【星幽塔】第一階層　ＱＵＥＳＴ！下水道のスライム退治｜リアクション

【星幽塔】第一階層　ＱＵＥＳＴ！下水道のスライム退治

●出発

　星幽塔第一階層にあるサジタリオ城下町。たくさんの人が行き交うこの町にある『Barアストラル』で、トワ・E・ライトフェロゥがスライム退治のクエストに参加しようとする者達の前で忙しく立ち回っていた。

「スライム退治は下水道が詰まった原因のモノを持ってくるか、南西地区の水流が戻ったら完了するデス！　下水道には treasure box 眠ってる噂もあるマス」
　今回のクエストを説明するトワに、八神修が声をかけた。
「下水道の地図とかはあるのか？　俺は『ねこよろず』が武器を扱ってる関係で、１枚手に入れられたが」
「mapは大丈夫デス！　マスターが何枚か用意してくれるマス」

　そう言ってトワはカウンターの方を向く。カウンターの上で地図を広げ、この店の常連になりつつある御巫時子と話をしていたマスターが片手を挙げた。マスターと目を合わせた時子が穏やかに言う。
「簡単な地図ですがお守り代わりにはなりそうです。行ってみないと分からない事も多いと思いますが……」

「ではマッピングが必要になるな」
　桜月が隣の北条冬華に頷きながら声を上げた。月の手にはペンとノートが用意されている。こういう事態も想定したのだろう。

「何にせよ地図があるのは助かる。お互い協力して進めていこう」
　鮫ノ口礼二郎が高校生とは到底思えない落ち着き振りで言った。その言葉に恵御納夏朝も大きく頷く。

「ここに来る前に町の人から水の溢れ具合など少し話を聞いてきてる。地図と合わせれば問題の場所も特定しやすいと思う」
　優木遥斗が言った。彼は寝子高の制服姿だ。実は彼は訳も分からずこの異世界に飛ばされて来ていたが、知人の経営する『猫島亭』に辿り着き、このクエストに参加する流れとなっていたのである。

「みんなで頑張ってスライム退治しようぜ！　隠し財宝もあるんだろ？」
　弾むように言うのはその『猫島亭』の経営者の１人である卯木衛である。彼は遥斗と、隣にいる千歳飴楓子を誘ってこのクエストに参加していた。『猫島亭』でゴロゴロしていた楓子は、トレジャーハントを目的に衛の誘いに乗ったのである。

「お宝もスライム退治もどっちも大事だよぃ」
　流れる様に言うのは骨削瓢。食えないその表情の裏で何を考えているのか分からないのが彼だ。

「スライムなんざちゃっちゃとぶっ飛ばして、お宝見つけて豪遊するぞぉ！」
　大きながらがら声で、元気よく山田勘三郎が言った。

「こっちへ来ての初仕事だ。ちょいと場所は良くないが、お宝もあるってんなら一発張り切ってみるぜ！」
　七峯亨がニヤリと粋に笑う。

「でもネズミもいるのよね。それも巨大な……」
　想像したのであろう、水上桜がぶるりと身震いした。

　そこにコーン！　といい音を椿美咲紀が響かせる。手に持っているのは何と中華鍋である。
「大丈夫です、この私にお任せあれなのです！　盾代わりのこの中華鍋、何と鈍器にもなっちゃいます！」

　コミカルに言う美咲紀に思わず桜の笑みが零れる。その横で弘明寺能美子も言った。
「もし怪我をしても回復するから任せてちょうだい」

　すると後ろから聞いているだけで勇気が奮い立つような、リズミカルなバイオリンの音が聞こえてきた。皆の注目を集める中、結城日和が華麗に演奏していたその手を止めた。
「クエストなんて異世界って感じだよね！　ふふ、私の音楽がみんなの役に立てるなら嬉しいなぁ」

　これから始まるスライム退治。どんな戦いが待っているのだろうか。
　トワの声がその始まりを告げた。

「quest start！　いってらっしゃーいデス！」

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