【明かされた影の思い出（要注意人物編その２）】

　影の新聞には、真偽不明なゴシップ記事も混ぜられる。
　その中の一つ、【仮面の始末人】の記事はその最たる例の一つであった。
「……ふぅん、載せたんだ」
　匿名で書かれたこの記事を見ながら、灯 斗南はそんな感想を口にする。
　決して表に出る事はない、誰にも顔を知らせず、誰かの【フツウ】を守る為に動く。
　そこに善悪は無く、ただ始末人にとって害悪であれば、何者であっても裁くと、記事は伝えている。
「さぁ、どうなるだろうね……」
　眠そうな顔のまま、斗南は新聞を閉じる。
　授業は自習、こうして新聞を読んでいても怒られない理由はそこにあり、斗南はそのまままどろむように眠りについていた。

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仮面の始末人の噂

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　仮面の始末人、この名を聞いた生徒は居るだろうか？
　彼が何を果そうとしているのか、それはこれを書いている筆者にも分からない。

　【”ふつう”が壊れそうな時、”ふつう”を壊そうとする者が出てきた時現れて全てを焼きつくす】

　一言、本人が語ったこの一言だけが、その真理を表しているのだろう。
　正義なのか、それとも悪であるのか。
　それは、これからの行動ではっきりするのかも知れない。
何かを仕掛けようとした時には、努々、この姿を忘れぬように……

記事提供：匿名

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【明かされた影の思い出（要注意人物編その２）】

　仮面の始末人と同様に、【怪盗ケットシー】の記事も、それらゴシップ記事として取り扱われていた。
「ほぅほぅ……俺の名前もちょっとは売れたって事か？」
　新聞を手に入れ、授業からこっそりと抜け出したシグレ・ナイトウォーカーは、その記事を読みながら一人満足げに頷く。
　――怪盗ケットシー。
　あくまで【義賊】としての盗みを志す、怪盗である。
　美しいものは、本来あるべき場所に戻すのが基本だ、と言った信念の元、金銭を盗むのではなく、あくまで美術・芸術品を中心とした盗みを働いている――はずであった。
「って、これ、この間の……！」
　どこで撮られたのか、記事には一枚の写真と共に、【この変質者注意】の文字がデカデカと書かれている。
　記事自体はまともだというのに、この一言で色々な物が崩れている事に、シグレはショックを隠しきれずに居た。
「ぐ、ぐぐぐ……あぁ、いいさ！ 見てろよ、チクショー！」
　無常な声が空へと木霊し、それが校舎にまで聞こえていた事にシグレが気づくのはもう少し先の話であった。

　――ちなみに、誤解の無いように言えば、シグレがケットシーとして動いたのは、あくまで怪盗の練習として夜の散歩をしていた為である。
　不審者としてお巡りさんに職務質問をされた際、逃げた先が偶々フラワーショップ花咲里であり、そこで写真の少女に会っただけである、というのを付け加えて。

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『旧市街の花屋に怪盗現る！？』

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　5月某日の深夜、旧市街のフラワーショップ花咲里に不審者が侵入した。
　幸い住人に怪我はなかった。

　しかし、住人の一人である少女が不審な人物を目撃したとの情報が寄せられている。
　少女の証言によると不審人物は長靴をはいた猫のような姿をした若い男だったとのこと。

　先日猫鳴館で行われた自治会長選任戦に現れた『怪盗ケットシー』を名乗る人物と特徴が酷似しているため、事件の関連性が強く疑われている。

　星ヶ丘でも絵画の盗難事件があったばかり。
　しかしこの盗難に遭った資産家は詐欺紛いの手腕で色々な人の土地や骨董品などを撒きあげていたことで有名な人物。
　盗まれた絵もそうやって手に入れた品という噂である。
　こちらの事件では犯人らしき不審人物の目撃情報は無く、捜査は続行中である。
【この仮面の人物を見かけたら注意！ 変質者の可能性があります！】

記事提供：匿名

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【明かされた影の思い出（要注意人物編その３）】

　始末人と怪盗、それぞれが色々な特徴持った要注意人物のゴシップ記事の中で、続くもう一人の記事は特に異彩を放っていた。
「ひゃっはー！ 新鮮なおぱんつだー！」
　体育の授業というだけあって、着替えの最中やたらテンションの高い桃原 空音は、男子・女子構わずに突撃していく。
「ほよー、お尻を触らせないと食べちゃうぞー！」
　両手を広げ、もう止まらないバリのテンションのまま、空音は楽しく体育の授業を満喫していく。
　――明らかに、ゴシップ記事に描かれた人物である、【おぱんつ妖怪】の姿に酷似しながら。

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へんたいにはきをつけて！

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　寝子高には最近、ある妖怪が出没するらしい。

　その名を名を「おぱんつ妖怪」という。
　なんでも、男物女物構わずおぱんつを貪り食うらしい。
　下着を食べる妖怪が出るとしたら、それは一大事だ。
　僕のお財布のピンチがマッハだ。
　僕は生活費を切り詰めてゲームを買っているが、下着代などにお金を吸い取られてはかなわない！
　なんとかしてしっぽを掴んで、できるなら悪霊退散しようと思う。

　噂によると「おぱんつ妖怪」は小さめの人の形をしているらしい。
　そして、頭のてっぺんにピョコンとアホ毛が生えているらしい。
　これをヒントに噂を集め回っていると、出没情報がとれた。

【球技大会での一件】
　おぱんつの噂と聞いて一番最初に飛び込んできたのが
　球技大会での一人の女子生徒の噂だった。
　なんでも、おぱんつ、おぱんつ、と終始連呼していたらしい。
　試合終了後、ぱんつ下さい！と叫んでいたようだから、彼女が妖怪の正体かもしれない。

【とある腐女子との戦いの物語】
　色々恐ろしい事件だったが、この時に男子の尻が揉まれる事案が発生。
　この隙にパンツを持ちだしたのかもしれない。
　確証は無い為、更なる調査を行いたいと思う。

　そして最後に、へんたいはこわいとだけ付け加え、ここに一枚の写真を載せ、僕は筆を置く。

【おぱんつ妖怪容疑者Ｍさん】

記事提供：善意の第三者

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【広告：喧嘩屋】

　学校から離れ、シーサイドタウンにあるファミレスでも、新聞をテーブルに広げながらパフェをついばむ人物の姿があった。
「お～、載ってる載ってる！」
　犬神 花梨。
　元寝子島高校生徒であり、新聞の話を聞きつけ、事前に新聞部の部室へと話を付けに行っていたのだ。
　――実際は、半ば強引であったが。
「さ～て、依頼来ればいいな～♪」
　可愛げな声と共に、花梨は機嫌よく残りのパフェを口に運ぶ。
　傍から見れば、可愛らしい少女が、これまた可愛くパフェを食べている姿にしか見えない。
　が、見る者が見れば、この少女が以前【狂犬】と呼ばれるほどの喧嘩師である事が分かるだろう。
　そして、載せられた広告もそれに合わせるように、なんとも物騒な代物となっていた。

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喧嘩代行いたします！あの恨みやつらみを晴らすチャンスです！

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　たくさんの恨みつらみを皆さん抱えてませんか？
　親、友人、喧嘩相手、リア充共…そんな憎いあんちくしょうをぶん殴りたい。
　でもそんな力もないし人間関係も壊したくない…そんなあなたの為に「狂犬」と呼ばれた喧嘩負けなしの社員が代わりにぶん殴ってあげます。

　必要とあれば壁殴りも代行いたします。
　※ただし殺人は基本請け負っておりません。

　一回のお値段は３千円から！
※ただし依頼内容によってはお値段は大幅に変動いたします（かなり見えずらい小さい文字で）

◇特典
　今なら１万から俺様を一日好きにできる権利をプレゼント！
　女子とデートできるぞ、お前ら！
　※ただし、気まぐれなので気に入らなかったら容赦なく契約破棄させていただきます（さらにすっごく小さい文字で

　ついでに俺様とバトりたい奴も募集！
　何時でも待ってるぜ！

広告業者：喧嘩屋
広告主：犬神 花梨

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