うみねこで親睦を｜リアクション

うみねこで親睦を

●新年会、開催！

　店内飾りつけが終わり、料理が完成したのは開催時刻１５分前だった。
「新年会に来たですよ！　読書会やビブリオバトルで作品紹介した仙藤さん、いるですよ！　『寝子島にゃんこ』を紹介した綾辻さんもいるですよ！」
　勢い良く『うみねこ』にやって来た北玄は、顔見知りがいたことに大喜び。
　ビブリオバトルでご一緒した人ね、と仙藤紫は「久しぶりね」と挨拶を。

　会費を受付の総悟に手渡すと、店内にある何かを探し始めた。
「何をしているんですか？」
「ウミネコの絵を探すですよ！　翼の生えた猫じゃないですよ！　ニャアニャア鳴くからウミネコですよ！」
　尾が黒いから英語で「Black-tailed gull」ですよ！　学名はドイツ語で「Larus crassirostris」ですよ！　と力説しながらテーブルクロスに隠されたウミネコの絵を探す。
　壁際にある４人掛けの折り畳みテーブル３組のどこかにウミネコの絵が描いてあり、それを発見するといいことがあるかも、というジンクスがこの店にある。それを知っての行動だろう。
「あったですよ！　今日はいいことあるかもですよ！」
　厨房に近い位置にあるテーブルにウミネコの絵が描いてあるのを発見し、飛び上がって喜ぶ玄。

　新年会開催時刻。李小麗にエスコートされ魚戸夫妻が飾りつけされた店内へ。
「おじちゃん、おばちゃん、あけまして、おめでとうなのだ！　今年もよろしくお願いしますなのだ」
　それに続き、他の参加者も「あけましておめでとうございます」と新年の挨拶を。
「今日は、俺らのためにありがとうな。おもいっきり楽しんでいってくれ」
「本当にありがとうね。お言葉に甘えて、父ちゃんと一緒に楽しませてもらうよ」
　参加者はグラスを手にすると、各々の飲み物を注いだ。乾杯の音頭は、店主であるケンゾウが。
「うみねこ新年会始めるぜ！　乾杯！」

　綾辻綾花と天満七星、英モニカは出来上がった料理をテーブルに運んだり、小皿に取り分けたり。
「ケンゾウさん、ハルコさん、明けましておめでとうこざいます。ご無沙汰してました」
「モニカちゃんも来てくれたんだね。最近、来ないからどうしてるのか心配だったよ」
　仕事が忙しくて……と苦笑するモニカは、夫妻にゆっくりしてほしいと思った。
「今日は私もみんなと腕を振るいますので、期待して待っててくださいね？」
　楽しみにしてるぜ！　とケンゾウは豪快に笑う。

（うみねこのご夫婦、元気で店を切り盛りしているみたいね）
　飲み物を運ぶ紫に何か感じとったのか、ビールジョッキ片手にケンゾウが声をかける。
「お嬢ちゃん、うちに来たことがなかったか？」
「はい、もう何年も前になりますけど」
　家族で良く来ていた女の子に似ていたと声をかけたというケンゾウは、自分のことを覚えていてくれた。
　名前はわからなくとも、自分のことを覚えていてくれたことがとても嬉しい紫だった。

　新年会が始まると、綾花達が早くに来て作った料理は残り少なくなってきた。
「から揚げとフライ、できたわよ」
　こうなることを予測していた紫が、できたての揚げ物を。料理の評価は……と気になりつつ、魚戸夫妻に盛り付けた皿を差し出す。
「美味い！　料理上手だな、嬢ちゃん。ええと……」
「仙藤紫、寝子高３年よ。美味しいと言ってもらえて嬉しいわ」
　名前がわかり頭がスッキリしたケンゾウは「紫が作ったフライ美味いぞ、母ちゃん！」と大満足。