バトルタワー　ガーディアンドール｜リアクション

バトルタワー　ガーディアンドール

●希望は夜明けのようにやってくる。戦士の凱旋を待て。
「案外簡単に倒れるんだな……」
「新田も来てたんだな。怪我はないか？」
　八神修に声をかけられて新田亮は苦笑した。
　何度か相手の攻撃を受けたが、外傷らしい外傷はうけていない。強いて言うなら肉体の表面が壊れたブラウン管テレビのようにブレるくらいだろうか。
　なにげに語っていなかったが、尾鎌蛇那伊の能力があれば回復もできるかもしれないので、危なくなったら復帰も難しくないだろう。
　だがこれが酷くなれば疑似身体は消えてしまうだろう。
　もぎ取ってきた人形の腕を投げ捨て、サキリ・デイジーカッターが歩いてくる。
「二人とも、武器は持ってきたのかい？」
「武器？　強いて言うなら野球のボールを……」
「うーん、ボールペンの先端がかろうじて鋭いかな」
　武器らしい武器を出さない二人に、サキリは片眉を僅かに上げた。
　さもあらん。平和な世界で平和に暮らす彼らに戦争グッズは似合わない。
　彼らの武器は毎分四千発の機関銃でもコンクリートを切断するブレードとも比較にならない、折れない心と挑戦心だ。
　そんな彼らに対抗するかのように、デッサン人形たちはがちゃがちゃと組み合わさって巨大な人形へと変化した。
「大詰め……ってところかな」
「来るぞ、構えろ！」
　三方向へ別々に飛び退く修たち。叩き付けられる机。
　再び持ち上げようとした机を修が分解。勢い余ってよろめいた所に、瞬間移動で背後へ回り込んだサキリが回し蹴り。
　膝関節を打ち抜くような蹴りが巨大人形を転倒させる。
　寝返りのように腕を叩き付けるが、サキリは再びの瞬間移動で回避。
　代わりに横合いからさゆるが飛びかかってきた。
　ナイフで浅く脇腹を削ると、すぐさま離脱して走り出す。
「やりにくいわね。こんなちっぽけなナイフじゃ」
　そう言いながら、さゆるの手の中にあるのは人間の腕やら首やらを切断しかねないコンバットナイフだ。サキリの使う小ぶりなナイフとは比べものにならない破壊力があるはずである。
　巨大人形はさゆるに狙いをつけ、四つん這いで追いかけ始めた。
　叩きつぶさんと伸ばす腕を横っ飛びに回避。腹の下へ潜り込むように転がる。
　さゆるを追って首をもたげた巨大人形。その身体を駆け上り、首に跨がりしがみつく莉鳥。
「隙だらけ。貰ったわ」
　ぎゅっと目を瞑り、両手の五指から電撃を放った。
　びくんとけいれんし、頭を地面につける巨大人形。
　莉鳥は転がるように飛び降りると、首の後ろを叩こうとする巨大人形から逃れて走る。
　円周軌道を走って硬球を投げつけ続ける亮。
　ぼこぼこと腕や肩に穴が空いていく。
　修は脱力した人形がうまく分解できたことを思い出し、片手を前に翳した。
「終わりだ」
　バラされたプラモデルのごとく分解され、崩れゆく巨大人形。
　パーツ落下の衝撃で舞い上がる粉塵に顔を覆って、修は息をついた。
　同じく息をついた亮。若干逆立っていた髪が垂れ下がる。
　ナイフをホルスターに戻して天井を見上げるサキリ。
「チュートリアルステージって具合だね。本番にはどんな敵が出るのかな？」
　応えを待つことなく語りかける修。
「これは始まりにすぎない。狙いを聞いてもいい頃じゃないか？」

『おっしゃる通りです』
　心に直接語りかけるような声がした。
　帰り方を考えていたさゆると莉鳥がはたと顔を上げる。
『まずは皆さんを試そうとしたことを、お詫びします。話を聞いてくださいますか？』
　美術室の壁に無数の絵画が生まれていく。
　絶望を描き出したような画だがしかし、淡い輝きを放っていた。

　――『第一階層：ヒーロー喪失』へ続く

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あとがき

担当マスター：青空綿飴
ファンレターはマスターページから！

　お楽しみ頂けましたでしょうか。青空綿飴です。

　『シークレットノイズ』はログイン間際にみた一瞬の幻のようなもの、としてキャラクターたちには認識されています。
　なんとなく関係があるような気がしてなりませんが、こんなことをした覚えもこんな場所の記憶もありません。
　なぜこんなものが見えたのか。
　その答えを求めるべく、皆さんを第一階層へご案内します。

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