猫、逃げる｜リアクション

猫、逃げる

　結局あいつら、太っただのヤバいだのいいつつ抹茶パンケーキ食いにいったのか……うん、確かにうまそうだもんな。
　路上に向けて張り出されたメニュー写真を眺めて、御剣刀はひとりごちる。

「俺も食っていくかな」
　断じて女子高生二人がどんな顔か見たいからではないぞ。

　そう誰にともなく言い訳しながら、少年は店へはいり――自分以外誰も客のいないその店で、抹茶パンケーキを持ち帰りで用意してもらい、再び外へ出てきた。

　その顔は多少の？マークが浮いていたのだが、「きっと二人は別の店に行ったのだろう」と納得し、手の中で美味しそうな存在感を主張しているパンケーキにぱくつくこととした。

　不思議なことといえば、猫、ねぇ――パンケーキに紛れていた思考にようやくその単語が蘇ってくるにあたり、御剣はしばし考えを巡らせる。
「逃げたというか、遊びに行ったんじゃないのかな？」
　ずっと一か所にいたら、そりゃ偶には遊びに行きたくなるだろうよ。

　それ自体は、多分仕方ないことのはずだ。

「とはいえ、だよ」
　触れば願いが叶うというのにはちょっと心にかかるものがある。
　大切な家族――ルヴィアの今の状況はやはり気にかかっているからだ。

　もし願うなら、あの子が元気になるように、かな？
「ちょっと頑張ってみますか」

　もう一口、パンケーキをぱくつくと、御剣はあてもなくふらふらと街をさまよい始めたのだった。

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