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- 学年：職業
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ヒーローズ！ ～魔女は偽りの慈悲を歌う～
目前に見た蒼の拳に、ノワール――滝原 レオンはこくと喉を鳴らした。
（組織にいた頃に聞いたことがある……あいつが、如月 庚）
庚の名は、政府側・反政府側を問わずに、エージェントの間では広く知られている。
強大な力を持ちながら、どの陣営にも従うを良しとしない危険人物。
過去に送り込まれたエージェントは、全て返り討ちにあったという話だ。
「……おい」
レオンは、庚へと静かに声を投げた。
鋭い黒の眼差しが、俄かにレオンへと向けられる。
「人の喧嘩に手を出すってのもとんだ野暮だが、俺にもあいつを倒す約束がある」
力を貸す、とのレオンの言葉に、庚はほんの僅かだけ目を眇めた。
「お前の都合なんか知らねぇよ。好きにやれ。俺も好きにやる……合わせるなら勝手にしろ」
「ああ、それでいい。――充分だ」
ふっと口元を緩めるや、レオンはぬいぐるみ達へ「行け！」と命じる。
「倒さなくていい！ 行動を阻害しろ！」
２人のやり取りとレオンの指示に、尾鎌 蛇那伊は口の端を吊り上げた。
（２対１？ 上等ではないか。より良き戦いが出来るというなら、不満などあるものか）
覇気は既に、蛇那伊の腕を常の、全力で殺り合える状態へと戻している。
その手に、纏う覇気に。
ぬいぐるみ達は、何度となく千切っては投げられる。
何度目とも知れない攻撃をぬいぐるみに加えた蛇那伊の姿を目に、庚はラムネ菓子を手に取った。
探す『魔女』の砦は未だ見えないが、温存、という選択肢は庚の中にはない。
（喧嘩を買った。なら、全力でブチのめすだけだ）
ラムネ菓子を、口の中に噛み砕く。
途端、庚の傍らに、鮫を思わせる人型の異形が現れた。
「俺は、俺のやりたいように生きる。行くぞ、ストライクブルー」
ストライクブルーの全身からは、蒼く輝くエネルギーが噴き出している。
それが纏うプレッシャーは蛇那伊の肌を粟立たせ――同時に、その心を高揚させた。
（匂いがまた強くなった……強者の匂い、これ以上芳しい香は世にないな）
高ぶりのままに、蛇那伊は地を蹴って庚の元へと一瞬で迫る。
その肘が、あまりにも鋭く的確に庚の胸元へと叩き込まれた。しかし。
「ぐっ……！」
次の瞬間には、蛇那伊の肘は最早使い物にならなくなっている。
ストライクブルーから噴き出すエネルギーが、蛇那伊の肘を穿ったのだ。
「っ、くく……我が覇気の鎧さえ破壊するか。なんという力よ」
覇気が、笑う蛇那伊の傷を再び修復していく。
砕けた肘を持て余しながら、蛇那伊はとんっ、と身を引いた。
これほどの猛者を前に退く気はない。けれど、態勢を立て直す必要はある。と、
「っ、今だ！」
慎重に機を窺っていたレオンの声が戦場に響き渡った。
その声を耳に留めた時には、もう遅い。
全てのぬいぐるみが、レオンの指示のまま、一斉に蛇那伊へととび掛かっていた。
「っは、この程度の攻撃、俺の前では……」
「無力で結構。お邪魔虫に徹するのが、今の俺の役目だ」
刹那、大きく見開かれる蛇那伊の双眸。
本当に、ほんの僅かだけぬいぐるみに割かれた微細な隙。
それを突いて、蛇那伊の腹を、蒼のエネルギーを纏わせた庚の拳が捉えていた。
「か、は……！」
純粋な破壊を前にして、蛇那伊の口から血の赤が零れる。
覇気が持つ癒しの力でさえ、すぐさま身体を元通りに復元するには至らず。
蛇那伊は、背中から地面にどうと倒れた。
そして――ただひたすらに強さを求める男は、空を仰いで闊達な笑い声を上げる。
「っはは、っはははははは！ ああ、面白い！ なんと心湧き立つ戦いだ！」
――この戦いを糧に、俺は更なる高みに上れよう！
高らかに謳うその様子に、レオンは仄か眉を顰めた。
（生粋の戦闘狂だな。ったく、何なんだよ……こいつも、それに、あいつも）
見遣るも、庚はもう何でもないような顔をしている。
その時、ラムネ菓子の効果が切れ、レオンは常の姿を取り戻した。
「……とにかく、終わったか。これで俺の役目も終わりだな」
死人は死人らしく退散するとしようか、と、レオンは自身への皮肉が滲む微笑を漏らす。
その場を去ろうとしたレオンの背に、「おい」と庚の声が当たった。
振り返る、視線が真っ直ぐにかち合う。
「『魔女』とやらを探してる。何か知ってたら教えろ」
「……エージェント達がこの街の教会を目指してるって噂なら、聞いた」
そうか、とだけ応じて、庚はそのまま迷いのない足取りで歩き出した。
その背を見つめ、レオンはふうと息を吐く。
（――じゃあな、ヒーロー）
目を閉じて、胸の内に、誰にともなく呟くレオン。
後はどうとでもなるだろうと、『死にぞこない』の男は戦場から姿を消した。
（組織にいた頃に聞いたことがある……あいつが、如月 庚）
庚の名は、政府側・反政府側を問わずに、エージェントの間では広く知られている。
強大な力を持ちながら、どの陣営にも従うを良しとしない危険人物。
過去に送り込まれたエージェントは、全て返り討ちにあったという話だ。
「……おい」
レオンは、庚へと静かに声を投げた。
鋭い黒の眼差しが、俄かにレオンへと向けられる。
「人の喧嘩に手を出すってのもとんだ野暮だが、俺にもあいつを倒す約束がある」
力を貸す、とのレオンの言葉に、庚はほんの僅かだけ目を眇めた。
「お前の都合なんか知らねぇよ。好きにやれ。俺も好きにやる……合わせるなら勝手にしろ」
「ああ、それでいい。――充分だ」
ふっと口元を緩めるや、レオンはぬいぐるみ達へ「行け！」と命じる。
「倒さなくていい！ 行動を阻害しろ！」
２人のやり取りとレオンの指示に、尾鎌 蛇那伊は口の端を吊り上げた。
（２対１？ 上等ではないか。より良き戦いが出来るというなら、不満などあるものか）
覇気は既に、蛇那伊の腕を常の、全力で殺り合える状態へと戻している。
その手に、纏う覇気に。
ぬいぐるみ達は、何度となく千切っては投げられる。
何度目とも知れない攻撃をぬいぐるみに加えた蛇那伊の姿を目に、庚はラムネ菓子を手に取った。
探す『魔女』の砦は未だ見えないが、温存、という選択肢は庚の中にはない。
（喧嘩を買った。なら、全力でブチのめすだけだ）
ラムネ菓子を、口の中に噛み砕く。
途端、庚の傍らに、鮫を思わせる人型の異形が現れた。
ストライクブルーの全身からは、蒼く輝くエネルギーが噴き出している。
それが纏うプレッシャーは蛇那伊の肌を粟立たせ――同時に、その心を高揚させた。
（匂いがまた強くなった……強者の匂い、これ以上芳しい香は世にないな）
高ぶりのままに、蛇那伊は地を蹴って庚の元へと一瞬で迫る。
その肘が、あまりにも鋭く的確に庚の胸元へと叩き込まれた。しかし。
「ぐっ……！」
次の瞬間には、蛇那伊の肘は最早使い物にならなくなっている。
ストライクブルーから噴き出すエネルギーが、蛇那伊の肘を穿ったのだ。
「っ、くく……我が覇気の鎧さえ破壊するか。なんという力よ」
覇気が、笑う蛇那伊の傷を再び修復していく。
砕けた肘を持て余しながら、蛇那伊はとんっ、と身を引いた。
これほどの猛者を前に退く気はない。けれど、態勢を立て直す必要はある。と、
「っ、今だ！」
慎重に機を窺っていたレオンの声が戦場に響き渡った。
その声を耳に留めた時には、もう遅い。
全てのぬいぐるみが、レオンの指示のまま、一斉に蛇那伊へととび掛かっていた。
「っは、この程度の攻撃、俺の前では……」
「無力で結構。お邪魔虫に徹するのが、今の俺の役目だ」
刹那、大きく見開かれる蛇那伊の双眸。
本当に、ほんの僅かだけぬいぐるみに割かれた微細な隙。
それを突いて、蛇那伊の腹を、蒼のエネルギーを纏わせた庚の拳が捉えていた。
「か、は……！」
純粋な破壊を前にして、蛇那伊の口から血の赤が零れる。
覇気が持つ癒しの力でさえ、すぐさま身体を元通りに復元するには至らず。
蛇那伊は、背中から地面にどうと倒れた。
そして――ただひたすらに強さを求める男は、空を仰いで闊達な笑い声を上げる。
「っはは、っはははははは！ ああ、面白い！ なんと心湧き立つ戦いだ！」
――この戦いを糧に、俺は更なる高みに上れよう！
高らかに謳うその様子に、レオンは仄か眉を顰めた。
（生粋の戦闘狂だな。ったく、何なんだよ……こいつも、それに、あいつも）
見遣るも、庚はもう何でもないような顔をしている。
その時、ラムネ菓子の効果が切れ、レオンは常の姿を取り戻した。
「……とにかく、終わったか。これで俺の役目も終わりだな」
死人は死人らしく退散するとしようか、と、レオンは自身への皮肉が滲む微笑を漏らす。
その場を去ろうとしたレオンの背に、「おい」と庚の声が当たった。
振り返る、視線が真っ直ぐにかち合う。
「『魔女』とやらを探してる。何か知ってたら教えろ」
「……エージェント達がこの街の教会を目指してるって噂なら、聞いた」
そうか、とだけ応じて、庚はそのまま迷いのない足取りで歩き出した。
その背を見つめ、レオンはふうと息を吐く。
（――じゃあな、ヒーロー）
目を閉じて、胸の内に、誰にともなく呟くレオン。
後はどうとでもなるだろうと、『死にぞこない』の男は戦場から姿を消した。
シナリオ
シナリオデータ
- 担当ゲームマスター
- 前回シナリオ
- シナリオタイプ（らっポ）
-
- シルバーシナリオ（150）
- グループ参加
-
- 3人まで
- シナリオジャンル
-
- ＳＦ・ファンタジー
- バトル
- 定員
-
- 15人
- 参加キャラクター数
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2016年07月28日
- 参加申し込みの期限
-
- 2016年08月04日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2016年08月04日 11時00分
