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水底の町
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雨の気配も残さぬ乾いた空の色を写し取った水溜りに、そっと近づいただけだった。
「ッ……?!」
突如として水の中へ引きずり込まれ、
志鷹 若菜
は息を詰めることさえ忘れる。咄嗟に閉ざすことも出来なかった翡翠色の瞳に映ったのは、果てすら見えず広がる透明な碧。
唇から溢れた空気の泡が頬に触れて、慌てて唇を掌で抑える。
(え? え……?)
一瞬前まで、休日の気分転換にと冬のシーサイドタウンを散歩していたはずだった。ふと目に留まった水溜りに幼い頃に遊んだ記憶を呼び起され、懐かしさに靴先を水の碧に触れさせて、
(何……?!)
瞬きの間に全身を水に浸された。
水に慣れぬ仕草でもがく。混乱してもがくうち、爪先が水底に触れた。肺に残った空気を全部吐き出して、気付いた。息が出来る。
口の中に広がる甘い水に、地上と変わらず出来る呼吸に、戸惑いながらも安堵する。唇を抑えていた手を離し、ぐるりを見回す。
(ここは何処だろう)
目前に広がるのは、碧い水に沈んだ白珊瑚で出来た町並み。
(……夢を)
夢を見ているのだろうか、と思う。思わず頬をつねって、確かに痛みを感じた。ヒリヒリと痛んで赤くなる頬を抑え、空気と同じに肺を満たして身体中に巡る水に優しい眉を顰める。
体を包み込む水の感覚に一歩も踏み出せぬまま、水底の町をぼんやりと眺める。
どこか遠くで鈴のような音が響いている以外、聞こえる音は己の鼓動はかり。
碧に閉ざされた白の町の道を、幻のように色鮮やかな魚たちが泳いで行く。ひとの姿のない水底の町は、ひどく美しく、何処か寂しかった。その風景に、けれど若菜は不思議な懐かしさと安らぎを覚える。
どうしてだろうと首を傾げて、
(小さい頃、お母さんが読んでくれた絵本の世界みたい……)
母の声を、思い出した。
耳朶に蘇る母の優しい声に背中を押され、一歩を踏み出す。町を歩いて行けば、いつか母が読んでくれた絵本の雪の町に迷い込んだ少女のように、出口を探し出すことが出来るだろうか。
足元に積もった白砂がふわり、粉雪の如く舞った。
ゆっくりと舞っては水底の石畳の道に散らばる白砂を見下ろし、左右に静かに佇む白珊瑚の家々を見回し、――碧い水中を、まるで空を飛ぶように泳ぐ黒髪の少女を見た。
「あっ、こんにちはー」
赤や黄色の魚たちと一緒に水底の町の空を泳いでいた少女に、花咲くような明るい笑顔を向けられ、屈託なく手を振られ、若菜は思わず笑み返す。片手をのんびりと上げて振り返す間に、少女はコートの端から覗くスカートの裾を羽衣のように翻し水底の町へ降り立った。
「水の中の町だなんてふしぎ!」
魚と一緒に泳いだ興奮のまま、楽しそうに笑う。その場でぴよんぴょんと跳ねて、跳ねた途端に思いがけない高さにまで浮き上がって、
「ふしぎ! ふしぎだねぇ!」
椎名 あさひ
は白い頬を桃色に上気させてまた笑った。
「お姉さんも寝子島のひとー?」
「ええ」
おっとりと笑む女性の前、あさひはもう一度立つ。
「水たまりの中に落ちるなんて、ふしぎなこともあるんだねぇ……」
頭のてっぺんでお団子に結った髪をぽよんと揺らし、あさひは自分の名を名乗る。こんにちはと改めて挨拶をする。
「志鷹若菜です。本当に不思議だよね」
「若菜お姉さん!」
はしゃぐ少女に手を取られて引かれれば、身体は思っていたよりも身軽に水中に浮き上がった。泳ぎが多少不得手であっても、ここでは然程影響はないらしい。少し水を掻けば身体は容易く前に進む。先を泳ぐあさひに倣って足を動かせば、元より水中の住人であるかのようにすいすいと泳ぐことができる。それになにより、ここでは息継ぎの心配がいらない。
初めに感じた水の僅かな冷たさもいつのまにかすっかり慣れて、不意に頬に触れる水の冷たさに心地よささえ感じられるようになっている。
「きもちいー」
「うん、気持ちいい」
「あっ、あっちにもお姉さん!」
水底にモザイク模様のような光を降らせる水面をあさひが示す。小さな白い指先が示す先を追えば、水底に背を向け水面を仰いで沈んでくる少女の姿があった。
「大丈夫ですかっ」
急に水中に落ちた驚きのあまり気絶してはいまいか心配になり、若菜は慌てて水を蹴る。
「お姉さん、だいじょうぶー?」
隣に並んで水を掻くあさひが続けてのんびり声を掛けたところで、
「はーい、ご安心をー」
くるり、水中に漂う少女が魚のように体勢を整えた。
「寝子島出身ですゆえ、泳ぎはそれなりに自信がありますー」
眼鏡の奥の黒い瞳を和やかに細め、少女はくるり、スカートの膝を抱えて水中にでんぐり返しをしてみせた。
「ちょいと調子にのって水たまりにジャンプしてみましたら、水の中に落ちました」
驚きはしたものの、息が出来ると知ったからにはこちらのもの。水中に呼吸が適う不思議な感覚に身を任せて身体の力を抜き、ゆらゆら揺れながら遥か遠い水面を眺めた。いつもならば息が続かず無理な長時間の潜水が思いがけず叶ったのが楽しくて仕方がなかった。
水と自分の境界がなくなるような心地よさにうつらうつらしかけたところで、水底から声が掛かって目が覚めた。
(うっかり眠ってしまうところでしたー)
「あさひも! ぴょんってとんだら、ざぶーんって!」
「私もです」
「やあ、お互いびっくりですねー」
水中のまどろみから目を覚まさせてくれたふたりにふっふ、と心底楽しそうに笑い、少女は丁寧にお辞儀する。
「申し遅れました。私は
薄野 五月
と言いますー」
「五月お姉さん! こっちのお姉さんは若菜お姉さんだよ」
碧い水の中で出会ったお姉さんふたりと、あさひは手を繋ぐ。
「ちょっとボウケンしてみよー!」
「おや、水底に何やら町のようなものがありますね」
かざした掌さえも薄い水色に染める、けれどどこまでも見通せそうな碧い水を掻き、水底の町に降りる。白珊瑚でできた町並みを見渡し、白砂に埋もれかけた石畳の緩やかな坂道を歩く。
ところどころの軒に読めぬ文字の看板が掛かり、脇道への入り口には行き先を示す道標が立てられたその通りは、どうやら町の目抜き通りであるらしかった。道はやがて石段に変わり、石段の天辺には遠目にも巨大な神殿様式の建造物が見えた。
石段の下に至るまで誰にも会わず、それでも五月は楽しげな視線を周囲に巡らせる。
「私達も息が出来る、ということは、もしかしてこの水底にどなたか――」
「ひとだーっ!」
「……おやや?」
全てを言い切るよりも先、家の影から魚じみた勢いで白い着物の子供が歓声あげて飛び出して来た。
「ひとだひとだ、遊ぼ! おれユニ! きみは?」
三人の周りを水慣れした動きでぐるりと周り、順番に三人の顔を覗き込んで屈託なく笑いかける。
突然に姿を現した子供に、最初に順応したのは子供と同い年ほどのあさひだった。
「はじめましてー」
きちんと行儀よく挨拶をして名を名乗り、躊躇うことなくユニの手を取る。
「一しょにあそぼう、なにしてあそぶ?」
「やーったー!」
寝子島の少女と水底の町の少年は手に手を取ってその場でくるくるくるりと回る。
「やあ、元気いっぱいですねー」
「ええ」
「ふっふ。子供は風の子、元気の子。かわいいですねー」
五月と若菜がのんびりおっとり話す間も、ふたりはくるくる回る。
「何だかお魚になったみたい!」
目が回るまでその場で一緒に回って回って、目が回ったらその場にふたりでひっくり返る。
「ユニくんのきものがひらひらってなってるの、金魚さんみたいできれいだねぇ」
「そうかな?」
あさひに言われ、ユニは満更でもなさそうに着物の腕を持ち上げた。長い袖を碧い水にひらひらと旗のように振る。
見ているうち、白い金魚みたいなひらひらが羨ましくなって、あさひはひょいと身を起こした。
「あさひのおようふくもひらひらなるかな」
冬用の分厚くてあったかいコートを脱ぎ、背負っていたリュックの中に畳んで押し込む。スカートの裾を両手でつまんで、爪先立ってくるりと回れば、指先を離した途端、スカートの裾は金魚のようにふんわり膨らみひらひら揺れた。
拍手をくれる五月と若菜に、あさひははにかみ笑う。
「私も一緒に遊びたいですー」
ふたりに遅れて拍手するユニの傍ら、五月はしゃがみこんだ。弾む心のまま、ふっふと笑みを零す。
(こちらへ来たのは偶然ですが、これもまた縁)
折角出会えたのなら、友達になりたかった。
「私は五月と言います、ユニ君」
「五月!」
「あ、私は志鷹若菜」
「若菜!」
傍に来て笑いかけ、名前を教えてくれる二人に、ユニは大きく頷いた。
嬉しそうなユニの横顔を若菜は見つめる。この水底の町で、美しく寂しい町で、出会うことができたのはこの子だけだった。
「ユニ君、ひとつだけ、教えてくれるかな?」
「うん。なに?」
「ここはどこ? ここには、ユニ君しかいないの?」
「ここ?」
ユニは考え込むように少し首を傾げた。石段の一段目に腰掛け石畳に素足を投げ出してぶらぶらさせつつ、空より遠い水面を仰ぐ。
「ここは水底の町。おれが目を覚ましたらこうなってた」
でも、と若菜を安心させるように明るく笑って立ち上がる。
「大好きなじいちゃんが居るからだいっじょーぶ!」
「よーし、遊びまょー」
立ち上がったユニの手を、五月が取った。あさひがしたように一緒にその場で回ろうとして、ユニを水中に振り回す格好になった。
「わあー」
「わあっ」
思いがけない水中の浮遊感に驚く五月の身体も水中に跳んで、二人は地面に一緒に転がる。
爆ぜるように笑い始めたユニにつられ、五月も転がったまま笑った。
「鬼ごっことか、隠れんぼとか、どうでしょうねー。ふっふ」
「なに? なにそれ楽しそう!」
「おいかけっこもかくれんぼも、」
あさひが石段を蹴って水中に飛び上がる。飛び込み台から飛び込むように水中に身を投げ出しながら宣言する。
「負けないよー」
だって夏のプールの時間に頑張ってたくさん泳げるようになっているもの。
空中とは違い、ゆらゆらとゆっくり沈む身体が楽しかった。ひらひらとなびくスカートが金魚の尾鰭のみたいで楽しかった。
(でもやっぱり水の中でうごくのは中々どうしてむずかしいねぇ)
揺らぐスカートの裾から零れる空気の珠を追いかけて指を伸ばして身体を捻る。小さな泡を掴めないまま、石畳にふわり、背中が着いた。
ユニに隠れんぼの遊び方を説明する若菜と五月の言葉を聞きながら、起き上がろうとして地面に手をつく。よいしょと身を起こして、石を手に握り込んでいることに気が付いた。
「……ガラス?」
磨かれたような石を遠い水面から降る光に透かせば、石は不思議な七色に輝いた。
「シーグラスって言うんだって。海の宝石」
ユニがどこか得意げに言う。
「そこら中に転がってるから、欲しかったら持って帰るといいよー」
言いながら、ユニは足元に転がる石や魚の鱗を片手ずつに拾った。若菜に石を渡し、五月に蒼く透明な鱗を渡す。
「ありがとー」
手に包んだ石と改めて拾ったもう一つを、あさひはハンカチに包んでリュックに仕舞う。綺麗な石は、弟と友達のお土産にしよう。
「ユニくーん! 遊ぼうなのだー!」
「遊びましょうー!」
石段の上から声が響いて、見上げれば先に神殿に行っていたらしい少女ふたりが元気いっぱいに手を振っている。
「かくれんぼ、しましょうか」
くすり、若菜は笑みを零す。最初の鬼を引き受けて数を数え始めれば、子供達は歓声をあげて水底の町の方々へと駆けて行った。
石段に腰掛け、膝に頬杖をついて数を数える。そうしていれば、弟妹たちと遊んだ幼い日のことが思い出された。
「皆、いい子たちだ」
不意に背後に聞こえた老いた声に振り返る。ちりん、と涼やかな音が耳朶を打った。
石段の上にいつの間にか立っていたのは、白鬚の老翁。にこにこと笑いながら、片手にぶら下げていた金魚にも似た風鈴を若菜に差し出す。
「貴女も、いい子だ」
差し出されるままに受け取った風鈴は、昔父がお祭りで買ってくれたものとどことなく似ていた。
「ありがとう、ございます……」
「こちらこそ、ありがとう」
受け取った風鈴を見下ろし、顔を上げた時には、老翁の姿はもうそこになかった。
走り回って遊び疲れた身体を地面に投げ出す。
ふうわりと雪のように舞い上がる白砂に受け止められながら、あさひは水の底から上を見上げた。
空よりもずっとずっと遠く、遥かな水面に光が揺れている。
「キラキラしててきれいだねぇ」
舞い上がる泡も、降って来る小さな鱗も、星のように煌いて注ぎこむ光も、碧い水に揺れながらゆっくりと振って来るように見えて、
(スノードームの中に入ったみたい)
碧い水に満たされた白い町の、まるでスノードームみたいな世界で出会った蒼い髪の少年を見遣り、手を繋いだり一緒に遊んでくれたりした優しい寝子島のお姉さんたちを見遣り、あさひは小さく笑う。
(……でも)
どうやって帰ればいいのだろう。
不意に思って、思った途端、ちょっとだけ不安になった。水面まではものすごく高い。息継ぎの心配はいらないけれど、水の上に出るまできっとものすごく時間が掛かる。そもそも水面に出たからと言って、水溜りから出るように寝子島に帰ることができるのだろうか。
「んー……そろそろ時間かなあ」
隣でごろごろしていたユニがむくり、起き上がった。両手を高く上げ、大きな伸びをする。
「楽しかった!」
顔中で笑い、遊んでくれた皆にひらひらと手を振る。その姿が不意に靄が掛かって見えて、
「待って、」
若菜は慌ててポケットを探った。起き上がり駆け寄る間にも少年の姿が掻き消えそうで、咄嗟に伸ばした手で少年の手を取る。
「楽しかった。楽しかったよ」
少年の手の冷たさを今更ながらに感じながら、少年の手を優しく握り直し、
(ささやかではあるけれど……)
「ありがとう」
ポケットから取り出した、散歩のお供の飴玉を手渡す。
貰った飴玉を不思議そうに眺める少年の姿が掻き消える。目前の景色が、水底の町から寝子島のそれへと入れ替わる。
「おれも、楽しかった!」
水底の町で少年と遊んだ人々の耳に最後に届いたのは、少年のただただ嬉しげなその一言――
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3人まで
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SF・ファンタジー
神話・伝説
定員
10人
参加キャラクター数
11人
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シナリオガイド公開日
2016年07月10日
参加申し込みの期限
2016年07月17日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年07月17日 11時00分
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