未来に向かってにゃーっと準備｜リアクション

未来に向かってにゃーっと準備

○ポスターとチラシ

　毎年この時期になると「卒業生を送る会」の準備で実行委員たちは忙しい。
　「実行委員になると成績が上がる」「恋人ができる」などの噂がとびかうが、真偽のほどはどうなのだろうか……？
　そんなある日の放課後のことだ。

「ここまでいろいろと協力してもらってなんとか形になりそうだけど……やっぱり忙しいね！」
　赤い髪の２年生ロベルト・エメリヤノフは、実行委員長として準備のとりまとめと最終チェックなどの仕事をしていた。
（音響チェックと会場設営と……先生との交渉や打ち合わせとあと……そうだポスターやチラシもあるね。ポスターの方はみんながまとめてくれてるからそこは大丈夫だと思うけど……！）　
　身体がいくつあっても足りない、というように走り回る。

　そのポスターとチラシ組が、美術室に集まっていた。
「卒送会の宣伝用のポスターとチラシを作成するわよ」
　という二年の早坂恩の案に、
「あっポスター作るのなの？　あかりもなんか手伝いたいなの！」
　と、大きな目と八重歯がチャームポイントの橘明里が元気に言えば、
「私はポスターやチラシの背景、もしくは枠を描きますね。ふふ、私はこう見えて絵は得意な方なんですの」
　お嬢様だけど庶民的な上下左右も明るく手伝いを申し出た。
　こうして、賛同した委員たちが集まったというわけだ。
「今年のテーマは『未来に向かってにゃーと鳴け！』ということで、みんなでにゃーっと頑張りましょう♪」
　一本三つ編みにピアス、おねぇ口調だがれっきとした男子の恩の言葉に、
「にゃー！」
　何人かのノリのいい委員の声が上がる。
「にゃー！　イベント事で盛り上がれるこの空気本当にええなあ♪」
　ポスチラ組を見ながら、金髪でスペイン生まれ、だが関西弁を話すマリベル・ロイスがにっこりする。
「さて、ウチに出来ることは……うーん、学校関係の資料でも使うだろうから、今回の卒業生を送る会に関して写真を撮ったりビデオを撮ったり、簡単だけど今日の準備からの記録をまとめて記事にしてみようかな」
「いいアイディアね」
　恩も賛成する。
「日本語にはちょっと自信ないけどそこら辺は撮った写真映像で補えるし！」
「あら、日本語は十分できるじゃない。日本育ちなんでしょ？」
「まあ、そうやな」　
　恩の突っ込みにマリベルは舌を出す。
「というわけで講堂にいって、カメラチェックとビデオチェックをするでー」
　と部屋を出ていった。

　残った委員たちに、恩がやることを説明した。
「チラシは一つだけで沢山印刷するとして、ポスターはいくつか作れたらいいかしら？　出来たら校内用は貼って、商店街の方とかお店の方にポスターを貼らせてくださいとかチラシを置かせてくださいって、お願いしにいかなきゃね」
（こんなんでも一応卒送会の実行委員ですから、できる限りのお手伝いはせんといかんですよね）
　ゆるゆるっとマイペースながら、倉前七瀬は真剣に取り組んでいる。
「絵はそこそこやけど、レタリングとかは少し自信あるとですよ。ひとまず、僕なりのチラシを作成してみますね」
　そう言って開催日時と開催場所とイベント内容などなど、必要事項を書き出してB4用紙をびっしりと文字で埋め尽くしていく。
「紙いっぱいに文字びっしり……ふふ、壮観ですねぇ」

　恩と明里と左右はポスターに取り組んでいた。
　まずは全体のレイアウトをする。
（いっぱい頑張るみぃんなをサポートしたいから、一生懸命頑張るのなのよ）
　難しいことを考えるのは自信がないけれど、明里はそう思う。
「あら、この空白の部分……少し寂しいですわね……そうだ、いいアイデアが思い浮かんだのですけれど」
　左右とちょうど同時に、明里も反応した。
「そうねえ、この空きスペースに猫の絵描いてもいいなの？」
　顔を見合わせた二人を見て恩が笑う。
「あらあら、それじゃ別々にポスターを作ってみたら？　たくさんあったほうが楽しいもの」
「そうしましょうか」「そうするなの！」
　二人はそれぞれ作業を始めた。

このページにイラストを設定する