ママパパパニック！　可愛いキューピットのいたずら｜リアクション

ママパパパニック！　可愛いキューピットのいたずら

【後木真央の場合】
　
「がお〜覚悟なのだ〜」
「おおお!?　がおーが四方固めにっ！　ま、負けるななのだ！　試合はまだまだこれからなのだ〜！」

　いつものように町を徘徊もとい猫ウォッチングしていた後木は、シーサイドタウンで不可思議な現象と遭遇して、それはもう盛大にパニクっていた。
　目の前ではアホ毛も可愛い女の子が、召喚でぶ三毛猫がおーを相手に熾烈な寝技をかけている。必死に猫パンチで応戦するがおーだったが、完全に脇を固められて威力を殺されていた。
　がおーピンチ！　
　しかし、問題はそこではない。がおーには悪いけれど。
　この女の子が出会ったその時から今に至るまで言い続けている単語こそ、パニックの元凶だった。

「ママ〜、マイちゃんを見ててね〜！」

　そう。「ママ」だ。

「……彼氏もいないのにどうしてそこまですっ飛ぶのだあり得ねぇのだ～。デビルサンタさん大降臨しそうな勢いなのだ!?」

　元気印の後木もさすがに愚痴る。
　彼氏もいなければ、もちろんお腹を痛めたわけでもないのに、小学生ぐらいの「マイちゃん」と名乗る女の子に「ママ」呼ばわりされるとは、想像どころか妄想の中でさえ成立しない出来事だ。
　しかし現実に、女の子は目の前でがおーとじゃれており、事あるごとにメチャクチャいい笑顔で「ママ〜！」と手を振る。
　なんとなくいつもの如く神魂のせいだと分かるが、なにをどうすればいいのか皆目見当がつかない。

　すると、元凶のほうから方向性を示してくれた。
　どうやら試合の方は優勢のまま固技で一本とったようでとても満足そうな顔をしている。
　がおーに合掌。最敬礼。

「ママ〜。パパを探しに行こうよ〜。きっと一人で寂しがってるよ〜」
「パパ？　パパがいるのだ？　どこなのだ〜！」
「んん〜。マイちゃん、わかんない」

　肩を落とすが再浮上。
　兎にも角にもやることが見えた。そうなればまずは突き進むのが後木真央という人物だ。
　へばっているがおーを小脇に抱え、女の子の手を握る。

「じゃ、パパを見つけたら教えるのだ！　出発進行なのだ〜！」
「ラジャ〜なのだ〜」
　
　こうしてパパ探しが始まった。
　女の子が「パパいた〜」と指差した先を見てまたまた仰天することになるのだが。