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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
降る雨
「警察は呼んでいません。どうか、私たちにあなたがここに至った経緯を、お話いただけないでしょうか？」
ヴィナに続き、男の説得を買って出た蓮も、敵意がない事をゆるりと腕を広げて示した。
焔は思い出して、鞄からその日忙しくて手をつけられなかった、お弁当を差し出した。
「あなたも食べない？ お酒だけじゃ、身体に悪いわ。お腹、空いてるでしょ？」
魔方陣を描き終えた天野も、その中に『ひと』である蓮と焔を招きいれ、男に対峙した。
そんな天野を守るように立つのは、優華。
その後方に位置するのは、男子制服に線の細い身体を包んだ、奈良橋 博美。
そして譲、没、轟、斜に構えている瞬平。
更にサングラスとストールで口元まで覆って、うつむき加減で見守っている龍八だ。
刀も気取られない様に細心の気を配りながら、ジリジリと立ち位置を変え、男の肩やつま先の動きに注目している。
博美は場の状況に、油断無く目を光らせていた。
（思いの他、この長椅子が邪魔だなぁ。人質を傷つけずに祭壇にいる男とやり合うには、この狭い中央通路を一気に駆け抜けないと……）
通路の幅は、2Mもない。
戦いに優位なろっこんの所持者が多く集まり、頼もしい限りだと思っていたのだが。
（考えなしに殺到したら、互いが邪魔で満足に動きが取れないじゃん）
博美達の、もっと後ろ。
最後方に配置している朔夜。そして彼女と向き合う形でいる庚は、下手をすると手出しすら出来ないだろう。
もっとも博美には、こんな時の為の秘策があるのだが。
「僕は仏に使える身だから、神がどうとかはなんとも言えない。けれど、命あっての未来。粗末にしては、いけないよ」
子に噛んで含ませるように、優しい調子で天野が言うのに、ふわりが同調した。
「そうですよー、早くこの手を離しやがれくださいですぅー」
「小娘っ、お前は黙ってろ！」
男が、ふわりの腕をねじりあげる。
「はううー、痛いですぅー！」
「やめろ！ 女の子に乱暴するな！！」
たまらず轟が、かぶりを振る。
「轟さん、落ち着いてください」
なだめる蓮にも、いつもの余裕はない。
男の言葉が、態度が。
彼を信じようと、救おうと模索する、蓮のまっさらな心に、黒いものを投げ込み。
その心を、揺さぶるのだ。
まひるが肩口をさすりながら、よろよろと起き上がる。
「失業したと……言っていたが？ 生活に困っているのか」
「おっと、姉ちゃん。あんたはそこを動くな！ ……そうだよ、おまんまの食い上げってやつだ」
ほとんどの者が、ただ男の話を聞く事に終始した。
そのため、男の話は要領を得ず長かったが。
まとめると、男は長距離のトラック運転手をしていたが、昨今の燃料代の高騰などで働いていた会社は傾き、倒産に追い込まれたらしい。
「そうでしたか……先ほど、お母様の話をされていましたが。今はどうなさっているのですか？」
「お袋なら、もういねぇよ」
「亡くなったのか？」
ヴィナは眉をしかめた。
男の身の上を哀れに思ったのではない。
そうではなく、男の表情が段々険しいものに戻りつつあるからだ。
（まずい……癒しの効果が……。説得に少し時間を掛け過ぎたな）
「んや、ババアいきなり倒れやがって。邪魔だったからそのまま殺してやろうと思ったのによ。たまたま弟が様子見に来て、救急車呼んだから、今でもピンピンしてるよ」
信じられない。
男の言いようのひどさに、開いた口は塞がらず。優華の長い睫毛が、小刻みに震える。
「ふん。弟もアニキにはお袋を任せられねぇなんて言って、連れて行ったけどよ。あのババアは、口うるさいぞー。あいつも、やいのやいの言われて苦労すればいいんだ。もっとも俺も、一緒に暮らさなくなったから、年金も手当ても貰えなくなっちまって参ったけどよ」
「貴様……よくもぬけぬけと！！」
ギリィ！ 皮肉を込めて笑う男に、譲は奥歯をかみ締める。
「おっと、ちぃと喋りすぎたか。動くなよ？ こっちには、人質がいるんだからな」
自分の事を棚に上げ、神の次は母親のせいか！
幼い頃に母を失った譲には、男は唾棄すべき対象にしか見えない。
繋ぎとめたかった愛しい命は、あまりにあっけなくこの世を去り。
譲がどんなに願おうと、帰って来はしないというのに。
「……ただで済むと思うなよ……！」
（この男には、ひとかけらの良心もないのか！？）
轟の体を駆け巡る血は、熱さと激しさを増している。
梢も口元を覆った。
（こ、心地いい程のダメ人間ですねー。ニートのおにーちゃんより、ひどいです……）
逆に博美は、小さくため息をついたのみだ。
こうなる事は、薄々わかっていた。
（だってまともな人間だったら、最初から身勝手な理由で人質取って篭城なんかしないじゃん）
「救える者を、救わないとな……」
ヴィナに続き、男の説得を買って出た蓮も、敵意がない事をゆるりと腕を広げて示した。
焔は思い出して、鞄からその日忙しくて手をつけられなかった、お弁当を差し出した。
「あなたも食べない？ お酒だけじゃ、身体に悪いわ。お腹、空いてるでしょ？」
魔方陣を描き終えた天野も、その中に『ひと』である蓮と焔を招きいれ、男に対峙した。
そんな天野を守るように立つのは、優華。
その後方に位置するのは、男子制服に線の細い身体を包んだ、奈良橋 博美。
そして譲、没、轟、斜に構えている瞬平。
更にサングラスとストールで口元まで覆って、うつむき加減で見守っている龍八だ。
刀も気取られない様に細心の気を配りながら、ジリジリと立ち位置を変え、男の肩やつま先の動きに注目している。
博美は場の状況に、油断無く目を光らせていた。
（思いの他、この長椅子が邪魔だなぁ。人質を傷つけずに祭壇にいる男とやり合うには、この狭い中央通路を一気に駆け抜けないと……）
通路の幅は、2Mもない。
戦いに優位なろっこんの所持者が多く集まり、頼もしい限りだと思っていたのだが。
（考えなしに殺到したら、互いが邪魔で満足に動きが取れないじゃん）
博美達の、もっと後ろ。
最後方に配置している朔夜。そして彼女と向き合う形でいる庚は、下手をすると手出しすら出来ないだろう。
もっとも博美には、こんな時の為の秘策があるのだが。
「僕は仏に使える身だから、神がどうとかはなんとも言えない。けれど、命あっての未来。粗末にしては、いけないよ」
子に噛んで含ませるように、優しい調子で天野が言うのに、ふわりが同調した。
「そうですよー、早くこの手を離しやがれくださいですぅー」
「小娘っ、お前は黙ってろ！」
男が、ふわりの腕をねじりあげる。
「はううー、痛いですぅー！」
「やめろ！ 女の子に乱暴するな！！」
たまらず轟が、かぶりを振る。
「轟さん、落ち着いてください」
なだめる蓮にも、いつもの余裕はない。
男の言葉が、態度が。
彼を信じようと、救おうと模索する、蓮のまっさらな心に、黒いものを投げ込み。
その心を、揺さぶるのだ。
まひるが肩口をさすりながら、よろよろと起き上がる。
「失業したと……言っていたが？ 生活に困っているのか」
「おっと、姉ちゃん。あんたはそこを動くな！ ……そうだよ、おまんまの食い上げってやつだ」
ほとんどの者が、ただ男の話を聞く事に終始した。
そのため、男の話は要領を得ず長かったが。
まとめると、男は長距離のトラック運転手をしていたが、昨今の燃料代の高騰などで働いていた会社は傾き、倒産に追い込まれたらしい。
「そうでしたか……先ほど、お母様の話をされていましたが。今はどうなさっているのですか？」
「お袋なら、もういねぇよ」
「亡くなったのか？」
ヴィナは眉をしかめた。
男の身の上を哀れに思ったのではない。
そうではなく、男の表情が段々険しいものに戻りつつあるからだ。
（まずい……癒しの効果が……。説得に少し時間を掛け過ぎたな）
「んや、ババアいきなり倒れやがって。邪魔だったからそのまま殺してやろうと思ったのによ。たまたま弟が様子見に来て、救急車呼んだから、今でもピンピンしてるよ」
信じられない。
男の言いようのひどさに、開いた口は塞がらず。優華の長い睫毛が、小刻みに震える。
「ふん。弟もアニキにはお袋を任せられねぇなんて言って、連れて行ったけどよ。あのババアは、口うるさいぞー。あいつも、やいのやいの言われて苦労すればいいんだ。もっとも俺も、一緒に暮らさなくなったから、年金も手当ても貰えなくなっちまって参ったけどよ」
「貴様……よくもぬけぬけと！！」
ギリィ！ 皮肉を込めて笑う男に、譲は奥歯をかみ締める。
「おっと、ちぃと喋りすぎたか。動くなよ？ こっちには、人質がいるんだからな」
自分の事を棚に上げ、神の次は母親のせいか！
幼い頃に母を失った譲には、男は唾棄すべき対象にしか見えない。
繋ぎとめたかった愛しい命は、あまりにあっけなくこの世を去り。
譲がどんなに願おうと、帰って来はしないというのに。
「……ただで済むと思うなよ……！」
（この男には、ひとかけらの良心もないのか！？）
轟の体を駆け巡る血は、熱さと激しさを増している。
梢も口元を覆った。
（こ、心地いい程のダメ人間ですねー。ニートのおにーちゃんより、ひどいです……）
逆に博美は、小さくため息をついたのみだ。
こうなる事は、薄々わかっていた。
（だってまともな人間だったら、最初から身勝手な理由で人質取って篭城なんかしないじゃん）
「救える者を、救わないとな……」
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2012年12月03日
- 参加申し込みの期限
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- 2012年12月10日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2012年12月10日 11時00分
