【星幽塔】第一階層　シャウラの泉へ｜リアクション

【星幽塔】第一階層　シャウラの泉へ

【epilogue of epilogue〔４〕】

　常闇月と遠野まほろは、ねこよろずの店内で、夕食の支度などをしながら泉に向かった仲間達――恵御納夏朝、椿美咲紀、八神修らの帰りを待っていた。
「……八神さん達、遅いですね」
　少し心配そうに、月がぽつりと呟いた。
「……うん。夏朝ちゃん達のことだから心配はいらないと思うけど、ちょっと気になるね」
　まほろも少し不安顔で月の言葉に頷く。
　降り積もるかすかな不安が何とも言えない気まずい沈黙となって満たされていた、そんなときだった。
「ただいまなのですっ☆　椿美咲紀、ただいま帰りました！」
　バタン、と扉を開けて美咲紀がツヤツヤの顔で帰ってきた。
「ただいま。みんな、遅くなってゴメン」
「すまない。色々とアクシデントが重なってな。だが、泉の効力をこの目で確かめることができて良かったよ」
　夏朝と修もその後に続いて、ねこよろずの中に入ってくる。
「よかった……。みんな、無事だったんだね……」
　まほろがほっと安堵の息を吐いて言った。
　月もまた心の底から安堵に胸を撫で下ろす。
　みんなが無事でよかった。本当に、心からそう思う。
　だから、
「おかえりなさい、みなさん。夕食の支度はできていますよ、遠慮せずにたくさん食べてくださいね」
　月はそう言って、心からの笑顔で仲間達の帰りを労うのだった。

　　　＊　＊　＊

　その頃、宿屋『猫島亭』でも夕食の時間が始まろうとしていた。
「むー、今日は疲れたなー。でも、ビラもまけたし、水芸も皆喜んでくれたし、よかったなー」
　来島アカリはテーブルにつき、一日をそう振り返った。
「僕も遠野さん達のお店でいいものが買えたし、旅鴉さんのカフェと業務提携も結べたし、いい一日だったと思う」
　日暮ねむるも慌ただしかった一日を満足げに振り返る。
「俺も由貴奈さんとこのベーカリーとの営業が上手く行ってよかった。このクッキーも美味いしなー」
　卯木衛も自身が営業をかけてきた壬生由貴奈らの経営するベーカリーで仕入れたクッキーを一口齧り、その味に舌鼓を打つ。
「だよなー。日暮がもらってきた旅鴉のカフェのコーヒーとの相性も抜群だしなー」
　アカリがブレンドコーヒーを口にしつつ、うんうんと頷いた。
　と、そのとき。
「oh!　ネコシマテイはここであってマスかー？」
「へ？」
　不思議な言葉を話す幼い少女の声に、アカリがぎょっと目を見開いた。
「いったい、誰だろう？」
「俺、見てくるぜ」
　世話焼きが性分である衛が、ぱたぱたと店の外に走っていく。
「へ？　子供？」
　そこで、衛は目の前の金髪碧眼の少女――トワ・E・ライトフェロゥの姿に目を瞬かせた。
「あれー？　お前、トワじゃん。こんなとこで何してんだ？」
　と、顔を覗かせたのはアカリだった。
「おー、アカリ。ちょうどよかったデス！　トワ、アストラルのマスターに頼まれて、とてもいい話持ってきたデス！」
　そう言って、トワはリュックにパンパンに詰めたクエストロールをアカリ達に手渡した。
「へぇ。町の人の依頼を冒険者に渡す仲介を僕らがやるわけか。うん、なんかゲームみたいで面白そうだね」
　と、ねむるはそのクエストロールに興味を示した。
「おっと、忘れてました。トワ、マスターから猫島亭の皆さんにくれぐれもよろしくな依頼預かってたのデシタ！　トワ、中身はよく知りません」
　そう言って、トワは一枚のクエストロールを一番手近にいた衛に手渡した。
「へぇ、どれどれ？」
「いったいどんな依頼だー？」
　アカリとねむるが衛の肩越しにクエストロールを覗き込み、三人は顔を見あわせて、思わず笑ってしまった。
「へ？　へ？　みんな、どうしてトワの顔見て笑うデス？」
「いや、なんでもねーよ。じゃあ、トワ、だっけ？　Ｂａｒまで送っていってやるよ。依頼は確かに承ったぜ」
「Oh!　助かりマス！　城下町まるでメイズ！　トワ、ここに来るのに半日かかったネ！」
　そうして、衛はトワを連れて、Ｂａｒアストラルまで向かうことにする。
　ちなみに、トワが持ってきたマスターの依頼は次のような内容だった。

『トワさんをＢａｒアストラルまで無事に連れ帰って頂けるようにお願いします』

　その依頼は程無くして、無事達成された。
　かくして、また一つ新たな業務提携が結ばれて、町の新たな発展へと繋がっていく。
　サジタリオの空に光が取り戻されたのはもう随分と昔のことのように感じられた。
　だが、数多の冒険者達の手によって、町はさらなる輝きを放ち始めようとしていた。
　そんな城下町の発展のストーリーは、まだ始まったばかりである。

〔了〕

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あとがき

担当マスター：水月鏡花
ファンレターはマスターページから！

というわけで、ご参加頂いた皆さんお疲れ様でした。ＭＳの水月鏡花です。
光の取り戻された第一階層での冒険と日常の一幕、いかがでしたでしょうか。
みなさまに少しでも楽しんで頂けたのなら、とてもとても嬉しいです。
いつのまにか星幽塔もだいぶお話が進んでまいりました。
みなさんならきっと塔のてっぺんに火をつけてくださると信じております。
では、ご参加頂いた皆様、ご読み頂いたあなた、そして「らっかみ！」に関わる全ての皆様に感謝をしつつ、今回もこのあたりで。

また次のあとがきでお会いできる日をお待ちしています。

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