【星幽塔】第一階層　ＱＵＥＳＴ！下水道のスライム退治｜リアクション

【星幽塔】第一階層　ＱＵＥＳＴ！下水道のスライム退治

●酒場

「stop！　するデス！」
　クエストを終えて『Barアストラル』に帰ってきた一行に、トワ・E・ライトフェロゥは可愛らしい小さな手を向けた。
「男女に別れて並ぶマス！」
「えー、何でだよー！」
　口を尖らせ言う卯木衛にトワがぴしゃりと言う。
「お店デスカラえーせーへーが困るマス！　……というかマモルどろどろ！　金色！　流してお店入るデス」
　そう言うとトワはついたての裏側に女性陣を招き寄せ、自身の＜魔水の光＞でシャワーを作り出し、浴びさせてやった。
　これには女の子達は大喜び。下水道だったりネズミだったりスライムだったりと精神的負担が大きいものにまみれていた彼女達は、服の上からであったがぶっしゃーと水飛沫を上げるシャワーに小さく虹が架かる中、キャッキャと水浴びをする。
　そのついたての向こうから聞こえてくる声に七峯亨がいち早く反応した。ろっこん＜縮身＞を使い覗こうとそろりと列を抜け出す。が、ガシリとその襟を掴まれた。
「七峯どうした？　男子の番はまだだぞ」
　鮫ノ口礼二郎が何の邪推もせず真面目な顔で言った。
「いや、ほら、その……あんたもどうだい？」
　亨はくいっとついたてを顎で差し、笑顔で礼二郎を誘ってみる。礼二郎が不思議そうな顔になった。
「シャワーは浴びる。しかし順番だからここで待つべきだ」
「……」
　その澄んだ瞳と迫力のしゃくれ顔が亨に迫る。数秒の対峙の後、亨は無言で礼二郎の前に並び直した。
　水浴びが済んだ順にトワはタオルと着替えを配る。
「シャワーは簡単だからまたみんな後で各自お風呂入るデス！」
　テキパキテキパキ。有能なクエスト受付嬢は彼らを着替えさせ、汚れ物はちゃっちゃと洗濯に回す。洗って乾かす間にクエスト完了の確認をしようというのだ。勿論洗濯、乾燥の時間短縮に水、火、風の魔法使いを雇う事を忘れなかった。

「quest完了デス？」
　酒場の中に面々が揃ったところでトワが訊く。優木遥斗が持っている袋からはみ出ているスライムをぞろりと出そうとしたところで慌てて止めた。
「よく分かるマス！　これは町からの報酬デス」
　そう言ってトワは人数分の金が入った小袋を用意する。それを皆に渡し終わると首を捻った。
「１つ余るマス？　why？」
　え、と皆もお互い顔を見合わせる。椿美咲紀が声を上げた。
「骨削さんがいないです！」
　その言葉に一同が周囲を見回す。確かにどこにも骨削瓢の姿がない。八神修が顎に手を置き思案顔になった。
「そういえば、下水道を歩いている途中から姿を見なくなった気がするな」
「迷って、ないかな……」
　恵御納夏朝が心配そうに眉根を寄せる。しかしトワが明るく言った。
「ヒサゴは大丈夫デス！　困った顔想像できないデス。　報酬は後日取りに来てもらうマス！」
　そして余った袋をしまうと、今度は飲み物を配り始めた。
「これはマスターからの差し入れデス！」
「酒か？！」
　山田勘三郎が勢いよく訊く。トワはふるふると首を振った。
「普通のfruit juiceデス。お酒はお金を払って清く正しく飲むマス」
「よっし！　金はたくさんあるから、後で豪遊だ！　頼むぜマスター！」
　勘三郎の言葉にマスターがウインクで応える。トワがグラスを掲げた。
「ではみんなお疲れ様デス！　カンパーイ！」
「「「「カンパーイ！！」」」」
　トワの音頭に一同が元気よくグラスを合わせる。そしてしばらくお互いの健闘を称え疲れを癒した後、無事解散となった。