その日、
古苗木 美姫は、のんびりとシーサイドタウンを歩いていた。
冬もさなかだが、今日は天気が良くて比較的に暖かい。
ちらほらと梅や早咲サクラが町並みを飾っていて、目を楽しませてくれる。
こんなゆったりした日もいいですね、と心穏やかに散歩していたのだが……。
「
ママ〜、どこに行ってたの〜?」
いきなり上着の裾を引っ張られたので振り向くと、女の子が半べそで古苗木を見上げていた。幼いなりに黒く艶やかなワンレンの髪型が似合う可愛い少女だった。
「……え? マ、ママってわたしのこと?」
「ママはママだもん。他にママはいないもん!」
女の子は口をへの字にして、ますます涙目になる。
古苗木の否定的な発言に、子供なりにショックを受けているようだ。
しかし、古苗木は大学生でもちろん未婚。
いきなりママ呼ばわりされて、驚かないわけがなかった。
そんな古苗木に、女の子は追撃で爆弾発言をする。
「
ねえ、ママ。パパはどこに行ったの? パパはいないの?」
「え? えええ!? パ、パパ?」
「
パパはパパだよぅ。パパを忘れちゃったの?」
確かに、女の子的には「ママがいるならパパがいる」と言うのも道理だろう。
だがしかし!
重ねて言うが古苗木は大学生。心ひそかに、恋人ができたらいいな、ぐらいは思っているけれど、現在進行形のお付き合いもない歳若い女性だ。
まだ相手もいないのにママと呼ばれて、しかもパパを探さなければならないとまで言われれば、おおらかな古苗木でも流石に混乱する。
周りの視線も気になった。
微笑ましいものや非難するものなど入り混じりつつ、明らかに注目の的だ。
「え、えっとね。お名前なんて言うの? ママやパパとはぐれちゃったのかしら?」
「ママ! パパを探しに行こう!」
女の子は質問にはまったく耳を貸さず、手を引っ張る。
古苗木はかき乱される頭を必死に整理して、正論を説いた。
「それよりもまず交番に行きましょう? 本当のママとパパを探さないと……」
「あ! あれ、パパかも! パパ〜〜〜!」
「見つかったのね。よかっ……た?」
一瞬の安堵のあと、古苗木は驚愕する。
先を歩いている男性を指差して追いかける女の子。その男性の後ろ姿には見覚えがあった。
「ちょ、ちょっと待って」
「
パパ、見つけた!」
もちろん女の子は止まらない。勢いそのまま、男の腰に抱きついた。
男性ははっきりと狼狽して、キョロキョロとあたりを見渡している。
古苗木もまた立ちすんだ。
一体、なにがどうしてこうなったの?
男の視線がこちらに向くのを感じて、古苗木は状況を説明するべく歩き出した。
はじめまして。またはお世話になっております。今回のシナリオを担当する阿都と申します。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
そしてシナリオガイドにご登場いただきました古苗木 美姫様、ありがとうございました。
もしシナリオにご参加いただけたときには、ガイドに構わずアクションをいただければと思います。
【状況】
あなたはいきなり見知らぬ子供にママ(パパ)と呼ばれました。
しかも「パパ(ママ)を探そう」と強引にお相手探しに連れ回されます。
一人で過ごそうとしても、必ず誰かのもとに連れて行きます。もしくは誰かを連れてきます。
この子供、もはや怪異のレベルです。
そこで出会った人と一緒に、本当のパパとママを探すのもよし。
そのままお散歩してみてもいいですし、もちろん現実的に子供を交番に連れていくのもオッケーです。
徹底的に子供から逃げて追いかけっこを楽しむのもいいでしょう。……その場合、子供は手強い追跡者になりますのでお覚悟を。
この偶然を利用して新しい友だちを作ってみたり、今いる友だちと恋愛フラグを立ててみたり、という楽しみ方も大歓迎です!
以下、PL情報になります。
1)アクションには、以下の点をお書き下さい。
・はじめにキャラはどこにいて、なにをしていますか?
・参加者のなかの誰と一緒に、どのように過ごしたいですか。
・謎の子供に対してどのような態度をとり、どう過ごしますか。
2)一緒に行動する相手はアクションで指名可能です。GAもご活用下さい。ただし参加者限定になります。
参加者以外のキャラクターは、リアクションに出せませんのでご容赦下さい。
基本は男女ペアですが、多人数でも、男同士、女同士も可能です。
アクションで指名がない場合は、アドリブで参加キャラ同士を絡ませます。
3)出てくる子供について
・実は、出てくる子供は神魂の影響で現れた存在ですので、本当の両親はいません。
・子供の性別は基本的に始めに出会うキャラクターと同じです。
ご要望があれば、アクションにお書き下さい。
ただし、キャラの組み合わせ次第で調整しますので、必ず採用できるとお約束できないことをお許し下さい。
・年齢は7歳ぐらい。小学校1年生あたりだとお考え下さい。
・子供の顔はなぜか両親(と子供が言う)キャラクターたちにどこか似ています。
さらに服についている名札には両親になるキャラどちらかの苗字が書かれています。
ちなみに三角関係の場合ですと、関係者全員にどこか似ていますし、関係の中心になるキャラの苗字が書かれている名札をつけています。
つまり「他人が見たらそのキャラたちの子供と無条件に信じる可能性が高い」です。
・この子供からは簡単には逃げられません。
サイコメトリと千里眼と瞬間移動を持っているような存在と考えて下さい。
逃走するなら知恵とろっこんを振り絞りましょう。
・子供には隠しフラグがあります。
子供が喜ぶことをすると、特別なアクションを起こしてくれるかもしれません。
以上です。
キューピットのような子供と一緒に、いろいろと楽しんでいただけると嬉しいです。
ご参加、お待ちしております。
どうぞよろしくお願い申し上げます。