バトルタワー　ガーディアンドール｜リアクション

バトルタワー　ガーディアンドール

●シークレットノイズ：希望の戦士Ｉ・Ｓ
　ある日世界に穴が空いた。
　火星第六都市の崩壊は目の前だ。
　人類が願いを託して作り上げた科学の結晶は巨大な破壊兵器となり、人の形をして人類を破壊していく。
　七日間で星を灰色にするという科学の巨人。
　人類が絶望を実現してしまった世界。
　もう引き返せない破壊の世界。
　スペースデブリの全てを燃やし尽くし、ついに希望が現われる。
　空中ではじけ飛ぶ全長八万キロの金属ロッカー。
　飛び出したのは希望の化身。ウィンク一つで人々に希望をもたらした。
　迎撃のために見上げた科学の巨人を踏みつけに。
　未来を指すように人差し指を天に向ける。
　それだけで世界に雷がほとばしった。
　科学の巨人がはじけ飛ぶ。
　人々は同じように未来を指さして、希望の化身に名前をつけた。
　希望の戦士Ｉ・Ｓ。

●バトルタワー第零階層：莉鳥、ログイン
　第零資料室だか準備室だかがおかしなことになっているという。
　椎井莉鳥はほんの僅かな好奇心と気まぐれな暇つぶしだけをポケットにいれて、掃除用具入れそっくりのロッカーに飛び込んだ。
　宇宙めいた浮遊感を挟んでロッカーははじけ飛ぶ。
　無限に広い美術室。
　見上げるデッサン人形の群れ。
　着地する場所がないじゃない。莉鳥はため息を一つ、片目を閉じて集中。
　距離と位置は大丈夫。あとは身体がちゃんと動くかどうかだ。
　いちにのさんと頭で唱え、デッサン人形の頭に足を突き出す。
　着地は失敗した。頭に足を乗っけて立つ積もりが反らした胸を削るように相手を押し倒してしまった。
　落下の衝撃が和らいだだけ儲けものだろうか。
　莉鳥は距離をとるために三度転がり、膝立ち姿勢で周囲を見やる。
　デッサン人形が飛びかかってくる。
　飛んでくれれば軌道が読める。今度は間違わない。
　莉鳥は目を瞑り、鉄砲ごっこでもするように人差し指を伸ばして集中。
　接触の一瞬前、違法スタンガンさながらのスパークを起こした。
　一度けいれんしてはじけ飛ぶ人形。
　彼女の異能に警戒するようにじりじりと取り囲む人形たちに、莉鳥は再びため息をついた。

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