バトルタワー　ガーディアンドール｜リアクション

バトルタワー　ガーディアンドール

●シークレットノイズ：希望の戦士Ｓ・Ｄ
　世界は闇に充ち満ちた。
　何も無い空に放たれる救難信号はむなしく交差し、空が割れて大地が裂けた。
　ここはヒーローのない世界。
　希望を忘れた亡者たちの世界。
　粉みじんに砕けたオフィス街跡の平原に、希望は人の形をしてやってきた。
　全長二百メートルの金属ロッカーによって大地に降り立った人型の希望は、湖と化した皇居に靴を沈めて歩く。
　まばたきをして振り返る絶望の影。
　傾いた帝都タワーをへし折ってナイフにかえると、希望の影へと走り出す。
　雲を割いて走るそれを、希望の影が回し蹴り。
　腰をへし折り吹き飛ぶ絶望を、希望の影がにらみ付ける。
　天空を見上げた全ての人は、人型の希望をさしてこう呼んだ。
　希望の戦士Ｓ・Ｄ。

●バトルタワー第零階：サキリ、ログイン
　サキリ・デイジーカッターにとってバトルタワーはていのいい訓練場だった。
　理由も動機も大雑把に示されたというのに、サキリは愛用のナイフをホルスターに納めてロッカーへと身を詰める。
　ログイン認証がどうのという音声と共にほんの僅かな浮遊感。
　気づけばロッカーは開き、部屋は広大な美術室。
　振り返る木製のデッサン人形たち。
　サキリはロッカーを抜け身をさらけ出し、指でデッサン人形たちを手招く。
　走り出す人形たちに、サキリは微笑以下の笑みを浮かべてワンスピン。
　後ろ回し蹴りが腰に直撃。吹き飛ぶ人形。同時にホルスターのロックを外してナイフを逆手に抜けば、後方より飛びかかる人形の喉に突き立てる。
　見えない歓声が聞こえるようだ。けむる空気を駆け抜けて跳躍。乱暴に振り込む人形のナイフを靴底で押しのけると、宙返りから背後に回って二本目のナイフをホルスターから開放。親指で跳ね上げたナイフが回転しながら頭上へ飛び、自らの反転と共にキャッチ、アンド、スイング。人形の首がざっくりと切断され、サキリは細く息を吐いた。
　見えない歓声が聞こえるようだ。
　音のないスポットライトに照らされるようだ。
　不思議な熱に前髪を払い、サキリは振り返る。

このページにイラストを設定する