バトルタワー　ガーディアンドール｜リアクション

バトルタワー　ガーディアンドール

●シークレットノイズ：希望の戦士S・A
　世界が殺意に呑まれている。
　法律（ルール）も道徳（モラル）も宗教（マナー）も喪った世界に人類の生きる隙間など無かったのだ。
　人々は略奪と感情を理由にぶつかり合い、生存のために他者を停止させることを積極的に選択した。
　逆ねずみ算の人口減少。
　停電した町のように喪われる技術と文化と思い出の形。
　名前を喪ったハイウェイの真ん中を、残り僅かな絶望の使徒が歩く。
　絶望すらも恐れて引きこもったマイクロバスの住民たちを狙っている
　その時である。希望は前触れも無く表われた。
　マイクロバスの天井をへこませて現われた金属ロッカーから、希望の体現者が表われたのだ。
　絶望の使徒はナイフを抜き、呪詛を吐いて大地を蹴る。
　希望の体現者は同じくナイフを抜くと、即座にそのうち一本を投げつけた。
　打ち払う絶望の使徒はそれが過ちだと知るだろう。
　顎に膝蹴りを食らうその瞬間にやっと知るだろう。
　マウントをとった希望の体現者は掲げたナイフを逆手に握り、幾度幾度と突き立てる。
　心臓を壊しきり、血にまみれた希望の体現者を、マイクロバスの住民たちはこう呼ぶのだ。
　希望の戦士S・A。

●バトルタワー第零階層：さゆる、ログイン
　疑問定義。朝鳥さゆるにバトルタワーへ参加する意義などあったろうか？
　暫定回答。意義など実家のクローゼットに置いてきた。破れだストッキングと一緒に。
　大きな意味も無く不思議に変容した第零資料室の『おあそび』に参加したさゆるは、奇妙さでできたようなナイフと共にロッカーへ身体を滑らせる。
　破壊的な浮遊感があったかと思うと、ロッカーは机の上でガタンと開く。
　デッサン人形がてくてくと歩いてくるのが見えた。あとは無駄に広い美術室だ。
　なんだこんなもの。
　さゆるはロッカーから出て服のよれを直すと、持っていたナイフを投げつけた。
　走りながらナイフを弾く人形。
　こちらが武器をひとつ失ったとみて調子づいたのか。
　調子づいた相手を手玉に取るのはさゆるの特技のようなものだ。
　机から飛ぶや、人形の顎めがけて膝蹴りを叩き込んでやった。
　全力で走った物体の先端を蹴りつけてやったのだ、仰向けに倒れて当然である。
　仰向けに倒れた相手を組み敷くことに、さゆるは躊躇しない。
　抵抗を試みる人形を薄目で見ると、ナイフを逆手に掲げて見せた。
　さあお楽しみ。
　お楽しみの時間だとも。
　心臓があるかもしれない場所をめちゃくちゃにしてやろう。
　もしかしたら、嫌な気持ちもスッキリするかもしれないじゃないか。

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