【星幽塔】おつかいみんなでできるかな？（茹で蟹編）｜リアクション

【星幽塔】おつかいみんなでできるかな？（茹で蟹編）

　そうとなれば行動は早い。リアと天吏でセッティングし、彰尋は腕によりをかけてトマトクリームのパスタとサラダを作る。
（茹で蟹ばかりじゃ、飽きてしまうかもしれないからな。それに、一緒に食べた方が楽しいし）
　窓の外を見れば、妖精たちが興味深そうに彰尋の様子を見ていた。思わずくすくす笑うと、ウインク１つ。
「後でな？」
　そう言えば妖精たちも嬉しそうに頷く。
（これは、量を増やした方がいいか？）
　なんて思ってしまう。幸い蟹は大きめ故に、ちょっとぐらいパスタの量を増やしても問題は無いだろう、と彼はにらんでいた。
　しばらくして、テーブルの準備が整う。出来た料理を運び、３人と妖精たちの和やかなランチタイムが始まる。
　食にあまり興味の無い天吏ではあるが、舌に広がる旨みに思わず笑みを零す。リアが作ったトマトを分けてもらって作ったパスタは、どこかほっ、とする味でお腹も心も満たされる。
「美味しいな。母が作ってくれた味に似ている」
「そうか？　少し照れるな……」
　リアの言葉に彰尋は照れながらも嬉しそうだ。
　妖精たちも美味しい、美味しいと言いながらパスタを食べている。その穏やかな雰囲気の中、彰尋は「実は……」と第五階層での事を話し始めた。
　第五階層では、第三階層の時のように黒猫に力を与えた存在がいた。その所為で聖竜は変化し、結果的に救う事は出来なかった。これから先も同じように『ソレ』が現れるのではないか、と彰尋は危惧している。
「……黒猫の時は、救う事ができた。けれど、これから先、もしかしたら救えなくなる、という事になったら……。そう思うと、不安になるんだ」
　ため息混じりに口を開く彰尋にリアは穏やかに相槌を打つ。
　聖竜の場合、受けていた事が事なだけに死んだほうが救いになるのでは、と彰尋は考えている。だが……不安なのだ。
「もう少し、星の力が強くなればあの影を追い払う事は出来るのだろうか。この光の力が強くなる方法が、あるのか、とか考えてしまう」
　天吏は静かに聴き、お茶を飲みながらリアを見る。リアは静かに頷き、彰尋を見た。
「……星の力が強まれば、か。ならば、オーブに火を灯して君たち自身を信じると、いいのかもしれない」
　リアは少し考えて、２人を見る。妖精たちもまた、信頼を込めた眼差しを２人に向けた。
「僕らは、あの子は、君たちの行動によって助けられた。出来なかったときは、その時考えるしかないかもしれない。だが、僕らは、君らが『よりよい結果』を得る力を持っていると、信じているよ」
　励ましになっているか解らないが、とリアは僅かに苦笑しつつも、穏やかな眼差しで彰尋と天吏を見つめた。

　その後も長閑な雰囲気の中、会話と食事を楽しんでいた彼らだったのだが……何かを感じたリアが表情を険しくする。
「っ？！　２人とも、テーブルの下に！」
「えっ？」
「早く！」
　リアに促されテーブルの下に隠れると、暫らくして地面が揺れ出す。体感にして、震度４はあっただろうか？　テーブルから皿が落ち、避難していた妖精たちが悲鳴を挙げてリアたちに捕まる。
　しばらくすると揺れが収まり、ゆっくりとテーブルの下から出る。散らばった皿などを片付けながら、２人は僅かに首をかしげた。
　不思議に思っていると、リアが困惑した様子で口を開く。
「ここ最近だが、地震が起こるんだ。何だろうなぁ……」
『そういえば、昔は土の竜がうろうろしていたんだけど、最近見ないね』
　リアの傍らにいた、小鳥のような妖精が思い出したようにいい、それに３人は息を飲む。なんとなく、関係がありそうな気がしたからだ。
　３人は、またこの階層でなにやら大きな事件が起きるのではないか……、と予想してしまうのだった。