「……ねぇ、知ってる?」
正月が通り過ぎ、寝子島神社恒例の節分祭が近づいていたころ、背後からそろそろ耳慣れた声がした。
「節分お化けってあるじゃん」
しらん。
「あれね~、私どうしよっかなー、なんか普段と違うかっこしてみるっていいやんね!」
仮装大会かなんかかね?
「こっそりひっそり隠れてさ」
「人込みに紛れて近づいて」
「豆さんわっとおどろかすの」
『楽しそう~!』とハモる二人の声は、祭りが近いせいかいつもより浮ついているようだった。
「あ、豆っていえば豆大福」
「唐突に食べたくなってきた! やっぱ豆大福は”にゃん豆屋(にゃんずや)”じゃんね! 屋台も出すんだって~。なんでか豆たい焼き!」
「それはいいや。フツウの豆大福食べたーい。いこいこ!」
そういって楽し気に走り去っていく気配に振り向くと、いつものごとく既に消えた後で。
あとから調べると、節分お化けはいわゆる仮装をして厄をやり過ごす習慣らしい。寝子島ではあまり聞いたことがないんやけど。というか多分ねーだろそんなイベント。
……ない、よな?
「鬼は~外、福は~内!」といえば、日本の風習のひとつ、節分である。
節分とはもともとは各季節の節目を示す言葉であったそうだが、現在ではおもに立春の前日を指す。
古くから季節の変わり目には邪気が生じると考えられており、それを追い払うために、豆撒きをしたり、魔除けの柊鰯(ひいらぎいわし)を指したり、縁起がよいという恵方巻を食べたりするようになったらしい。
さて、旧市街にある寝子島神社では節分祭が行われる。
年男・年女や一家の家長(男女問わず)が炒り豆を撒き、厄を払い福を招くのだ。
それ以外の人たちは、めいめい鬼の面を被って境内を逃げ回る。
とても賑やかな鬼ごっこの様相となるが、最終的にはみな鬼の面を脱いで、年の数だけ豆を食べたり、ふるまいのお汁粉やお神酒をいただく……というのが寝子島神社の節分祭のあらましだ。
それに合わせて参道商店街でも出店が出るので通りは大賑わいになる。
「柊の枝は用意したし、あとは鰯の頭を焼いて戸口に指せばいいね」
旧市街のお好み焼き『うさぎ屋』の前で、
宇佐見 満月はウンと一つ頷いた。
満月は家長なので豆撒き役でもある。そして、満月に呼び出された豆撒き役がもうひとり。
旧市街住まいで、弟の担任でもある、
相原 まゆ先生だ。
「うそでしょ。あたしが年女だなんて!」
そこに元気はつらつな
野坂 庵が通りかかった。
「こんにちは!」
「こんにちは。これから神社に行くのかい?」
満月が尋ねると、庵はポニーテールを跳ねさせて答える。
「うん! 小学5年生も年男・年女役で豆撒きしていいんだって!」
庵はそれからまゆを見た。
「あっ、もしかして同じ小5?」
「ええーい、このスーツ姿が目に入らぬかー! 今年36になるのよ! オトナの女よ!」
まゆが息巻くと、庵はぺこっと頭を下げた。
「うわー、そうだったんだ! 間違えちゃってごめんなさい!」
するとまゆも少し気を落ち着けたようだ。
「ううん、いいのよ。たとえ小5に間違われようとも、小さい体で頑張る女……それがあたしよ。そうよ、鬼も悪魔も日頃のうっぷんも、悪いことをぜーんぶ追い払うつもりで今日は豆を撒きまくるわ!」
ヨッ、先生! と満月が合いの手を入れる。
「その意気だ。悪いことぜーんぶ吹っ飛ばすくらい威勢よく豆を撒いとくれ!」
満月は景気よく笑って、今日の準備に取り掛かった。
こんにちは。
お届けするのは、節分の日のフリーシナリオです。
ガイドのように寝子島神社の節分祭に行ってもいいですし、
各ご家庭、寮、ご友人同士で、それぞれ節分行事を楽しんでも構いません。
宇佐見 満月さん、野坂 庵さん、ガイドへのご登場ありがとうございます。
もしご参加いただけた場合は、ガイド本文に関わらず自由にアクションを掛けていただいて大丈夫です。
○寝子島神社の節分祭
豆撒き役が豆を撒きながら境内を練り歩き、時に走り、
鬼役が逃げ回り、時に受けて立ち、
一般の参拝客が見守り、時に豆を投げられます。
豆撒きの豆がなくなれば終了で、お汁粉やお神酒が振る舞われます。どうぞ温まっていってください。
※豆撒き役、鬼役の区分は厳密なものではありません。
希望があれば誰でも豆撒き役をできますし、反対に年男・年女が鬼役や一般参加することもできます。
豆撒き役:年男・年女(今年、12の倍数の年齢になるPCさんと小学5年生のみなさん)と
一家の家長(男女問わず)。
木の一升マスいっぱいの炒り豆を、「鬼は外、福は内」と声を出しながら撒きます。
寝子島神社では、鬼役にとにかくぶつけます。
一般の参拝客にも撒いてあげてください。
豆や豆撒き用の着物は神社で用意しています。
NPC:相原 まゆ先生がめちゃくちゃに豆を投げてきます。
子ども扱いされると特に強く投げますが、ちびっこには手加減しています。
鬼役 :鬼の面を被って参加します。
豆をぶつけられるので境内の中を逃げてください。
豆を拾って年の数だけ食べると一年無病息災と言われています。
鬼の面は、紙のものが配られていますが、
頭にツノをつけたキュートな鬼カチューシャや本気の鬼コスプレなどを楽しむ人も多いです。
NPC:寝子島観光大使のサンマさんが鬼のお面を被って参加しています。
自分はイワシではないと主張して、別の危険からも逃げています。
参拝客 :豆撒き役でも鬼役でもないみなさん。
思い思いにお過ごしください。
NPC:寝子島観光大使(見習い)のマンボウくんがうろうろしています。
みんなの鬼の面が怖くて今にも気絶しそうです。
○その他
・参道商店街に屋台が出て、お祭りみたいになっています。
屋台を出したい方は、コメントページで一言お知らせいただけると
他のPCさんもアクションを掛けやすいと思います。
屋台で飲食したい方もどうぞ。
・各ご家庭、寮、ご友人同士で、豆撒きをしたり恵方巻を食べたりなど
節分行事を楽しむ様子などご自由にどうぞ。
・いつもの恰好でははっちゃけきれない! って人。
そんな人は、仮装してみてお出かけしてみてはいかがでしょう。
誰かのふりをするもよし。時代劇風な装いをするもよし。
これを機に男の娘に目覚めてみるのもよしですよ。
せっかくのお祭り、楽しんで参りましょう。
あ、仮装する場合、どんな格好をするのか、ある程度書いていただけると嬉しいです。
お任せされると面白い方向性だったりお似合いの方向性だったり気分で考えます。
どこかの喫茶店の坊主が悪乗りして貸衣装者さんを出店しているようなので、
衣装にお困りの方は、お気軽にどうぞ。
それでは皆様のご参加お待ちしております。