未来に向かってにゃーっと準備｜リアクション

未来に向かってにゃーっと準備

○おやつタイム！

　出来上がった文字いっぱいのチラシを眺めた七瀬が、首を傾げる。
「うーん……でもこれ、僕好みにしすぎてしまったけん、他の人にはちょっと見づらいチラシになってしまった気もします。文字数を少なくして見やすいチラシも作ってみます」　
　新しい紙を持ってくる七瀬に、恩が言う。
「その前に、お茶とかどうかしら？　今日は寒いでしょう？　温かい紅茶を水筒に入れて持ってきたのよね」
　そう言いながらお茶を紙コップに注いでいく。
「ありがとう。そういえば休憩も大事ですよねー。僕、つちのこの里とニャルキー持ってきました」
　七瀬が頷いてお菓子を取り出せば、
「あかりもお菓子持ってきたなの！」
　みぃんなの休憩所を豊かにするよ！　と思っている明里。
　フツウのお菓子に混じって、ちょっと怪しいものを持ち込んでいる。
「え？　うなぎキャンディ、シオチョコポテチ、おしるこジュースにティー・コーヒー……珍しいお菓子ですね」
　左右が素直に感心し、
「こんなのどこで見つけてくるの？」
　呆れたように恩が言えば、
「えー、これおいしいと思うのなのよ。あかりまだ食べてないけど！」
　なんて言いながら、うなぎキャンディを口に入れた明里は変な顔をした。
「かば焼きなお味なの」
「かば焼き味、気になります！」
　左右も怖気づくことなくうなぎキャンディを口にし。
「……個性的な味ですね」
　やっぱり変な顔をするのだった。
「あ、こっちはおいしいなのよ～」
　明里がおしるこジュースをすする。
（甘いものをみんなでつつきつつ、適度に雑談することで作業が捗る気がします）　
　そんなふうに思う七瀬である。

「……文字が少ないとやっぱり寂しい気はしますが、スッキリして見やすくはなったでしょうか……いやしかし物足りない気も……」
　ううむ、と七瀬が悩みながらチラシ推敲する横で、ポスターの製作も進んでいる。
「あかりのがりょくを舐めてもらってはこまるの！　よくみるの！」
「あら橘さん、可愛らしい猫ね。上下さんもさすが上手ね。いっぱい描いちゃっていいと思うわぁ♪」
　恩がほめる。二人のポスターの余白は可愛らしい猫やその足跡で埋められていた。
「ほほお」
　七瀬も感心する。
「僕のチラシにも絵を入れてみましょうか」

　そこへ、音響や照明の確認や調整を終えた彰尋と紅葉たちが戻ってきた。
「あら、紅葉ちゃんに彰尋ちゃ……鴻上君に丹羽さん、ロイスさんもお疲れさま。音響の調子は良かったかしら？」
　恩が声をかける。
「はい、大丈夫でした。機材も優木さんが運んでくれましたし」
　彰尋が答える。
「こちらの調子はどう？　倉前君、もうできたの？」
　紅葉が手が止まっている七瀬に声をかける。
「余白に絵を入れたほうがいいか迷ってたとこです」
「そうねえ、絵が入ったほうが目を引くかもね」
（倉前君は今回実行委員で一緒になるまでクラスも違うし、意識することなかったんだけれど、活字に没頭していたりするのを見ると声かけたりお世話焼きたくなるのよね……）
　そんなことを思いながら紅葉は答えた。
「猫さんなら明里が描いてあげるなのよ」
「それじゃ、お願いします」
　そこへ、遥斗もふらっと顔を覗かせた。
「ううむ、すごいな。自分にはこういうのは描けないなあ」
　素直に感心する。
「あらあら優木くん、汗かいてるわよ……大丈夫かしら？　疲れたでしょう？　お茶やお菓子で元気を出してね」
「私も作業の休憩のお供用に家でクッキーを焼いてきたの。ココア風味の黒猫さんと、バニラ風味の白猫さんクッキー」
　紅葉が可愛らしいクッキーを広げた。
「講堂では食べれなかったから、こちらで皆で食べましょ？」
「可愛いなの！　いただきまーす」
　明里に続いて手を伸ばしたのは遥斗だった。
（話題がないし、間が持たないからふらっとのぞいたらどこかへ行こうか、と思っていたが）
　女子生徒と話すのは苦手だけど、食べ物に関しては別だ。
「うまい……」
　素直につぶやく遥斗に、紅葉は笑顔を向ける。
（みんな見ていて和む後輩たちだわ）
　お菓子を食べて落ち着いた遥斗は思う。
（無理しないで自分のペースで最後まで手伝おう……）
　
「鴻上君、お茶もう一杯どう？　そんな格好じゃ冷えてるんじゃない？」
　恩がお茶のお代わりを勧めていた。
　さすが、と紅葉は細やかな気遣いに感心する。
「ありがとうございます、いただきます」
　お茶が喉を通ると共に冷えた身体が生き返るのを感じつつ、
（当日が楽しみだな）
　彰尋はそう思うのだった。

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