【思い出の記録（事件編その１）】

　毎日を平和に過ごす。
　そんな日常の中には、一歩間違えれば大きな怪我をする危険性も含まれている。
　誰にとってもありえる、そんなちょっとした危険を呼びかけるような記事が、一人の生徒の手によって提供されていた。
「……ちゃんと載っているな」
　新聞を受け取った後、草薙 龍八は授業を抜け出し、そのまま高校内の空き教室でこの新聞を読んでいた。
　龍八が提供した記事は、以前自分が遭遇し、そして大きな怪我を負った一連の騒ぎである。
　――怪人セブンと呼ばれたモノに引き起こされた、その時の事を。
「これをどう見るかは、人それぞれだろうな。さて……」
　龍八はそのまま、残りの記事へと目を通していく。
　元から学校に来ていたのは、この新聞を受け取り、読むためである。
　とりあえずこれを読み終わるまでは、授業には戻らない。
　そんな考えのまま、龍八は昼休みが始まるまで、この空き教室で新聞を読みふけっていた。

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日常に潜む危険

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　ＧＷ前に海浜公園にてバイクで轢き逃げが発生した事はご存知だろうか？

　これにより、重傷者が出ている。
　そして、この重傷者の一人には、本記事を提供した草薙 龍八も含まれている。

　分かるだろうか？
　これらは、噂話でなく日常に起こった事件であるのだ。
　その時の状況は、新聞部の八神 修と三ヶ島 葵も目撃している。
　些細な日常にも潜む危険、これらは誰にでも起こりえる事だと、自覚してもらいたい。

　尚、犯人は不明である。
　一説には、犯人は巷を騒がせている怪人セブンと言う見方もあるが、実際の所は不明だ。

　こうした事を踏まえ、事故、通り魔、怪我には十分気を付け、学生生活を送ってもらいたいと思っている。

記事提供：草薙 龍八

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【思い出の記録（事件編その２）】

　セブンの記事は、龍八以外にももう一人の生徒の手によっても書かれている。
「……そうなのだ、あの時からなのだ」
　珍しく真剣に、真央は自分が書いた記事に目を通す。
　陸上部のインハイも近い為、中々こちらの作業に加わる事は出来なかったが、それでもどうにか書き上げたこの記事には、色々な思い出が詰められている。
「うん、真央ちゃん頑張るのだ！ でも、ちょっとお腹すいたのだー……」
　但し、真剣なのもそこまでである。
　朝からの新聞配布、そして昼直前の授業前、という事も重なり、真央はそのまま机へと突っ伏していた。

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セブンと皆と

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　つい一ヶ月前なのに、懐かしいのだ。

　円ちゃんと親しくなって、葵ちゃんともっと親しくなったきっかけなのだ。
　フツウを守るっていうより、みんなが悪いことから世界を守るって頑張ってた気がするのだ。

　真央ちゃん、ここら辺からねこったーの有効活用を覚えた気がするのだ。
　で、それが縁で次のセブン騒動？の時に、修ちゃんに新聞部幽霊部員にさせてって頼んで今があるのだ。

　誰も怪我をしたく無いし、させたくだってない。
　皆が皆、頑張って何かを守りたいって思うのは何よりも強いって、真央ちゃんは思うのだ。
　だから一言、これだけを書いておきたいのだ！

「セブンを通じて、僕らは世界と向き合った。その２歩目」

記事提供：後木 真央

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【思い出の記録（島の不思議編その１）】

　寝子島に伝わる幾つかの伝説。
　その中でももっとも有名とも言えるのは、間違いなく落神伝説であろう。
　今回の新聞の中でも、そうした伝説や噂話等と言ったものの特集は、当然のように組まれていた。
「うむ、わらわのも中々に見栄えがよいな」
　この特集で、まずトップに載せられたのは珠喪の記事である。
　前日に行った作業ではレイアウトと幾つかの記事を担当した珠喪も、新聞に貢献する為に記事を提供していたのだ。
　お題は落神伝説について。
　興味があるものであれば、一度は聞いた事があるであろうこの題材を、珠喪はこうして記事にする事で生徒達に明確に伝えるべく記事にしていた。
「本当にあったのか、それとも偽りであるのか……まぁ、それらは調べていくうちに何かが見えてくるやもしれぬな」
　当の本人であるらっかみが現代にいる以上、その全てが偽りとは思えないが、実際に確証はない。
　ただ、過去にあった事を少しでも色々な生徒に知ってもらえれば。
　そんな思いのまま、珠喪は自分の記事に目を通していく。

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落神伝説について

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　この寝子島に伝わる「落神伝説」と言う物は知っているでしょうか？

　寝子島に昔から住んでいる人ならば一度は聞いた事があると思いますが、島外から寝子島に訪れたと言う人は知らないかも知れません。
　そこで改めてこの「落神伝説」に関して記事を綴りたいと思います。

　「落神伝説」はこの寝子島に伝わる伝承の一つで「昔々、空から神様が落ちてきてこの世に大災害や魑魅魍魎が溢れる混沌の世界になった」と言う物です。
　島民はその混沌の世界を神様に何とかして貰おうと懇願しましたが、神様は島民の願いを叶える事をしませんでした。
　しかし、島民の一人が落ちてきた神様に「神様の願いは何か」と尋ねた所、「海が見たい」とポツリと言いました。
　そこで島民は神様を担いで山から下ろし、海を見せた所、混沌の世界が治まり、元の世界に戻って神様は去って行ったとあります。
　今では「落神」から「らっかみ」へと名前が変わり、その神様が落ちてきたと言われる場所が九夜山にある落神神社と言われています。

　この様に寝子島には不思議な伝承が数多くあります。
　皆さんも機会があれば「落神伝説」だけでなくそれにまつわる伝承を調べて見るのも良いかも知れません。
　自分の住んでいる島の事を調べる事は楽しいですからね。

記事提供：斉田 珠喪

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【思い出の記録（島の不思議編その２）】

　島の昔の話、となれば興味を持っているのは珠喪だけではない。
　逆巻 天野もまた、こうした話には興味を持っており、次に続く記事はそれらの流れの話であった。
「やっぱり、他にも知りたいのは居たんだ」
　伝説等の話に興味を持っている生徒は、今の所それほど多く居るわけではない。
　天野は、その中でも特にこうした話に深く興味を持っている生徒の一人であった。
「落神伝説……か。どうだろうね、ここ二ヶ月でも色々あったし、そろそろ本腰を入れて調べてみるのも楽しいかも知れないか」
　天野が提供した記事には、雑多に並べられた今まで体験した事を含め、自分で調べた都市伝説や過去の話が多分に含まれる。
　もちろん、そうした話の中には眉唾なものもあるだろうが、どちらかといえばこうした調べものによる知識の蓄積は楽しい、という側面も強かったのだ。
　だからこそ、天野は自分の記事と、そして続く記事にも目を通し、更に自分の知識を深める為に情報を集めていく。

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寝子島の七不思議+α

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　４月。
　この島に来て驚いたのは不思議なことばかり起きたことだ。
　悪く言えば、変人と変態が多いだけかもしれないが。
　その中でも僕が気になったものを、七不思議として紹介したいと思う

　・人を迷わせる不思議、幻の桜
　・女と子供の泣声、三夜湖の幽霊
　・深夜の暴走列車、偽でん
　・老いない店主、たどり着けない喫茶店
　・九夜山に佇む要石、砂掛谷の大鯰
　・再来、落神伝説
　各項目を詳しく語ると――（長くなったので中略）

　何でこんな事を描いたかと言うと、ゴシップ雑誌の記者と散々九夜山などを歩きまわされたからだ。
　お陰で僕も桜に迷子にされたり、喫茶店の名前を脳裏に焼き付けようと努力したりと色々あった。

　でも不思議に挑むのは面白かったよ。
　――本当に、もしかしたら。
　そんな考えで道を歩くんだ。
　ただ普通に生きてるだけでは出来ない、素敵探検。
　今年の夏の肝試しにぜひ、活用してみて欲しい。

　話題の落神伝説も生徒が陰で仕組んだ悪戯との噂だけれど、二組の某先生のズボン同様、まだ続くのかもしれない。

　おっと、忘れるところだった。
　７番目の不思議……それは、生きる伝説・猫鳴館。
　不気味な屋敷に集う変人。行けば事件に巻き込まれるという。
　でも、事件の後は笑い声が響き会う。
　こればかりはぜひ、体験したほうがいい。
　――曲者ぞろい、だけれどね。

記事提供：逆巻 天野

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