだ。奴はスタートと同時にダッシュをかけるロケットスタートっていう裏テクを使っていた。こいつはやりこんだプレイヤーの高等テクで……んっ？」
　そういえばなんでこの子も横に並んでるんだろうと思って振り返る。
「俺はともかくなんて本居までこのラインにいるんだ」
　陽毬は口元に指を当てた。
「なんか踏んだらびゅーんってなったよ？」
「ビギナーズ……ラック……」
　レースはこれがあるから恐ろしい。
　プレイ経験に差があれど、どちらが勝つか分からないというわけだ。
　そんな状況がおもしろくなっちゃうのがゲーマーのサガ。ロマンシングのサガである。
「よーし本居。折角だから俺たちどうしで賭をしようぜ。順位が下の方がデザートを奢る！」
「のるしかない！」
　このビックウェーブに。
　じゃなくて。陽毬は目をイチゴにしてきらきら笑った。
「そうと決まればアイテムアタック！」
　陽毬はボックスからコショウの袋を取り出すと、流に向かって投げつけた。
「させるか！」
　鍋ぶたを取り出してコショウを弾く流。
「俺は買って高級焼き肉を食べる！」
「私はあの日の牛の丸焼きをもう一回食べる！」
　二人の目には肉の光が宿り、なんかこう、やる気のある加速をかけてカーブをまがっていった。

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