魔法少女、ときどきマスコット或いはヒーロー｜リアクション

魔法少女、ときどきマスコット或いはヒーロー

　二頭身のマスコットと化した幌平馬桐によって、伊橋陽毬が魔法少女に変身していた頃——、寝子島の各所でも同じ現象が起こり始めていた。

「魔『砲』少女じゃないのよっ！
　誰が砲弾で攻撃する少女になれって言ったんだーっ！」
　ろっこん発動後で大人の身体のまま変身させられた大田原いいなは、自身のあられもない姿について町の人々に釈明をするかのように、そこを行く触手系マスコット朝野未沙の首根っこをむんずと捕まえて、首がガクガクするくらい激しく振った。
「おおお落ち着いて魔法少女・ファイアクラッカー。
　それがあなたの潜在能力が引き出された姿で、あなたが望んだ姿でもあるんだよ！」

　魔法少女の導き役であるマスコットが発したからだろうか。そのなんでもない言葉は——あなたはまだ変身したばかりだし、戸惑うのも仕方がないだろう。ここはあたしが導いてあげましょう、と教え諭す賢者の声に聞こえた。
　いいなの勢いもしゅんと消えていく。
「……自ら望んだ姿……？」
　いいなは路面店のガラスに映る姿を冷静に見つめたが、やっぱり耳まで真っ赤になってしまった。
（魔法少女とは斯様に露出度の高いものではなかろうて！　これでは、これでは……！）
　どうしても直視するのが辛く顔を背けようとしていた時、いいなはガラスに映る未沙の奇妙な点に気付いた。捕まえていた未沙の口が、しまりのない笑顔になっている。
「うふふ、スリングビキニ風レオタードコスチュームとはまた美味しい」
「エッチぃ衣装を妄想したのはお前かっ！！」
　怒れる魔法少女——もとい魔砲少女は、女の子大好き触手系マスコットを振りかぶって放り投げた。

　そんな風に突然の現象を否定的に見る者が多数居る一方で、変身台詞から完璧に決めてみせた魔法少女も確認されている。

「アニマルっっピュア・ハァアトっ！！」

　地中海を思わせるアクアグリーンの光から生まれたのは、魔法少女・らぶりぃおったーだ。
　どこから吹いているのか分からない風になびく黒いロングヘアーが清楚な印象を与えるが、白いスカートの真ん中はぱっくり開いていてそこに野郎のブーメランん競泳水着が見え……いやいや、ちょっぴりセクシーでキュートなコスチュームだ。

「世界の平和のために、そして動物たちの未来のために！　武美、頑張るんだからっ！」
　決めポーズをとると、頭の上の耳がぴこぴこっと動く。
　——可愛い。
　中の人が『男子高校生』だと知らなければ、ノリノリの『男子高校生』だと知らなければ！　誰もがそう思うことだろうアイドル系美少女戦士が爆誕した。

　——そしてまた一つ、特別な力が寝子島に誕生する。
　それが魔法少女の誕生によって生まれたのか、それとも彼らが現界に湧いた事によって魔法少女が生まれたのか。鶏が先か、卵が先かの問題より重要なのは、それが魔法少女と因果関係にある事実だ。
　シーサイドタウンを覆う影『マジューン』から、人々の笑顔を守るために……、
　今、魔法少女たちの戦いが始まろうとしている！！

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