Good Morning and Good Day｜リアクション

Good Morning and Good Day

●sweet day
　北条冬華の朝。
　２ＬＤＫの部屋に、ほんのりと甘い香りが満ちていた。
　シナモンに似た優しい香りに包まれて、羽毛の布団がもごもごと動いた。
　枕元で鳴るアラーム音に抵抗するためだが、抵抗が抵抗になっていない。
　何度か寝返りをうつうちに、掛け布団がベッドからずり落ちていった。
　年齢からは想像の付かないボディラインと、ちょっとあり得ないくらいの白い素肌がネグリジェの隙間から露出していた。
「ううん……朝……」
　枕元の目覚まし時計を掴んで表示を見る。
　余裕はあるが、二度寝には危険な時間だ。
　苦労して布団を引っ張り上げるくらいなら、そのまま起きてしまった方がいい。
　寝汗も随分かいてしまったしシャワーも浴びておきたい。
　朝から凍えてしまわないようにとタイマー式のエアコンを効かせているが、そのせいでかえって汗ばむのだから人間というのは簡単ではない。
　いっそ厚着をして眠ればいいのかもしれないが、冬華のトランジスタグラマー体型が日本のあらゆるパジャマを拒絶するのである。主に胸元が拒絶するのだ。
　巨乳の悩みの最たるものは、全力ダッシュがキツいことでも肩がこりやすいことでもなく、服が選べないことにあるのだ。
　さておき。
　海外製のネグリジェにカーディガンを羽織る。ライトブルーのネグリジェも相まってなんだか涼しそうな格好だが、本人的には熱いくらいだった。
「シャワーを浴びる時間は、ありますよね」
　寝起きに見た時計の表示が見間違いでないことを念のため確認して、冬華はシャワールームへと向かった。
　バスグッズがあふれんばかりに置いてある脱衣所で上着とネグリジェを脱ぎ捨てて、開放されたかのようにシャワールームへ飛び込んでいく。
　暖かいシャワーを思い切り浴びる。
　身体をひねりながら、くるりと回りながら、汗をぬぐい落とすように浴びる。
　特に胸元のケアは大切だ。持たざる者には分からない苦労がここにはある。
「ふう……すっきりしました」
　タオルで身体を、そして濡れた髪を整える。
　全体的にホワイトカラーを好む冬華である。タオルもレースのついた真っ白なバスタオルだ。
　ついでに言えば下着類も白を好む。
　ショーツとブラを引き出しから取り出して、手早く着用した。
　ここでブラのつけかたについて詳しく語るべきか語らざるべきかほんと迷ったが、尺の都合でカットさせて頂きたい。別の機会、もしくは挿絵でお楽しみ頂きたい。
　ドライヤーで髪を乾かしつつ、次の支度に頭を巡らせる。
　身体のべたつきはともかく、朝からシャワーを浴びておくと頭もスッキリするものだ。
「朝ご飯は何にしましょう。確かパンはまだあったはずですから……」
　制服に着替えつつ、朝食の準備。
　ここはシンプルにパンとコーヒーである。
　しかし、あまりゆったりしていると時間が無くなってしまう。
　身だしなみをあれやこれやと整えて、冬華は鞄を手に取った。
「さあ、今日も一日……頑張りましょう」
　アパートのドアを開ける。

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