【思い出の記録（追憶編その１）】

　午前の授業も半ばを過ぎた頃、教室内でわなわなと手を震わせ新聞を読む一人の生徒が居た。
「……何で、これが？」
　その生徒――西桐 歩美は別に今回の新聞に記事を提供したわけではない。
　確かに、一度は手伝おうかとも考えたのだが、結果としてネタが思いつかなかった為に提供を断っていたのだ。
　だというのに、新聞には確かに自分の名前が提供者として上げられ、尚且つ日頃からつけている日記の内容がそこには記載されている。
「どういう事なの……？」
　何時、誰が？
　そんな考えが頭を過ぎるが――実の所、歩美は提供を断る際にネタを考えていた用紙を新聞部内に置き忘れていたのだ。
　その結果として、置き忘れた用紙はしっかりと新聞部と思い出記録部の手により【記事】として処理され、こうして載ってしまっていた。
　――とは言え、それに歩美が気がつく事になるのは、放課後に新聞部の部室を訪ねるまでお預けとなるが。

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寝子島に来る事になったきっかけ

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　この寝子島に来るまで、私も色々考えたところがあった。
　でも、こうして今までの生活を振り返れば、今はあの時の決断は正しかったと思う。
　だから、私はここに来るまでの事を、これからの為に書いておきたい。

4月14日

　中学も3年になってから行きたい高校を決めるのも目標が定まっていないようで頼りない、
　いくつかの候補を下見する事にした。
　明日は近隣の高校を見学してみよう、部活くらいはやって居るのが見れるかも知れない。

5月26日

　近隣の高校はどれもしっくり来なかった。
　少し離れた所も資料を集めて見てはいるけれど、学校周辺の雰囲気や通学するには無闇に疲れて肝心の勉学に打ち込めそうに無い。

　…自宅から通う事は出来ないくらい遠いけれど、寝子島高校はどうだろう。
　リゾート地で有名だけど寮が選べるし、施設も充実していて休みの日でも退屈をしそうに無い。
　明日、行ってみよう。

5月27日

　一日かけて島を巡って見た。
　どこを見ても猫が居るというのは本当だったけれど、どうして観光大使がサンマなのだろう。
　猫を使わずに半魚人を前面に出すセンスが理解し難い。

　高校の方は一言で言えば普通、それだけに過ごしやすそうだと感じた。
　見えた景色は様々、特に旧市街は別格。
　今住んで居る所はコンクリートだらけで息苦しい、こういう場所に住めたらきっと気分が良いと思う。

2月18日

　寝子島高校に合格した。他にも合格した所はあるけれど、あの雰囲気で勉強出来るのは寝子島高校しか無いだろう。
　両親も旧市街への下宿を許諾してくれた、全てに感謝しなくては。

　色々書いたが、私は今の学生生活に満足している。
　だから……これからも先生方や友人の皆、それに寝子島でお世話になっている全ての人と両親に感謝し、仲良くやっていけるよう、頑張るつもりだ。

記事提供：西桐 歩美

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【思い出の記録（追憶編その２）】

　思い出として過去を振り返るのは、この新聞の基本である。
　澪乃 澄佳もまた、自身が二年になった事により、一年の時の思い出を振り返る形で記事を提供していた。
「うぅ……あっつぅ……」
　本格的な夏を前に、梅雨の合間に珍しく晴れ渡った今日は、それにあわせ気温もいい感じに上昇している。
　そのせいか、元道産子である澄佳にとっては、苦々しくも机に突っ伏し暑さに耐えるしかなかったのだ。
「もぅ、せっかく新聞に載ったっていうのに……あ、何？」
　とはいえ、記事として新聞に載せられた為か、休憩時間には澄佳と思い出話に華を咲かせるべく、一年から同じ級友達の姿があった。
　その時の事に想いを馳せながらも、やっぱり澄佳はこれから訪れるであろう夏にが去年と同じように暑くならないよう、ちょっとだけ願いながら談笑を続けていく。

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去年一年間の学校生活を振り返って

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　あたしはちょっと不安を抱きながら、ここ寝子島高校に入学した。
　ちょっと前まで北海道の、それも海なんて全くない場所に住んでたから、うまくやっていけるかなんて想像も出来なかったな。

　入学式、桜が咲いていたのに驚いた。
　新入生の誓いは使ったことないような方言でいろいろ口走ってた気がする。
　覚えてないので内容はなんとも。
　でも、そこで同級生のみんなのことがまず分かった気がして、嬉しかったのは覚えてるよ。
　…いろいろと、個性的でもあったけどね。

　夏は水泳に手間取った。
　プールに屋根がないのに驚いたけど、なくても十分暑い。
　そして思った以上に泳げなくて、先生にいろいろ教えてもらう羽目に。
　水泳大会は…お察しください。

　秋、九月の体育祭。
　暑くて死ぬかと思った。あれは九月じゃない、秋じゃない。
　本番でとうとう倒れてしまったのが悔しかった。
　クラスのみんな、あの時は心配させてごめんなさい。
　でも、あたしは悪くない。九月が悪い。

　冬はスキー合宿が楽しかったな。
　雪がないのにわざわざスキーをしに行くなんて驚いたけど。
　でも、こっちでもスキーが出来て、それは本当によかった。

　そしてあっという間に一年過ぎて、あたしももう二年生。
　個性的な後輩だらけだけど、仲良く出来ますように。
　先輩らしくしっかり出来ますように。
　そして猛暑になりませんように。

記事提供：澪乃 澄佳

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【思い出の記録（電子編）】

　電子の海にある寝子島、キャットアイランドと呼ばれる、このネット上に作られた仮想世界の記事を提供した黒依 アリーセは、新聞を見ながらその時の事を思い浮かべる。
「本当に、成功してよかった……」
　ポツリと口から漏れるのは、つい先月に行われたキャットアイランド内でのライブの思い出。
　トップバッターとして歌ったあの時の状況は、今も色あせずアリーセの記憶に刻まれていた。
「そういえば、あの時の話であったバーチャル軽音部、本当に考えてみようかしら」
　まだまだやりたい事は沢山ある。
　あの仮想世界の中でも、そして現実世界であるこちらでも。
　だからこそ、アリーセはこれから先の事を考えながら、想いを馳せていく。

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ライブ・イン・キャットアイランド

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　今回は、『キャットアイランド』で行われたライブイベントの様子を少しだけ紹介します。

　最近ネット上で話題の仮想空間『キャットアイランド』
　その中の蒼月庭（ブルームーンガーデン）で先日、出演者を公募してのライブイベントが行われました。
　音声や演奏は実際の音が流れるので、ネット上ながら臨場感は抜群（システム的な事は、詳しく解りませんが）
　ちょっとしたハプニングもありましたが、満員の観客は、大いに盛り上がってました。


　私はライブのトップで出演。
　暗めの入りから、解放へと流れの有る曲で、私としては新しい試み。
　緊張もしたけど、精一杯歌いきる事が出来ました。
　お客さんから拍手を貰えて、嬉しかったな。
　ギターやベースは、同じステージに立った方が、急遽引き受けてくれて、打ち込みには無いライブ感が出せました。
　この場でお礼申し上げます。

　お友達も参加していたので、私も舞台袖から観客の一人に。
　後を引き継いだ人達は、皆レベルが高くて、お客さんは終始盛り上がりっぱなし。
　皆でキャットアイランド内の音楽シーンを作っていけたら、素敵だな…、なんて考えてました。
　私も、頑張らないと。

　キャットアイランドは、まだまだ発展途上の空間。
　すでにお店を開いたり、色んな活動をしてる人が沢山いるけれど、あなたも一緒に、この世界を作っていきませんか？
　もうすぐ、関東全域からアクセスが可能になる予定です。

記事提供：黒依 アリーセ

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【広告欄：電子店舗情報】

　アリーセがライブを行ったキャットアイランドでは、こうしたイベント以外にも各店舗が展開されている。
　璃人は、そうした展開している店舗の一つ【Lechat】を日菜と共に経営していたのだ。
「りぃと日菜さんの大事な、大切なお店なのですからね。これで、もっともっと色んな人に知ってもらえれば嬉しいのですよ！」
　キャットアイランドを知っている他の生徒達に答えながら、璃人は新聞に載せた広告を片手に色々と説明を行う。
　二人で出店した、思い出の服飾店。
　猫の名を冠したこの店を、璃人は日菜と、そして自分の為に一生懸命宣伝していく。

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Lechat～スウィートスウィートロリポップ～

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Lechatにようこそ！

　ウチはキャットアイランド内でレースやリボン、フリルなどをふんだんに使った甘ロリ服を主に扱っている服飾店なのですよ。

　もちろん、それに合うように作られたアクセサリーや鞄、靴などの装備アイテムが取り揃えられています！
　人気と売り上げの為に、ファッション激戦区に出店してますので、すぐに見つけられると思いますよ～。

　そしてそして！
　人気商品は、なんといっても感情に合わせて動く耳や尻尾のアクセサリーなのです！
　４月に発売開始した第一作目の猫に続き、５月にウサギ（ピンと立ったものと、たれ耳のロップイヤーverの２種類有）をリリースしちゃってます！
　どっちも多様なカラーリングも人気の秘訣なのです！

　店内では、マスコットキャラでもある喋る二足歩行な白い子猫のマネキン（甘ロリ服着用）が、りぃと日菜さんが心を籠めて接客させてもらっちゃいます！

　キャットアイランドに接続した時は、ぜひぜひ、訪れてみてくださいね！

☆６月特集
　６月からは、新商品『とてとてシリーズ』の発売を決定しちゃってます！
　これは可愛い二足歩行の子猫や子ウサギがアバターの後ろをとてとてとついてくるアイテムなのです！
　簡単なAI搭載で、持ち主に合わせて手を振り返したりお辞儀などの動作を行う、ちょぉっと他ではお目にかかれないアイテムなのですよ！
　それと、期間限定でウェディングドレスも発売予定なのです！
　ジューンブライド……女の子の夢を叶えちゃうお仕事をお手伝いしちゃいますので、よかったら来て見てくださいね！

広告店舗：Lechat（キャットアイランド内）
広告主：葛城 璃人

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