【星幽塔】おつかいみんなでできるかな？（茹で蟹編）｜リアクション

【星幽塔】おつかいみんなでできるかな？（茹で蟹編）

　――第一階層。

　こちらに来たメンバーは、フランチェスカを尋ね城にやってきていた。
（他のアステリズムが元気か知りたい、か）
　八神修は、出発前、反射的に呼び止めたシドニウムからソレを聞き、妙に納得しないながらも頷いた。触った感じは普段修たちが使い慣れている紙のそれなのだが、なんか違和感を覚えている。
「ぬぬぬ。お届け先はprincessデスから、ちゃんとした方がイイデスカネー」
　傍らのトワ・E・ライトフェロゥは真剣な顔で悩み、椿美咲紀はというと、丁寧に包まれた小物……実はかにフォークを手にニコニコ笑う。
「蟹産地の人は身を出すのが上手だから必要ないけど、そうでない人には必須ですっ！」
　喜んでもらえるかわくわくしているようだ。
（フランチェスカさんとは面識はありませんが……）
　常闇月は修と椿の付き添い、という形で同行しているが、２人から話は聞いており、少し気になってはいた。

　一方、じっくり話したいと考えた獅子目悠月は時間をずらして行こうと考える。
（蟹だけというのも味気ないし、何かお土産を買っていこう）
　箱を手に考えた彼は丁度アクセサリーを取り扱う露天を見つけた。そこで花の細工が美しいバレッタを見つけるとすぐさま購入。おまけとして金平糖の袋を貰った。
（これはこれで可愛いな）
　なんて思っているうちに、フランチェスカの居る城へとたどり着いた。しかし、足を止め、思案する。
（まだ、誰かいるのだろうか？）
　悠月は、もう暫らく待つ事にした。

　悠月がバレッタを買っている頃。城では、修たちがフランチェスカに謁見していた。彼女は綺麗に梳いた髪を項でまとめ、にこやかに修たちを出迎えた。傍らには、銀髪の好青年（実年齢７０歳以上）の側近、ジルベルトが控えている。
「こんにちは、皆さん。元気そうで何よりです」
　優しい笑顔で出迎えるフランチェスカに、４人は礼儀正しく挨拶をしていた。
「お初にお目にかかります。私はエミリア・T・フェルグリットと申します。現在は、『トワ』と呼ばれておりますので、その様にお呼び下さい」
　淑女の礼をとり、トワがきちんと挨拶する。それに続き月も
「八神さん達の付き添いで参りました。常闇月といいます。よろしくおねがいします」
　とスマートに礼をした。彼女から漂う『只者ではない』オーラにフランチェスカは目を細める。月はそれとなく美咲紀の側に控え、フランチェスカと仲間達の様子を見る事にした。
「フランチェスカさまの父君である先代の国王と認識のある医師、シドニウム様からの御献上品をお持ち致しました」
　トワは慣れた様子で淑女らしい態度をとる。その様子に普段の彼女を知る面々は恐らく息を飲むだろう。
（普段のトワちゃんと違ってなんか、こう、レディです！）
　美咲紀がちょっと驚いている様子に苦笑しつつ、修も『ねこよろず』からの手土産であるスライム石のアクセサリーや、サプリメントや濃厚蟹スープを献上。
　そうしながらも各階層での冒険について語ればフランチェスカも興味深そうに相槌を打つ。時折フランチェスカも質問し、月も美咲紀やトワと共に色々と答えた。
「第四階層の冒険の際、たくさんの蟹を入手したのでサプリメントとスープにしてみたんだ」
　と笑顔の修。
「こちらもよかったら使ってくださいっ！　蟹の殻から身を取り出すのに便利ですよっ！」
　美咲紀がかにフォークを取り出し、ついでにとトゲトゲが星っぽいから、とペンダントヘッドに加工した物もプレゼント。
「皆さん、ありがとうございます。蟹はゆっくり頂きますね」
　フランチェスカは嬉しそうに瞳を細め、にっこり。その穏やかかつフレンドリーな空気にトワは通常モードに切り替わる。
「あの、トワさんも楽にしていいですよ？」
「ホントですか？　トワはこーゆーのは疲れるデス」
　フラン、と呼んでよいかと問えばフランチェスカはくすくす笑って頷いた。

　因みに。何故トワは本名を出したのだろうか？
「？　本名を出したのは、第一階層のprincessに失礼がないよーに、デスカラ、タイはないデス」
　なのだそうな。