鬼は外、福は内、寝子島の節分祭｜リアクション

鬼は外、福は内、寝子島の節分祭

「どんな衣装があるのかな？」

　やはり屋台の貸衣装を訪れていたのは、八神修である。

　せっかくの地域行事だからと参加したところで、貸衣装の看板に興味を惹かれ――入ってみたら、以前見た回向亭のマスターが座っていたのだった。促されるままに、衣装をあれこれと手に取って眺めていた。

「鬼役で参加する予定だから、鬼っぽいのがいいよなぁ」
「鬼ならその辺にございますよ」
　にっこり笑って指示されたのは透明な衣装ケース。でかでかと「鬼」と張り紙がされていた。
虎縞柄のズボンに青いスーツ、鬼の仮面……怖くないようなある意味怖いような。くす　と思わず笑みをこぼしつつ、これを着こなすのは相当レベルが必要だなあと思う。

「それにするのですかね？」

「え――えーっと、棒的な感じの小道具とかあったり？」

「金棒ならありますよ。プラスチック製だから軽いでしょう」
　試しに言ってみただけなのだが、出てきてしまう。

　こうなれば覚悟を決めるほかあるまいと、心を定めた。