【星幽塔】第一階層　ＱＵＥＳＴ！下水道のスライム退治｜リアクション

【星幽塔】第一階層　ＱＵＥＳＴ！下水道のスライム退治

【城下町】

　八神修、椿美咲紀、恵御納夏朝、水上桜は城下町を歩いていた。
「２人はこれからどうするんだ？」
　夜の賑わいをみせ始めた街のざわめきの中、修が夏朝と桜に訊いた。夏朝が自分の右手に嵌められた手甲を見ながら答える。
「僕は……ちょっと武器屋に寄ってみようかな。報酬とお宝があるから、左手用に手甲を作ってもいいかも」
　桜はその横でうーんと伸びをする。
「私は公衆浴場ね。水浴びはさせてもらったけど、やっぱり広いお風呂でてのんびりしたいわ」
「八神君達は？」
　今度は夏朝が訊いた。修と美咲紀が目を合わせる。美咲紀が元気に口を開いた。
「私達は魔物を探してみます！」
「え、まだ戦うの？！」
　驚いた桜に修が言った。
「ランドタートルやクラブの甲羅、ワーム類の角。スライムの結石は収穫だったけど、まだまだ高く売れそうな素材はいくらでもあるからな……魔物料理もしてみたいし」
「魔物料理？」
　聞き返した夏朝に修は革袋を開いてみせる。そこにはスライムの切れ端が入っていた。
「……これ食べるの？」
　信じられないという桜の表情に修が苦笑した。
「何事にもチャレンジだ。意外と美味いかもしれないしな」
　横で美咲紀がうんうんと頷く。
「オバケ蟹はきっと美味しいです！　鍋にしましょう！」
　そうやってわいわいと４人が話していた時だった。ヒラリと上から紙が飛んできた。
「何でしょうかこれは……『ブラック・リキッド亭』？」
　美咲紀がチラシであろう紙を読みながら首を傾げた時、ワッと街角から歓声が上がった。４人はちょっと顔を見合わせたが、人だかりの方に行ってみることにした。

　それは見事な芸だった。
　黒馬の上で執事の格好をした男の子が立っている。その手のひらから蜘蛛の糸のような物が出たかと思うと男の子はヒュン！　と道向こうの店の屋根に移動する。その動きはまるで蜘蛛男。そして男の子は屋根を転々と地上に降りることなく移動して、また馬の背に立つ。そして彼が優雅に礼をすると、また歓声と拍手が起こった。
「さあさあ、オレの芸なんかよりにゃんこたんの似顔絵の方がもっと凄いよ！　サービス価格だお試しお試し！」
　ピョンと馬を下りた男の子の隣には猫耳メイド姿の女の子がいた。サラサラと似顔絵を描いては集まる客に配っている。男の子は料金を受け取りながら客の女性にウインクした。
「こんだけ綺麗に描けたのはモデルもいいからだね。毎度あり！」
　そのメイド姿の女の子を見て、人垣の中から修が声を上げた。
「響じゃないか！」
　女の子―――響タルトが似顔絵を描く手を止めた。
「八神くん！」
「お？　お客さん？」
　執事姿の男の子―――鎌八まもるが４人の姿に気付き、うやうやしく礼をした。

「おー、スライム退治に行ってたのか。チラシは見なかったかい？　ポスティングしたんだけど」
　そう言いながらまもるが店のチラシを４人に配る。桜がそれを見ながら言った。
「ハンバーガーもあるのね……ポニテバーガーに……？」
「ＢＬバーガー……？」
　聞き慣れないメニューに夏朝も首を捻る。１人美咲紀が興奮しながら反応した。
「もしや攻めや受けが―――！」
　タルトがすかさずその言葉を引き取る。
「大丈夫！　ちゃんと考えてるよ！　薄い本も描くからね！」
「素晴らしいお店です！　今度是非行かせてください！」
　美咲紀とタルトは瞳をきらきらさせながら両手で固い握手をする。どうやらＢＬ亭は早速お客さんをゲットしたようである。

　そしてひとしきり話に花を咲かせた６人は笑顔で手を振り合うと、それぞれ目的の場所へと別れて行った。