【思い出の記録（部活編その６）】

　昼休みも終盤に差し掛かる中、龍目 豪は教室に戻る前に、部室棟内で隠れるようにあった空き部室の中に入って行く。
　中には、探検に使う道具一式や寝子島の地図と言った、各種探検に必要な道具が詰め込まれている。
　それらを整理する為に、豪はこの部室に立ち寄っていたのだ。
「無断で使っちゃいるが……怒られないよな？」
　他の同好会やら未公認の部活を行う生徒達も、豪と同じように空き部室を使っているのだ。
　今更一つくらい部室が減った所で、誰も文句を言うはずも無い。
　とは言え、公認では無い為、少しだけの心配もしつつ、豪は新聞の記事としても提供した探検部の初の活動の時を思い出す。
「楽しかったな。だが、あくまで一回目だ。まだまだ俺はこの島を探検しつくしてないんだからな！」
　意気揚々と、豪は新たにその想いを胸に、チャイムが鳴る直前まで道具の整理を行っていた。

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探検部の記録～第一回九夜山ハイキング～

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【第一回探検 九夜山ハイキングの時の様子】
　探検部を立ち上げて初めての、第一回探検　九夜山ハイキング。
　どうなることかと思ったが楽しかったぜ。

　行程は、部室→寝子島シーサイドタウン駅～寝子島駅（電車移動）→参道商店街→寝子島神社→登山道ハイキング→寝子温泉付近で休憩、昼食→ロープウェイの順だ。
　メンバーは、龍目、逆巻、光村、佐々、水城、米丸、北原、佐伯、邪衣。

　初めて参加する部員も多く、ペースを上げすぎず楽しめることを心掛けた。
　邪衣が熊の毛皮で来た時はびっくりしたな。安全のため急遽別の上着を買いにいったのもいい思い出だ。
　寝子島神社ではハイキングの安全を祈願しつつおみくじもひいたぜ。
　そういえば「大吉」で「金運良好」だった光村が、後日トライアスロンで優勝してたっけな。

　桜も綺麗だったし、眺めのいい場所でみんなで食べた弁当も格別だったぜ。
　そうそう、探検部はいつでも新入部員募集中だ。
　学生以外でも一緒に来てくれるメンバーは大歓迎だ。

記事コミュニティ：探検部
記事提供：龍目 豪

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【思い出の記録（地下帝国編）】

　大分人の減った食堂外のテラスで、骨削 瓢は一人新聞に目を通していた。
「はっは。なるほど、新聞部も中々上手く載せるものだねぃ」
　瓢も今回の新聞に記事を提供しており、その内容は自分が上に立ち、そして掘り進めている【地下帝国】の話題であった。
　知る人ぞ知る、と言った物だと思っていたのだが、実際の所はそれなりに認知度があるようで、生徒の中でもある程度の人数はこの地下の空洞を知っていたのだ。
　その為に、瓢はあえて【こちら側】に地下帝国の記事を載せるよう、新聞部へと頼んでいた。
「まぁ、まだまだ掘らにゃならんけれど、それも一興って所よぃ」
　瓢と、そして地下帝国民の野望は果てしなく、まだまだそれが尽きる事はない。
　からからと笑いながら、瓢はもう一度だけ記事に目を通し、満足した様子で新聞を畳んでいた。

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地下帝国のこれまで

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　さて、どこから話したものかねぇ。
　まずは、あっしがこの地下帝国の元となる防空壕を発見したところから書くとしようか。

　猫鳴館に体験入寮した時は、まぁ確かに驚きはしたよぃ。
　ぼろっちぃし怪しい、見た目からすれば、なんとも薄気味悪い寮なのは間違いないって誰でも思うわいな。
　ま、あっしは好き好んでここに入ったから、別にどうって事はないんだけれどねぃ。

　で、そこから色々あって隠し通路でも作ろうと思ってねぃ。
　その時に発見したのが、防空壕ってわけさね。
　いや、驚いたねぇ。地下だってのに、ある程度の広さがあったと来たもんさ。
　
　そこであっしは考えた。
　ここに住んで、ちょいと色んな場所に道を作っちゃどうかってね。
　同じ事を考える連中も居たようで、掘ってる間に人がどんどん増えたのにはちょいと驚いたもんさ。

　ある程度集まって、通路も少し伸びてきた来た辺りで、地下帝国を名乗ってみちゃどうだ、なんて話が持ち上がったのさ。
　当然、皆賛成。あっしも掘り始めた側だからねぃ、断るつもりなんてさらさらないってもんさね。

　――そうして、あっしらの地下帝国は出来上がったってわけよぃ。
　まだまだ道を掘って、地下はあっしらの帝国で占領！
　な～んて夢もあるし、その為の武力だって試作の段階さ。
　……まぁ、ちょいと暴走気味なのはお見逃しってやつだけれどねぃ。

　そんなわけで、気が向いたらこの地下帝国に遊びに来てみるといいよぃ。
　地下帝国皇帝のあっし、骨削 瓢と愉快な帝国民が迎えてくれるからねぃ。

記事コミュニティ：猫鳴館地下帝国（地下通路）
記事提供：骨削 瓢

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【寝子島マッピング】

　【光】の記事の最後の一枚。
　そこには、大きく寝小島のマップが記されており、各所にはこれまでにあったイベントや観光名所、それにこれまで紹介された店舗などの位置情報までも記載されていた。
「すごいなぁ、こんな感じで作ったんだ。これなら、便利だよね！」
　記事ではなく、最後に出されたこのマップは、今まさに新聞を広げ見ている戌井 創の提案により作られた物であった。

『いいことがあったりすごいことがあった場所はデートに行ったら楽しいんじゃないかなーって。事件の多い場所は危ないところだよーって分かると便利！』

　そんな提案と共に、新聞部もこれに乗る形でこのマップは作られていたのだ。
　とは言え、創自身は記事を書かないのか、と新聞部に問われたのだが、こちらは恥ずかしいから内緒、という事で記事としての提供はなかった。
「皆に使ってもらえると嬉しいなぁ」
　創はその一言を口にし、ちょこちょこと小さな体を揺らしながら教室へと戻っていく。

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寝子島名所案内

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【地図内には、各種情報と等が書かれており、案内としては十分な物となっている】
　寝子島高校に通う為に、初めてこの島を訪れた生徒の皆さん。
　それに、改めて色々な場所を発見したい生徒の皆さんもも、この地図を活用してみてはいかがでしょうか？

　新聞部と思い出記録部、そして様々な生徒から集めた情報を元に、地域密着のイベントやデートスポット等も記載していますので、是非是非新たな発見をしてもらえれば嬉しい限りです。

地図提案：戌井 創
地図作成：新聞部・思い出記録部・他多数生徒の皆さん

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【光の記事を終えて】

　午後の授業の開始を告げるチャイムが鳴る五分前に、ふわりはようやくこの新聞を読み終える。
「ふぅ～、中々に濃い内容の新聞だったのですねぇ～。でも、昼休みに読み終わってしまっては、ちょぉっと残り時間が……」
　とことこと教室に戻ろうとふわりが歩いている中、数名の生徒が隣を走りぬける。
　――しかし、ふと見えたその手に握られた新聞は、ふわりが持っているものとは別な代物。
　表紙は同じなのだが、確かに読んだはずの記事タイトルとはまったく違う見出しを、ふわりはしっかりと見ていた。
「……どういうことですかねぃ～？ もう一つ、新聞があるって事ですか～？」
　少しだけふわりは考えるが、それよりもその新聞を持った生徒に聞いたほうが早い。
　即座に判断し、ふわりは生徒に話を聞くため、急ぎ走り出していた。