空色アクアリウム｜リアクション

空色アクアリウム

●しゃーくばすたーず
「おーいっぱい来た！　みつびちゃんモテモテだＮＥ☆」
　横ピースでウィンクすると、鼻歌交じりでサーフボードを操作しはじめた。
　ノリノリになったみつびにとって、水面から露出する背びれなど目標へのシグナルにすぎない。
「さっめが来たっ、やっつけろー！」
　波に乗ってジャンプ。ボードに回転をかけると、追いかけてきたサメめがけて体当たりをしかけた。
　それでも残った数匹のサメ。
　取り囲まれるがひるまない。
「それではお見せしましょう、みつびちゃん３２１の必殺技がひとつ、かまぼこ三段蹴りー！」
　ボードからジャンプ。追いかけてジャンプしてきたサメの下あごを蹴りつけてターン。反動をかけて別のサメに膝蹴り。
　さあ三匹目――と思ったらサメの牙が目の前にあった。
　イッツハプニング。
　これはマズイかなと思ったその時、目の前のサメが突然真っ二つに切断され、水の泡と消えていった。
　みつびはざぷんと水没。水面から顔を出すと、ボードの上に立った刀がちらりと振り返った。
「すまんな。借りたぞ。もう暫く貸しておいてくれ」
　ボードに視線を移すと、小枝がボートにつかまっていた。
「えっと……こ、こんにちわ？」
「こんにちわ」

　一方その頃、大半の人々を逃がしきった夏朝は建物の前でサメの迎撃に飛び回っていた。
　突っ込んでくるサメをジャンプで回避。クイックターンの要領でサメを蹴って更に飛び上がる。
　横合いから別のサメが突っ込んでくる。回避は可能……だが、ここで避ければ避難中の人々の所に行くだろう。
「んっ……！」
　歯を食いしばって腕を突き出し、自らの腕に噛みつかせた。
　本物のサメだったら腕が食いちぎられているところだったのかもしれないが、そこは疑似生物。腕に牙が食い込むだけで済んでいた。
　が、痛みが無いわけではない。
「恵御納さん！」
　後ろから美咲紀がバタ足で駆け寄ってくる。
　花を手に独特の舞いを踊り始めた。
　と同時に、サメの横っ腹に叩き込まれる金属バット。
「夏朝ちゃんから離れるのだー！」
　崩壊するサメ。だがそれで最後というわけではない。背後から迫るサメを見つけ、夏朝はネコシールを発射した。
　本来なら水の抵抗で発射速度が落ちるものだがここは空海、さして速度が落ちることなくサメの額にネコシールがくっついた。
　途端にサメの重量が急増。何が起こったのか分からないサメはばたばたしながら木の枝に引っかかった。
　そんなサメにワイヤーを巻き付け、一気に締め上げる月。
　引きちぎられたサメはそのまま崩壊し、水の泡へとかえっていく。
　修がかけつけ、夏朝たちのそばで制止した。
「怪我はないか」
「八神君……うん、僕は、大丈夫」
　見れば怪我がすっかり治っている。美咲紀の舞いが効いたのだろう。
　頷き、新たなネコシールを一気に手に取る夏朝。
「手伝うよ、武器を出して」
　夏朝のシールが鉄パイプや金属バット、月のグローブに貼り付けられる。
「ねこぱわーで無敵なのだー！」
　重量を増した金属バットを振り回し、ブラックジャック式に投擲する真央。
　その一方で修が鉄パイプを投げやりの要領で投擲。
　操作能力も併せて高速で飛んだバットとパイプは次々にサメを貫いて行く。
　不利を悟ったサメが逃げだそうとするがもう遅い。恐ろしく軽量化されたワイヤーがそこらじゅうに張り巡らされ、サメの逃げ道を完全に塞いでいた。
　逃げだそうとすれば強度に反して異様に軽いワイヤーの食い込みによって切断される程である。
　かくしてばらばらと崩壊していくサメたち。
　すべてのサメの崩壊を見届け、修はあたりを見回した。
「もう新たなサメが発生する心配もない……か。皆、助かった」
「なら、少し泳ぎましょうか」
　月の提案に、修たちは頷いた。
　なにせ素敵な空海だ。危険がないなら、遊ばなくては損というものだ。

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