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夜風の舞う草叢に、虫が鳴いている。
竹林を抜けたその先の夜の庭に、肌に纏わりつく夏の夜気に、
天動 記士郎
は栗色の瞳を柔らかく細める。
懐かしい、と思った。
「じいちゃんと過ごした庭を思い出す……」
ぽつりと零れた言葉が自分でも思いがけなくて、思わず唇を指先で抑える。
花火の音が空に轟く夏の庭に置かれた、竹製の長椅子に腰掛けていた栗色の髪の少女が驚いたように顔を上げた。
空に咲く光の花に少女の頬に残る涙の跡が照らし出されて、少女が慌てたように頬を擦って、記士郎は少し焦る。
「勝手に入ってごめんなさい」
竹林と庭の境目に足を止め、丁寧に頭を下げる。少女は首を大きく横に振った。
「ここは私の庭じゃないから……」
涙を拭った直後とは思えぬほどに明るい笑みを見せ、少女は立ち上がった。
「私こそ、ごめんなさい」
人懐っこい仕草で詫び、目立つ長身の割にあどけないほど柔らかな顔つきの少女は夏の庭から立ち去る。
両開きの分厚い蔵扉の前の長椅子の上、盆に載せられた手つかずの西瓜と氷出しの冷茶だけがある。流れる夏の夜風と夜空に響く花火の轟音に、冷茶の入った硝子椀同士が触れ合い、ちりん、と鳴った。
花火の色が躍る草を踏み、長椅子の前に立つ。
蚊取り線香と竹の匂いは、小学生の頃に祖父と過ごした時間を思い出させた。
(じいちゃん)
今は記士郎しか住んでいない、旧市街地にある店舗兼自宅は、元々は祖父の家だった。小学生の頃に一度寝子島を離れるまでは、両親と祖父と共にその家で暮らしていた。
――記士郎
祖父の声を聞いたような気がして、記士郎は頬に淡い笑みを滲ませる。
(そういえばじいちゃんも)
家の傍の猫の額ほどの畑で作業した後は、玄関先に据えたベンチで一服をして、夕暮れよりも少し早い時間からお酒を口にしていた。
幼かったあの頃、ちびちびと舐めるようにゆっくりと酒を含む祖父の隣に毎日のように座った。
祖父の傍らで祖父の酒の肴をつまませてもらいながら、帰りの遅い両親を待つともなしに待ちながら、旧市街の町並みを染めて行く黄昏をぼんやりと眺めていた。
祖父の傍らから見た景色を、今もまだ覚えている。
幼い頃に見た景色をなぞるように、そっと長椅子に腰を下ろす。空に鳴り渡る花火の音を辿って顔を上げて、盆を挟んだ隣、いつからか寄り添う人の気配に気付いた。
ふわり、祖父が喫していた古い煙草の匂い。
横を見ずとも隣に居るのが誰なのかは分かった。
「じいちゃん……」
呟いて、視線を向ける。幼い頃に見た横顔と同じに、祖父は空を仰いで煙草の煙を吹き上げていた。横目に記士郎を見、皺深い頬にますます皺を刻んで笑う。
何を言うべきか迷う。迷った末に座敷童のことを聞いてみようとして、ふと、祖父の視線が己の膝の上に投げ出した手を向いている気がした。
空を仰ぐように背を反らし、両手を背後に回して長椅子の縁を掴む。そうしてから、祖父の視線から己の手を隠そうとしているのではないかと思った。
一度は離れた寝子島に近頃ひとりで舞い戻ってから、祖父の居なくなった家を改装して住まうようになってから、不思議な世界に迷い込むことが多くなった。その不思議の世界で、最近はナニカを殴ることが少なからずある。口にしないまでも、祖父はそれを咎めているのではないか。そんな気がした。だから隠した。
「今でも、」
知らず掠れる声で囁く。
「絶対人は殴らないようにしています……」
本土に渡って通った学校は運悪く荒れていて、クラスメイトにさえ意味もなくよく殴られた。
(身体の割に鈍いから、でしょうね)
自嘲するでもなく実感として、今はそう思う。それが悪いことだとは思わない。思ったりはしない。
ただ、殴られるのはやっぱり嫌だった。だからボクシング部に入ったのは、殴り返すためというよりは殴られないよう、避けられるようになるためだった。
言い訳じみた言葉にも、祖父は静かに微笑むばかり。
煙を吐き尽し、空を仰ぐ。空に咲く花火に眩し気に瞬きひとつして、祖父はひょいと腕を伸ばした。
知らず固くなっていた背中を軽く叩かれ、幼い頃のようにごしごしと頭を撫でられ、記士郎は胸にわだかまる言葉にもならない思いを熱帯びた息にして吐き出す。
――記士郎
名を呼ばれた気がして隣を見ても、祖父の姿はそこにはもうない。
祖父の固い掌に押し戻されるように、背中を丸める。空見上げていた視線を己の膝に落とす。祖父の視線から逃していた己の手を膝の上に投げ出す。
見下ろす己の視線の中、掌はきつい拳になった。
(自分の力を過信するな)
祖父に、そう言われた気がした。
軋む拳を押し開く。顔を覆い、もう一度深く息をする。顔を上げて立ち上がり、
「今晩は」
庭の入り口に立つ黒髪の少女に向け、いつもと変わらぬ柔らかな笑みを浮かべる。
「こんばんは!」
右の扉を潜った先に続いていた竹林の道の果ての庭で鉢合った青年に、
宮祀 智瑜
は元気よく挨拶をする。ぺこりと深くお辞儀をし、軽い足取りで真っ直ぐに蔵の中へ入る。
「わ……」
天井や奥の文机に吊るされ置かれしたランプの淡い光に照らし出されていたのは、蔵の床も壁も埋め尽くすほどに凄まじい数の書物。
油と本の匂いが混ざった、外よりも涼しい蔵の中に向け、智瑜はそっと声を掛ける。
「誰かいますか?」
お邪魔します、と本の隙間に爪先を下ろすようにして進む。智瑜の背丈よりも高く、塔のように積み上げられた本の隙間を覗き込み、誰か居ないか探しながら奥へと踏み入って、明かり窓の下の文机に辿り着く。
(ここでお手紙書いてたのかな?)
飴色に古びた文机の上には、盆に置かれた銚子と酒の注がれた猪口がひとつ。
遠慮がちに文机の引きだしをそっと開く。中にはどんぐりやビー玉、まるで子どもの宝物のようなものばかり。
文机の上の酒とは正反対な引きだしの中身に智瑜はちらりと首を傾げる。
傍らに立って見回せば、読みかけらしい本が何冊か開かれたままに置かれている。本を拾い上げて、智瑜はまた首を傾げた。書かれているのは、幼い子どもの手習いのような文字ばかり。
「いろは、に、」
クレヨンで書き殴ったような文字を一文字ずつ追いながら、蔵の中にいるかもしれない誰かのちぐはぐさについて思う。これではまるで、
(ちっちゃな子が大人の真似をしているみたい……)
それとも、誰かから聞いた話を元に、小さな子どもが自分の記憶だけを頼りに一生懸命に創り上げたお話の中の世界のよう。
「あなたの願いは何?」
この場を作り出した座敷童に向け、どこかで聞いているかもしれない彼女に向け、智瑜は語りかける。
「教えて」
困っているのなら、役に立ちたかった。怖がっているのなら、ぎゅっと抱きしめてあげたかった。
「もう大丈夫ですよ」
優しく、根気強く、智瑜は声を掛け続ける。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
冒険
定員
15人
参加キャラクター数
16人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年08月18日
参加申し込みの期限
2016年08月25日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年08月25日 11時00分
参加キャラクター一覧
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