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● 水上演奏会・3
アカリと交代した万里が、櫂を手に艫に立つ。
櫂を差し、水の重みを押しのけるように漕いでみると、ゴンドラはくらり、大きく揺れる。
「ごめん。漕ぐのは初めてなの。意外と難しいのね」
アカリが手を添えて「こんなかんじ……」と何度か手ほどきすると、万里はすぐにコツを覚えた。
「メイド喫茶の仕事で日頃から鍛えているし、力仕事には自信がある。うん、大丈夫……なはず! 奏者や楽器に万が一があってはいけないもの。演奏にあわせるよう、ゆったり優雅に漕いでみせるわ」
その言葉通り。
万里はまもなく立派なゴンドリエーレになった。
「もし一曲演奏可能なら」
と征一郎が言った。
「エルガーの『夜の歌』を披露したいが?」
イギリスの作曲家、エドワード・エルガーによるヴァイオリンとピアノのための楽曲である。
わ、と慶介が嬉しそうに同意した。
ほかのみんなも異論などあろうはずがない。征一郎のソロ演奏を聴きたいと思っていた。
征一郎はヴァイオリンを構える。
優しい滑り出しだった。
その一音一音から、夜が溢れてくるような。
かたん、とほんのわずかにゴンドラが揺れる音、さやさやという水のせせらぎを伴奏にして、征一郎のヴァイオリンから透徹された綺麗な音が紡がれる。
そこに少しずつ彼らしい冷たさと熱が加わってゆく。
ただやさしいだけじゃない、芯のようなもの。
(すごい……なんて鋭くて情熱的で……でもどこか寂しい……人を惹きつける演奏なんだ……)
慶介は、息をするのも忘れ、征一郎の演奏に聞き入る。
一方、友人のシグレだけは、彼の堂々とした演奏の中にひりひりとするような……惑いに似たものが、涙の一滴ほど交じっているのをかぎ取っていた。
シグレがほんの僅か、片眉を上げたのを、征一郎は見た。
(てめぇにそんな顔をさせるんじゃ、自分もまだまだだな……)
征一郎は自分のヴァイオリンの腕を、悪いとは思っていない。上を目指す為に努力してるし、このままでも恐らくプロにはなれる。しかし、”今の自分の奏で方”を追求しすぎた為に、今の在り方を失うのが怖くて停滞してしまっているのも事実だ。
音楽に向き合ってるようで背を向けている。
素直に楽しいと思ってはいけないと思ってる。
楽しい、なんて、お遊びみたいな気持ちでやっているわけじゃない。自分を追い込んで、苦しんで、誰からも疎まれて孤独でも、そうしないと手に入れられないであろうものを手に入れてやる――そんな想いが逆に、征一郎の音を、あるラインで縛ってしまっている。
ああ、それでも。
それでも続けているのは。
――好きだからだ。ヴァイオリンが。
「は……」
拍手で我に返る。
いつの間にか曲が終わっていた。
自分でもどのように弾いていたか記憶にないほど、思索に沈んでいたらしい。
慶介が少年らしい興奮した面持ちで言った。
「神嶋先輩のヴァイオリン、いつ見ても素敵です!」
征一郎は皮肉気に眉を上げて聞き返す。
「それは誉めてるのか?」
「もちろんですよ!」
まっすぐに返ってくる慶介の眼差しは、好ましくもこそばゆい。
「座っての演奏で勝手が違うから、少し慣れなかったが」
などと謙遜してみるが、慶介の尊敬はこれっぽっちも薄れる様子はなかった。
シグレが口の端を持ち上げて、征一郎の背に軽く触れる。
「後輩からの称賛くらい素直に受け取れ」
ふん、と征一郎は黙って視線を遠く、昏い水平線の方へ向ける。
そんな孤高の先輩に好意の笑みを向けてから、慶介はみんなに提案した。
「そうだ。夜の曲じゃないけど、対になるエルガーの『朝の歌』をみんなで演奏しませんか?」
かつてはサロンなどでよく演奏されたという、心地よい旋律の小曲だ。
今度は慶介とシグレのヴァイオリンが、主旋律をユニゾンで奏でる。
征一郎はアドリブを加えながら繊細な音色で伴奏に。悠月が声を楽器に、征一郎の伴奏と対をなす。
(皆、凄い)
ソプラノサックスに持ち替えたアリーセは、皆の技量の高さに舌を巻いた。
ソプラノサックスは寝子高入学と共に始めた楽器だ。最近ようやく演奏について行けるようになったところである。慶介とシグレの主旋律に寄り添いながら、内心畏れ多い気持ちでいっぱいだ。
(なんとかついていけてるけれど、精一杯ね。邪魔にならない様に音は控えめにしなきゃ)
軽く唇を舐め、アリーセは水のせせらぎ程度の気持ちで合わせる。
「いい曲だね」
覚えやすいシンプルなメロディに、万里もいつしか鼻歌交じりだ。
アカリも音楽に耳を傾けながら、降ってくるような夜空や、ゴンドラたちの舳にさがるランタンの灯りのゆるり交差してゆく様を眺め、思わずつぶやく。
「みんな、すごい。音楽って、物語と同じなんだな……音も人も、ひとつひとつはばらばらなはずなのに、連なり絡み合うことで調和して、ひとつの流れになる……。ゴンドラから見える景色も、みんなが奏でる旋律も、ひとつの流れになってて……まるで、物語とかお芝居の世界に入っちゃったみたい、だな……」
長い曲ではない。
うっとりと瞼を閉じる間に曲が終わる。
音が空に完全に吸い込まれてしまうのを、その余韻を味わったのち、アカリと万里が拍手をした。
近くを行く舟からも「ブラボー!」の声。
団長たるシグレが優雅に一礼し、聴衆たちに応える。
「ゴンドラを止めて、すこし休憩しない?」
万里は舵を置き、ピクニックバスケットを引き寄せた。
「紅茶にスコーン、ジャムもたっぷり」
バスケットの中には紅茶の入った水筒がふたつ。ミルクティーと、シナモンの香りのフレーバーティー。
スコーンにつけるジャムの瓶もふたつ。クロテッドクリームと、ラズベリー。
「えっと、俺も……」
とアカリが言った。
「親に、食べ物とか飲み物持たされた……んで、よかったらどうぞ……」
こちらは、星型の容器に入った青いゼリーだ。星をイメージした銀箔が散らしてある。
「あと、星空をイメージしたノンアルコールカクテル。ブルーシロップにグレナデンシロップを足してあって、ジンジャエールで割って呑むんだって」
めいめいに、好みの飲み物を受け取る。
「俺は星空のカクテルを」
差し出された悠月のコップに、アカリは濃い青の飲み物を注ぐと、持たせてくれた親御さんの指示通り、アラザンと星型パイナップルを浮かばせた。
「へぇ、洒落てる」
悠月に褒められると、アカリはすっかり気恥ずかしくなって、
「ば、俺が作ったんじゃねーし……」
などとつれないことを口にしてしまう。ほんと、喧嘩をふっかけてこない悠月はやりにくい。
「お土産、美味しい」
慶介ははむはむとラズベリージャムをたっぷりのせたスコーンにかぶりつく。
「ゼリーもさわやかな味わいよ」
アリーセは星のゼリーを口に運んで、感嘆の声。
征一郎はミルクティを飲みながら、風景と水の波紋が広がる様を見ている。
シナモンティを手にしたシグレは、感慨深く天を仰いだ。
「こんなに月が大きく見える夜は久しぶりだ」
「そうだね」
万里もまた、天を見遣って頷く。
「今日は本当に素敵な夜だわ……」
そんな万里の肩に、コートをふわっと投げかけられた。征一郎だ。
「冷えると毒だ」
「ふふ、ありがとう」
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
笈地 行
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
恋愛
動物・自然
定員
20人
参加キャラクター数
20人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年07月07日
参加申し込みの期限
2016年07月14日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年07月14日 11時00分
参加キャラクター一覧
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