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炎と再生のサンクチュアリ
● バードサンクチュアリ／魂の壺・２
突然の猫の鳴き声に、カラスたちは浮足立った。
そこに、粘土細工のウー君たちが飛びかかる。
「カ、カァ！」
陽太の操るウー君以下五匹のちいさな動物たちは、カラスの羽根に飛びかかったり、目元に飛びついたりと、獅子奮迅の働きを見せる。カラスたちは驚いて、もがくように羽根を動かし敵味方なく突っ込む始末だ。
「落ち着きなさい。言ったでしょう、誰かが壺を取り返しに来たのよ」
大天使 天吏が冷静に指示を出す。
すると有象無象の動きをしていたカラスたちも、なんとか統制が取れてきた。
「あそこの岩陰にいるわ。応戦して」
黒衣の悪魔が三人、天吏の指さす岩陰――陽太たちが隠れている場所だ――へ飛ぶ。
「だあっ！ 隠れてるなんて性に合わねえ！」
春彦が飛び出した。
「これでも喰らえ！」
左耳のピアスを２度撫でて、＜Stairs of air＞で突っ込んでくる悪魔たちの眼前に見えない足場を作る。
「ぐはっ」
悪魔たちは透明の足場にもろに激突し、立ち往生した。
春彦自身は足場を蹴って、上空から悪魔めがけて拳を繰り出す。
「なん……だとっ！」
悪魔は横っ面をしたたかに打たれて吹っ飛んだ。だが別の悪魔が春彦に襲い掛かってくる。
「くそ。悪魔もどきと対決は余裕ぶっこいてらんねぇか」
頬に一発喰らう。口の中に血の味がにじんだ。これが春彦の闘争心に火をつけた。
悪魔は春彦にとどめを刺そうと拳を高々と上げている。
「そう何度も喰らうかよ！」
繰り出される拳を後ろに飛びずさって避けると、春彦は切った口の中を舌で舐める。
ファイティングポーズで向き合ったそのとき、相対する悪魔の背後に漆黒の影が広がった。
影は、月の足元から伸びている。
月のろっこん＜月影の死神（グリムリーパー）＞だ。
死神を名乗る黒い影は、悪魔の翼を掴んで、もぎ取らんばかりに振り回し、投げ飛ばした。
「サンキュ！ あと一人！」
春彦は三人目の悪魔に正拳突きをかましたのち、鋭い爪でひっかいてやっつけた。
悪魔が羽ばたく力を失って岩石群の中を落下してゆく。
だが、ふぅと安堵の息を吐いたのも束の間。
「カラスたち、投石で追い払って」
天吏の命じるままにカラスたちが石を抱えて飛んできて、次から次へと石礫を落してきた。
「いて、いてて！ 数多すぎるだろ！」
これはたまらない。数が多すぎて春彦の拳では自分を守るのが精いっぱいだ。
一方の月は、グリムリーパーによって、すっぽり包まれるようにして抱きかかえられていた。
（グリムリーパーが盾になってくれているお陰で、私は今のところ大丈夫だけど、そう長くは耐えられない。楢木君だって消耗するだけだ）
となれば。
「楢木君、あとは御巫さんに任せて後退しよう！」
この隙に、カラスに変じた時子は、カラスたちの群れに紛れ込むことに成功していた。
（とにかく壺を……）
時子はさかんに視線を巡らせる。
すると、カラスたちに紛れて壺らしきものを持っている悪魔がいる。だが……、
（天吏さんも、壺のようなものを持っていますね……いったいどちらが本物でしょう……？）
わからない。
儀式が邪魔されるのを見ていた時子とて、近くでまじまじと壺を観察したわけではなかったのだ。
（仕方ありません……両方奪うしか……）
時子は、鳥たちと会話したいと強く願う。それから大きく叫ぶ。
「鷲さん、鷹さん、燕さん、サギさん！ 悪魔が持っている壺を奪ってください……！」
この声はもちろん、あたりにいたカラスたちにも聞こえた。
だが鷲や鷹がものすごい勢いで滑空してくる方が早かった。二羽は悪魔に爪と翼で襲い掛かり、持っている壺を叩き落とす。それを待ち構えていた燕とサギがキャッチした。
一方、カラスの時子は天吏が手にしている壺を奪いにかかっていた。
「どうしたの？」
天吏はそれが時子だとはわからなかった。鳥好きだけに、時子を傷つけることも出来ず、困ったように手で追い払おうとするだけだ。
（天吏さん、ご容赦を……！）
加勢に来た鷲と鷹が、翼を広げて天吏の視界を封じた一瞬のすきに、時子は元の姿に戻って壺を奪った。それを先生が潜んでいる岩陰めがけて投げる。投げてすぐ、時子は再びカラスに変じて、他のカラスたちの中に身を隠した。
（尚輝先生、お願いします……！）
岩陰から、よれよれの白衣が飛び出してきた。尚輝にも、今は発奮しなければいけない時だと分かったらしい。時子が投げた壺をキャッチする。
「受け取りましたよ！」
先に燕とサギが奪った方の壺は、陽太が受け取って抱えていた。
（これで事は為した、ハズ）
そう判断した陽太は、片手を大きく仰ぐようにして叫んだ。
「みんなー！ もういい、退却するよぉ！」
突然の猫の鳴き声に、カラスたちは浮足立った。
そこに、粘土細工のウー君たちが飛びかかる。
「カ、カァ！」
陽太の操るウー君以下五匹のちいさな動物たちは、カラスの羽根に飛びかかったり、目元に飛びついたりと、獅子奮迅の働きを見せる。カラスたちは驚いて、もがくように羽根を動かし敵味方なく突っ込む始末だ。
「落ち着きなさい。言ったでしょう、誰かが壺を取り返しに来たのよ」
大天使 天吏が冷静に指示を出す。
すると有象無象の動きをしていたカラスたちも、なんとか統制が取れてきた。
「あそこの岩陰にいるわ。応戦して」
黒衣の悪魔が三人、天吏の指さす岩陰――陽太たちが隠れている場所だ――へ飛ぶ。
「だあっ！ 隠れてるなんて性に合わねえ！」
春彦が飛び出した。
「これでも喰らえ！」
左耳のピアスを２度撫でて、＜Stairs of air＞で突っ込んでくる悪魔たちの眼前に見えない足場を作る。
「ぐはっ」
悪魔たちは透明の足場にもろに激突し、立ち往生した。
春彦自身は足場を蹴って、上空から悪魔めがけて拳を繰り出す。
「なん……だとっ！」
悪魔は横っ面をしたたかに打たれて吹っ飛んだ。だが別の悪魔が春彦に襲い掛かってくる。
「くそ。悪魔もどきと対決は余裕ぶっこいてらんねぇか」
頬に一発喰らう。口の中に血の味がにじんだ。これが春彦の闘争心に火をつけた。
悪魔は春彦にとどめを刺そうと拳を高々と上げている。
「そう何度も喰らうかよ！」
繰り出される拳を後ろに飛びずさって避けると、春彦は切った口の中を舌で舐める。
ファイティングポーズで向き合ったそのとき、相対する悪魔の背後に漆黒の影が広がった。
影は、月の足元から伸びている。
月のろっこん＜月影の死神（グリムリーパー）＞だ。
死神を名乗る黒い影は、悪魔の翼を掴んで、もぎ取らんばかりに振り回し、投げ飛ばした。
「サンキュ！ あと一人！」
春彦は三人目の悪魔に正拳突きをかましたのち、鋭い爪でひっかいてやっつけた。
悪魔が羽ばたく力を失って岩石群の中を落下してゆく。
だが、ふぅと安堵の息を吐いたのも束の間。
「カラスたち、投石で追い払って」
天吏の命じるままにカラスたちが石を抱えて飛んできて、次から次へと石礫を落してきた。
「いて、いてて！ 数多すぎるだろ！」
これはたまらない。数が多すぎて春彦の拳では自分を守るのが精いっぱいだ。
一方の月は、グリムリーパーによって、すっぽり包まれるようにして抱きかかえられていた。
（グリムリーパーが盾になってくれているお陰で、私は今のところ大丈夫だけど、そう長くは耐えられない。楢木君だって消耗するだけだ）
となれば。
「楢木君、あとは御巫さんに任せて後退しよう！」
この隙に、カラスに変じた時子は、カラスたちの群れに紛れ込むことに成功していた。
（とにかく壺を……）
時子はさかんに視線を巡らせる。
すると、カラスたちに紛れて壺らしきものを持っている悪魔がいる。だが……、
（天吏さんも、壺のようなものを持っていますね……いったいどちらが本物でしょう……？）
わからない。
儀式が邪魔されるのを見ていた時子とて、近くでまじまじと壺を観察したわけではなかったのだ。
（仕方ありません……両方奪うしか……）
時子は、鳥たちと会話したいと強く願う。それから大きく叫ぶ。
「鷲さん、鷹さん、燕さん、サギさん！ 悪魔が持っている壺を奪ってください……！」
この声はもちろん、あたりにいたカラスたちにも聞こえた。
だが鷲や鷹がものすごい勢いで滑空してくる方が早かった。二羽は悪魔に爪と翼で襲い掛かり、持っている壺を叩き落とす。それを待ち構えていた燕とサギがキャッチした。
一方、カラスの時子は天吏が手にしている壺を奪いにかかっていた。
「どうしたの？」
天吏はそれが時子だとはわからなかった。鳥好きだけに、時子を傷つけることも出来ず、困ったように手で追い払おうとするだけだ。
（天吏さん、ご容赦を……！）
加勢に来た鷲と鷹が、翼を広げて天吏の視界を封じた一瞬のすきに、時子は元の姿に戻って壺を奪った。それを先生が潜んでいる岩陰めがけて投げる。投げてすぐ、時子は再びカラスに変じて、他のカラスたちの中に身を隠した。
（尚輝先生、お願いします……！）
岩陰から、よれよれの白衣が飛び出してきた。尚輝にも、今は発奮しなければいけない時だと分かったらしい。時子が投げた壺をキャッチする。
「受け取りましたよ！」
先に燕とサギが奪った方の壺は、陽太が受け取って抱えていた。
（これで事は為した、ハズ）
そう判断した陽太は、片手を大きく仰ぐようにして叫んだ。
「みんなー！ もういい、退却するよぉ！」
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2016年08月01日
- 参加申し込みの期限
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- 2016年08月08日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2016年08月08日 11時00分
