Good Morning and Good Day｜リアクション

Good Morning and Good Day

●fine today
　産婦人科医、志鷹若菜。
　２７歳、独身。
　寝子島シーサイドタウンに弟と同居。
　彼女の朝は、日の出前に始まる。
　携帯電話にセットしたポップミュージックにつられるように布団から腕を伸ばした若菜は、小さくあくびをしながら布団から這い出た。
　鳥の声が窓ごしに聞こえる。
　細く光さすカーテンの隙間が、朝の到来を告げていた。
　カーテンを開く。
　冷たい窓ごしに朝靄が広がっている。
　今日も天気は良さそうだ。
　まだ眠い目をこすって洗面所へ。
　手早く顔を洗って歯を磨いて、部屋のクローゼットへと戻ってくる。
　服選びはあまり雑にはしないタイプだ。派手すぎず、けれど充分な洒落っ気のある服を選んでベッドへと広げた。
　三面鏡を開いて化粧を始める。といっても最低限のものだ。口に眉に、肌に。でもって髪を器用にまとめてしまえば完璧だ。
　髪留めは妹に誕生日プレゼントとして貰ったものにした。
　ただの髪留めひとつをとっても、貰ったものだと気分が良いものだ。
　準備を終えたらキッチンへ。
　弟のこともあるので、二人分同時に作る。
　食パンを袋から出してトースターへ。そうこうしている間にもお湯を沸かしつつコンロに火を入れつつ、フライパンが暖まった頃にはすぐさま卵を落として蓋をして……。
　若菜は控えめに言って器用だ。体力もあるし、細々とした手際もいい。
　朝食一つをとっても、若菜の器用さは現われていた。
「おはよう。出来てるよ」
　起きてきた弟と並んでテーブルについて、手を合わせる。
　メニューはシンプルに食パンと目玉焼き。加えてサラダとハーブティだ。
　なんでもないようなことを話ながら、ニュースを眺め、頭を少しずつ回転させていく。
　ここまでくれば、もう頭は充分に動いていた。
　今日の仕事を思い出しつつ、部屋に戻って鞄を開く。
　資料もばっちり。道具もＯＫ。
　『よし』と呟き、鞄を手に部屋を出た。
　玄関に立ち、靴をはく。
　ドアに手をかけたところで、自分の中に何かのスイッチが入った。
　自分が元気にしているだけで、救われる人々がいる。
　自分がいることで、救われる人々がいる。
　目をぱっちりと開き直して、ドアを開けた。
「行ってきます」
　今日も、いつも通りの一日が始まる。
　どこかの誰かの未来のための、一日が始まる。