鬼は外、福は内、寝子島の節分祭｜リアクション

鬼は外、福は内、寝子島の節分祭

　みんながんばれ～。

　鬼役も、豆巻きやくも応援している参拝客の一人が、恵御納夏朝だった。のんびり眺める彼女の恰好は、狩衣姿に立烏帽子。かつて映画で見た陰陽師のような衣装を着ていた。
「あ、仙藤先輩だ……」
　知り合いが逃げたり、追いかけていたりする様は、これはこれで不思議なものだな、と思いつつ。

「え、えっと――鬼はー外ぉ、福はー内ぃー！」
「私からも、鬼は～そとー！」
　たまたま通りかかったらしい水上桜と曖浜瑠樹が、軽く豆を投げつけてきた。
「陰陽師、かっこいいわね」
「あ、ありがとう」
　立ち去り際にそう言って去っていった桜達を見送りながら、夏朝は二重の意味でお礼を口にする。豆――食べたいけれど、これは拾って食べてもいいものなのかな？
　思ったとたん、くぅ、とお腹が小さくなってしまう。
　この前のホスト部のパーティのせいで、若干ダイエット中の夏朝。来る途中の屋台でいくつも美味しそうなものがあることは認識していたが、そのあたりの事情でためらってしまっていた。

「参拝おわったら、何か、衣装汚さずにすむものでも買ってかえろうかなぁ……？」
　でも……。迷える乙女は、結局誘惑に負けることになるであろう自身をしっかりと自覚してはいた。が――今は、迷うふり。