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冷たい床に手をつき肘をつき、横たえていた身を起こす。うなじを滑り肩に落ちる、結わえたまま寝乱れた黒髪を解けば、髪に付いていた木屑が音もなく暗い床に落ちた。
眠りに落ちる寸前、無意識のうちに抱き寄せていた毛布を冷え切った指に掴む。髪から落ちる木屑は気にもせず、毛布を掻き寄せる。
部屋の夜陰に吐き出した己の息の温かさに、
神代 千早
は黒い睫毛を僅か伏せた。瞬きの後にゆるり、黒髪に覆われがちな瞳をもたげる。暗がりに頼りにならぬ瞳には構わず、己の背の温もりの移った背後の壁に手を這わせる。指先に壁を伝って立ち上がる。手探りに壁のスイッチを押せば、向かいの壁を覆う遮光スクリーンカーテンが微かな駆動音と共に巻き上げられた。
壁一面を埋め尽くす硝子の向こうには、星ヶ丘の街を静かに彩る夜景が広がっている。
空を一望出来る場所が欲しい、と零した端から、『機関』は星ヶ丘支部の持ち物件である屋敷を用意してくれた。
『機関』は協力者に対する報酬を惜しまない。
ひとりで住むには広すぎる屋敷は、おそらくは元は『機関』に駆逐された悪魔か天使の持ち物であったのだろうが、それを気にしたことは一度もなかった。
ふと手を見下ろせば、眠る間さえ手の中にあった『鬼百合の仮面』が目に入った。窓硝子に映り込む夜景の光が、金属とも鉱物とも皮とも判別がつかぬ材質の仮面を伝う。ぬめるような黒地に細かく彫り込まれた百合の紋様に指先を触れる。仮面に咲いた鬼百合は、まるで生花のようにしとり、指先を濡らした。
仮面に囁かれるように、手を持ち上げる。
手にした仮面越し、島の空、町の光さえ届かぬ遥かな空に開いた大穴を見上げる。
ひとの目には決して触れることのないはずの空の大穴を、ひとの身である千早は『機関』から供給されたアーティファクト『鬼百合のマスク』で可視化する。
音もなく開いて渦巻く大穴に、大穴を見続けて来たからこそ分かる『異界者』落下の予兆を認め、千早は手早く仮面で顔を覆った。
肩に掛けた毛布が落ちるも構わず、床に散らばるキャンバスやイーゼルの間からスケッチブックを引き摺り出す。砕かれた石膏像の欠片を更に踏み砕いたことにも気付かず窓辺に寄り、足元に転がっていた無数の色鉛筆の色も確かめずに拾い上げる。座ることすら忘れ、天空の向こう側から落ちてくる『異界者』の姿を仔細に描きとめる。
手元の画用紙と星ヶ丘の夜とを行き来していた視線は、『異界者』が星ヶ丘の街に落ちる間際に翼を広げ、空へと再び舞い上がったところでふと止まった。
元の世界へ戻ろうとした夜のイカロスは、けれど戻ること叶わず、空の途中で力尽き島へと墜ちて行った。
紙に走らせる筆を持つ指の先に、『異界者』が落ちた場所が見える。
夜の島の中でも一際明るいあそこは確か、世界各地にカジノを持つグループが経営するというリゾート施設。
(世界……)
『異界者』の姿を描き切った手が止まると同時、胸に湧いた言葉に、千早はちらりと首を傾げた。
この島の外に、それは当然の如くある。あるのだと、誰もが信じている。
けれど千早は、仮面を手にするまで『世界』を考えたことがなかった。
だからこそ、思う。
(島の外に……本当にそれはあるのだろうか)
己が今生きる此処は、何処なのだろう。
振り返れば、路地の向こう、熊のような男が仁王立っている。
巡らせた首を前に戻せば、目前を塞ぐはビルの壁。固く閉ざされた金属製扉が開くとは到底思えない。
追い込まれたと思い知って、
天動 記士郎
は軽く唇を噛んだ。『機関』の一員であるあの男――黒河太一と初対面時に律儀に名乗ったあの男には、幾度となく追い回されている。真っ向からの殴り合いさえ幾度か経験している。その度に逃げ果せては、来た。
(飛ぶか)
視線を上へと上げる。ビルとビルに挟まれ、小さく切り取られた夜空が見える。隠している蝙蝠翼を現せば、逃げるに難くはないだろう。
背後から足音が近づく。
まるで崖の底だと思って、記士郎は息を吐き出した。
空の大穴から地上へと落ちて、随分と経っている。地上では己が異端であることを思い知ってからは、出来るだけ目立たぬように暮らして来た。己をしつこく追い立てる『機関』とも、表立って争うつもりもない。
路地の向こう、ビルとビルに挟まれた狭い夜景を背に近づく足音の主を振り返る。足を止め戦闘態勢を取る『機関』の男に、
「取引をしましょう」
悪魔はにこやかに話しかけた。
「私の翼を、『アーティファクト』の材料として差し出します」
厳つい顔を不審に顰める太一に、記士郎は己の背に隠していた漆黒の蝙蝠翼を現し広げる。
知っているのか、と低く呻く太一に、記士郎は小さく肩を竦めてみせた。
「この島に来て随分経ちます。情報源には事欠きません」
この島には天使や悪魔だけでなく、様々の人間がいる。『機関』にも属さず天使や悪魔と武力だけでなく渡り合う者さえ、探せば案外安易に邂逅が叶う。
翼を広げた途端、先に別の機関員によって中途半端に引き千切られた片翼が痛んだ。
元より回復能力は高い。翼をもがれたとしても時間を経れば再生さえ適う。それなのに、『アーティファクト』の力によって傷つけられた所為か、傷の回復はいつもよりも格段に遅い。
傷の痛みを微塵も表情には出さず、記士郎は己が身を切り売りする分だけの交換条件を提示する。
「一時的にだけで構いませんので、私への干渉を避けてもらえませんか」
少なくとも、今ここで太一と戦う行為は避けたかった。
静かに深く呼吸をする。両脇に垂らしていた手を拳に固め、瞳の奥に殺意じみた闘気を孕ませ太一を見据える。
「『本気』で戦えば両者に相応の被害が出る――」
拳を構える。持ち上げた拳越しに太一を見る。記士郎の放つ闘気に圧されてか、咄嗟に腰を落とし防御の構えを取る太一に、
「悪い条件ではないと思うんですけどね」
一瞬のうちに戦闘態勢を緩め、記士郎は朗らかに笑って見せた。
笑いかけながら、太一の様子を窺う。
実のところ、半分はハッタリに近い。すぐ再生するとばかり、事もなげに翼の提供を申し出てはみたが、真実は違う。一時的にも翼を失うことは非常に不利だった。翼を奪われる痛みは思考を奪う。動きの自由を奪う。
それに、再生した翼は元のものよりも脆い。
過去、生きるが為にこの島のコレクターに翼を売り渡したことがある。それ以降、再生した翼は元々のものより脆弱だった。『アーティファクト』の力を得ているとは言え、ひとの手にさえ容易く引き千切られそうになるほどに。
それでも、そうまでしても、――たとえ少しばかりの間であっても安息が欲しかった。
以前取引したコレクターは、けれど一度だけという約束を反故にし、それ以上を望んだ。
(面倒なので彼は処理しましたが)
幾度と拳を交わして来た目前の男ならば、敵であっても一度交わした約束は破るまいという、ある意味での信頼があった。
悪魔は笑う。
「さて、……如何でしょう?」
ああ、と地下に続く階段の奥、誰かが呻いた。痛みを必死に堪えて堪えて、それでも堪らず唇を割って出た悲鳴を、けれど甘い喘ぎのように耳にして、
「……太一さん、」
千早は唇に当てた手を下げ、開いた格子戸の奥、陽の差し込まぬ店内の影に佇む巨漢を見遣る。
血みどろの手に招かれ、店内に踏み入る。後ろ手に戸を閉ざす。『機関』幹部である太一の手にぶら下げられているのは、紛れもなく血まみれの天使翼。
「女将はまだ?」
頷く太一に、此処を訪れた目的である紙封筒を手渡す。
『アーティファクト』製造のための地下施設がある、そう聞かされたことのある店の奥から聞こえるナニカの音を耳にしながら、目深に被ったフードを外す。店内の翳りに紛れ表情の見えなかった太一の顔には、太一が引き千切った白翼の持ち主のものなのか、大量の血がしぶいていた。
厳つい頬に付着したまま固まりかけて粘つく血の塊に手を伸ばす。目を丸くする太一には構わず、親指で血を拭い取る。
陽の差さぬ店内にあっても、指に付いた血は鮮やかに紅く見えた。紅を唇に押し付け舐めとろうとしたところで、
「『異界者』の血です、神代さん!」
太一の焦った声に我に返った。血のついた指を拳に握り込む。
(言えない)
外の冬風に漂っていた沈丁花の香と同じに血臭を甘く感じたなど、口に出せるわけもなかった。
口を閉ざす千早に気を遣ってか、太一が血塗れの顔に似合わぬ穏やかな笑顔を浮かべた。
「折角です、見学して行きますか?」
工芸品の工房を覗いていかないか、とでも言うかのような口調で、千早が断ることを想定していないかのように太一は踵を返した。そのまま、迷うことなく店の奥へ続く小さなドアを潜る。
熊のような背を追う。
普段は隠されているらしい地下への階段を降り、蒼白い光が灯るばかりの長い通路を行く。首を巡らせ絶えず周囲を見回す千早の様子に気をよくしてか、太一は旧市街支部の人手不足と『異界者』の増加を愚痴のように零した。通路の終わりにある緊急用の避難装置や施設閉鎖装置の位置をひとつひとつ説明し、
「表にはあまり出していませんが、『異界者』の身体の一部や全部を此処で加工して『アーティファクト』とします」
施設の目的を晒す。
通路の奥には、円柱形した培養槽が百も並ぶ施設が存在した。研究員らしい白衣の女が駆け寄り、うっかり血塗れのまま表に顔を出した太一を叱りつつ、太一の持つ天使翼を受け取り忙しそうに奥へと駆けて行く。
培養槽の中に浮かぶ、生きているのか死んでいるのかも分からぬ『異界者』たちを眺めて歩いて、辿り着いたのは、天井から吊り下げられた布に四方を囲まれた空間。
そこに置かれたベッドの脇の丸椅子に、場違いに呑気な顔で座る悪魔を見た途端、千早は小さく首を捻る。
穏やかな瞳に、千切れ掛けた傷だらけの蝙蝠翼に、見覚えがあった。
「彼は、取引の為に翼を差し出しました」
太一が淡々と口にする。見学しますか、と問われ、千早は躊躇うことなく頷いた。
ベッドの脇のトレーに並べられた注射器を手に取ろうとする太一を、
「ああ、麻酔は結構ですよー」
悪魔はいっそ気楽な声音で制した。使えばうまく再生しないこと、そもそも麻酔は効かぬことを明るい笑顔で口にする。
刃物で切り裂かれるよりもそのまま素手で引き剥がしてくれた方が治りも早いと言われ、太一はそういうものかと肯うた。どうぞとばかり衣服を脱いで差し出された蝙蝠翼の背をしばらく眺めていたかと思えば、何気ない一瞬に、虫の翅を引き千切るが如く無造作に、蝙蝠翼を二翼まとめて一息に剥ぎ取る。
「ッ、あぁア!」
悪魔が堪らず苦痛の声を上げた。
消毒も縫合も断り、噴き出し流れ落ちる血も傷もそのままに背を丸める悪魔を置いて、太一は施設の何処かへと消えた。
「……またみっともないところを見られてしまいましたね」
椅子に座して痛みに動けず自然治癒を待つ悪魔に唐突に話しかけられ、千早は悪魔の背を見つめる視線を僅かに動かした。
「これで、しばらくは追い立てられずに済みます」
ぽつぽつと話す悪魔の傍ら、ベッドの端に千早は腰を浅く下ろす。さらされた背を、ひととは違う骨格と筋肉を持つ背を眺める。その背を濡らす脂汗と血のあまりに甘い匂いに、くらり、眩暈を覚えた。訳も分からず高鳴る鼓動を不審に思いつつ、瞬きも忘れ悪魔の裸の背を見つめる。
千早の凝視に居心地の悪さを感じてか、悪魔は早々に退散の動きを見せた。ベッド脇のワゴンに置かれていた包帯を取り、手慣れた仕草で傷口を覆う。
脈動に合わせて噴き出していた血があからさまに少なくなっていることに目を瞠る千早に、年若いなりの仕草を始めて見た気がして、悪魔は笑う。
またどこかで会うかもしれない。
もう二度と会わないかもしれない。
「何か面白いことがわかったら教えてくださいね」
気紛れに、社交辞令じみて口にすれば、
「それは、悪魔との取引き?」
千早の唇が心底楽しげに、恐ろしく自然に弧を描いた。
悪魔はもう一度笑う。
「……ヒトのほうがよほど残酷ですね」
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阿瀬春
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シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
バトル
定員
15人
参加キャラクター数
16人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年10月18日
参加申し込みの期限
2016年10月25日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年10月25日 11時00分
参加キャラクター一覧
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